MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

見沢知廉氏死去

2005年09月09日 17時21分32秒 | 雑感
作家の見沢知廉氏が自宅マンション8階から飛び降りてなくなりました。
作家の見沢知廉さん死去
遺書などは見つかっていないとのことですが、報道等でみる限りおそらく自殺であろうと推定されます。
私は見沢氏に対して何か特別な感情を持っているわけではありませんが、見沢死去の報道を目にしたときにはなんだか神妙な気持ちになりました。

2年前、アメリカに経つ直前。私は自宅アパートで、アメリカに持ってゆくための本を何冊か書棚から選び出しダンボール箱に詰めました。その中の一冊が見沢氏の「天皇ごっこ」でした。見沢氏は94年に獄中でこれを書き、同年の新日本文学賞を受賞しています。

「天皇ごっこ」は見沢の個人的体験をもとに書かれたいわば“私小説的”小説ともいえるもので、昭和天皇崩御に際し、恩赦への期待に胸を膨らませる獄中の熱烈な天皇主義者の右翼青年が主人公です。(尚、単行本化に際して大幅に加筆され、現在の「天皇ごっこ」にはこのエピソード以外にもいくつかのエピソードが加わっています)

天皇崩御の報に接した主人公の青年は一時、辞世の句を携えて服薬自殺を図りますが結局果たせずに終わります。その一方で、主人公の頭の中では即位恩赦に対する仄かな期待がむくむくと頭をもたげます。

“シャバだ! 誰もが眼前にシャバを見た。今まで遠かったシャバ。遠近法がうんとついた、小さな小さな点のような遥かかなたの別世界が、一挙に手の届く目の前で踊り狂った。”

“出られる。僕は維新しますからね。(中略)見ててくださいよ、平成維新は眼の前だ。僕が出れば、僕さえ出れりゃあ世界は変革される。右翼は団結する、武装闘争だ、反共からテロルと国家革新だ、僕さえでれりゃあ・・・”

しかし、そうした主人公たちの熱狂を尻目に、基準恩赦閣議は選挙違反や汚職など一部の政治関係者のみを恩赦対象に選出して終了します。
恩赦の選定から漏れた事を知った彼らはひどく落胆します。そして、これに続き仲間の一人が“「恩赦、恩赦、陛下万歳」と叫びつつ、糞尿にまみれて、保護房でぴくぴく顫えつつ獄死”するところでこの物語は終わります。

わずか70ページに満たない短い小説ですが、ここには右翼の側から見た天皇に対する様々な情念が描かれているような気がします。

見沢知廉。享年46歳。

以下に見沢氏の略歴を「天皇ごっこ」より一部転載します。
見沢知廉(本名 高橋哲央(てつお))。1959年東京生まれ。小学校4-5年の時から政治を志向。早稲田中、高校へ進学。中学で既成右翼の活動を手伝うが失望。非行。暴走族。登校拒否。高校でブント戦旗派の学生同盟員に。同学生中級幹部。成田管制塔事件等に参加。79年サミットで決起しなかった新左翼に失望し、80年新右翼の日学同に。同軍事顧問。82年一水会、統一戦線義勇軍に。同3月義勇軍書記長。同年夏一水会政治局長に。これら新右翼各トップとして数々の非合法を指導、82年、イギリス大使館焼き討ちゲリラやスパイ粛清事件などで逮捕、懲役12年。川越少刑、千葉刑務所などに12年満期。反抗のためうち8年半を厳正独居処遇や、精神病者収容の八王子医療刑務所にも。
中央大学法科中途除籍。94年獄中で「天皇ごっこ」新日本文学賞受賞。同12月8日出所。
他にコスモス賞や全作家賞受賞。著書「民族派暴力革命論」(大友出版)「オウム大論争」(共著、鹿砦社)など。
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Security Alert | トップ | 雑感 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
我が家でも話題に (neocy)
2005-09-11 20:18:05
「母と子の囚人狂時代」(というタイトルだったと思います。)を読んだ時お母さんの方がスゴい人なんじゃないかと思いました。

喪主がお母さんだそうで、お母さんが本当にかわいそう。親不孝者ですよ。
返信する
こんにちは (kazu-n)
2005-09-12 01:27:55
neocyさん

コメントありがとうございます。



なるほど、その本は読んだことないですが、分かるような気がします。

小学校4-5年の時から政治を志向なんてちょっと普通じゃないし、絶対に親の影響だろうなーとは思っていたのですが、、、。でも一体どんなお母様だったのでしょう。機会があればその本を読んでみたいです。



>>お母さんが本当にかわいそう。親不孝者ですよ。

同感です。
返信する
本の内容はうる覚えです (neocy)
2005-09-14 09:25:45
親からの影響についてはあまり書いてなかったような・・・。

文庫本で軽ーく読める感じでしたから、細かく覚えてなくて。(^^;



見沢さんは服役中、欲しいものはほぼすべてお母さんが調達してたんですが中にはイケナイ物などもこっそり入っていたのです。

普通に生活していたらなんの苦労もなく手に入るものでも

獄中ではお母さんからの調達が唯一の手段だったのですから

あの手この手を考えて、それにお母さんもとことんつきあっては

ある時は突き放して・・・という様々が書かれた本でした。

偏執狂的な見沢さんにとことんついていく母親の覚悟を

感じるものでした。

その母子の有様は滑稽、だけど愛を感じるなぁーと、思ったのです。

見沢さんはキャンディーズの大ファンでそれらの切り抜きなども

しつこく所望してたり・・・・

甘えん坊のおぼっちゃんだったのかもしれないけど。



返信する
こんにちは (kazu-n)
2005-09-14 11:38:20
再びコメントありがとうございます。

どこの母親もきっと似たような感じかもしれませんね。



ところでneocyさんの話を読んで思い出したのですが、最近発売になった三島由紀夫氏の全集のなかに、なんと母親同伴のインタビューというのが収められているそうです。

質問者が何かたずねると、まず母親が答えるのだそうです。

「あ、うちの息子はそうじゃありませんのよ」

という具合に。

そのあとで、息子に

「そうだったわよね」と同意を求め、

これに答えて三島が「うん。そうだよ。お母さん」と答えているのだそうです。



鈴木邦男氏がHPに書いてたから間違いないでしょう。

英雄も人の子。母は強しですな。
返信する

コメントを投稿

雑感」カテゴリの最新記事