中澤まゆみブログ「コミュニティヘルスのあるまちづくり」

医療と介護、高齢社会をテーマに書くノンフィクションライターのブログ。

第2回「とことん世田谷」フォーラムの報告

2015-02-15 17:35:45 | 日記
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当事者に聞く、世田谷の地域包括ケア

昨年10月に続いて、住民視点からの「世田谷型地域包括ケア」を探る2度目の「とことん世田谷」フォーラムが、
2月11日に開かれました。現在、各地で模索されている地域包括ケアは行政主導の「支援者側」からの地域包括ケアですが、
その発想をひっくり返して「支援を受ける側」からの「地域包括ケアせたがや方式」をつくるきっかけにしよう、というが今回のテーマです。

登壇者の今井さん(高次脳機能障害当事者)は、忘れてしまう記憶障害や左側を見落としてしまう左半側空間無視、
迷子になる地誌的障害などの高次脳機能障害と、毎日なんとかうまく付き合いながら日々生活している方。音楽が楽しみで、リハビリになっています。
多くの人にこの障害を知って欲しいし、あきらめないで、やりたいことをやると少しずつできるようになってくることをみんなに伝えたいと発言してくれました。
11月で65歳になります。現在、障害者のホームに通っていますが、介護保険では通えなくなるので、どんな生活になるか不安だと話してくれました。

脳性麻痺の近藤さんは、電動車いすを使ってひとりで外出し、写真を撮っています。
車椅子ならではの問題として、施設や駅などのバリアフリーの問題について話してくれました。
段差やトイレについては、高齢者も同じ問題を抱えていると、まちづくりのありかたについても語ってくれました。

精神障害をもつ鶴田さんは、自助グループやオープンスペース活動を通して、当事者活動を続けています。
もっと現場の障害当事者たちの生の思いを聞いてほしい、
そして、それによって、行政や政策がより実態の伴った、本当に心ある支援に発展していくことを切に願っていると、発言してくれました。

当事者の発言のあとは、11のグループに分かれ、50分にわたって討論し、
世田谷ではどんな地域包括ケアをしていったらいいのかを、話し合いましたが、共通の提言が出てきました。

■地域包括ケアには、ひとつの形はない。
■住民が自分たちの地域を知り、そこで何が必要なのか、自分たちに何ができるのかを考えることが、最初のステップ。
■小さな地域の縁側を、点としてどんどんつくっていこう。
■それをネットワークにして、「住民主権」の地域包括ケアを提言していこう。
■行政は、当事者、介護家族、住民が地域包括のしくみづくりに参加できる、プラットフォームをつくってほしい。

保坂区長も、世田谷区では「住民主体」をやっていく、と力強い発言をしてくれました。
「世田谷では地域包括のモデルケースをスタートしたが、それはスタートしたというだけで、つくっていくのはこれから」と。
最後に「皆さん、3回目もやりますか?」と提案したところ、「いいとも!!」の大拍手。今回はほんの入口です。
「とことん世田谷」フォーラム、次回はもっと具体的な提言に進めていきたいと考えています。









新刊「おひとりさまの終の住みか」出ました

2015-02-15 17:23:38 | 日記
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元気なうちに考えてほしい「住まい方」と「しまい方」

新刊「おひとりさまの終の住みか」出ました。
見かけたら、お手に取ってみてください。”おひとりさまシリーズ”5冊目です。
「在宅」の選択肢は増えてきましたが、自宅では家族の介護負担、高齢者や施設ではケアの質などの問題があり、
介護を支える介護職員も在宅医療を支える訪問看護師も、圧倒的に足りていません。
安心して自分らしく死ねる場所を見つけるには、どうしたらいいのか。
この本では選択肢の実情とともに、これまでのような「おまかせ」ではなく、
自分なりの「住まい方」と「しまい方」を考えながら、
現状を変えていくための知恵を私たち自身から出していくことも必要だという、そんな思いも込めて書きました。



中澤まゆみ[著]
2,000円+税 四六判並製 248頁 2015年2月刊行 ISBN978-4-8067-1489-7

最期まで自分らしく暮らす。

国が推し進める「病院・施設から在宅へ」の流れ。
選択肢は増えたけど、どれを選べばいいのかわからない。
「介護」は? 「医療」は?
元気なうちに「住まい方」と「しまい方」を考え、制度と実態を知って、自ら選択するための徹底ガイド。

自宅に暮らす両親の遠距離介護、認知症の友人のための施設探し、介護施設でのボランティアなど、
著者自身が当事者として現場に深くかかわり、綿密な取材を重ねた。
自宅か、高齢者住宅か、施設か、それとも「とも暮らし」か。
これ以上ないわかりやすさで「終の住みか」を解説。