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echo garden

基本的に読書感想文です。

星の王子様 10

2006-01-23 23:08:24 | Weblog
 どうでもいいことですが、星の王子様の謎解き、正直言っていっぱいいっぱいです。
 続き。
 「花との仲がこじれたことが原因で王子様は旅たち、きつねとの交流によって何かを学び、あるいは思い出し、<ぼく>と共に井戸を見つける」
 これがこの物語の中心軸だと思います。
 王子様は6歳のころの<ぼく>であり、<ぼく>のこころを構成する一つの(一人の)要素であり、今は独立して行動する一人の人格である存在です。
 王子様が経験したことは、つまり<ぼく>が経験したことでもあるのです。
 逆に言えば<ぼく>が現実世界で経験したことのこころの中のイメージが王子様の物語、とゆうことです。
 恋愛は大人が子供のこころでするものです。恥ずかしいので詳しくは説明しませんが。
 王子様は<ぼく>の恋愛を受け持っていた、こころの部分だとおもいます。
 もちろん、恋愛だけでなく、音楽を楽しんだり、友達と馬鹿騒ぎすることなども担当だったと思います。
 この辺の見解は内観法的観察によるものです。
 「星の王子様」がサンテグジュペリの実体験に基づいた物語であるなら、<ぼく>はサンテグジュペリと何十パーセントかシンクロした人物のはずです。
 ということは、花は彼のエキセントリックな妻、コンヌエロに違いありません。
 ちなみに、サンテグジュペリが貴族の中でも高位の伯爵家の出であることを思えば、なぜ王子様が普通の子供でなく、王子様の格好をしているのか分ります。
 物語には書かれてませんが、<ぼく>はこの事故の近い過去に恋人との仲がこじれ、喧嘩別れのような状態になっているんじゃないでしょうか。
 そして不時着し、<ぼく>の表面的な意識の部分はこの生死に関わる問題に、現実的に対処しようとしているが、無意識の世界では彼女とのことでが気になってしょうがない。
 この心の分裂によって、王子様は<ぼく>から飛び出してきたのだと思います。
 ではきつねは何者でしょう?
 これが1番の難問でした。
 きつねは特別な存在です。まるで王子様の全てを見抜き、導く禅マスターのようです。
 単に「賢者」の象徴だとすれば、ふくろうや猿のほうがふさわしいはずです。
 きつねは賢いと言うよりも、ずる賢いイメージです。
 この物語の中からは結局分りませんでした。
 しかし、サンテグジュペリの生涯にまで視野を広げれば答えが見えてきます。
 彼にとってジュビー岬での日々は「生涯で最も幸せな日々だった」と回想しているように、とても思い出深いものです。そして砂漠についてのイメージもここで培われました。
 インターネットで調べたところによると、西サハラのジュビー岬には今でもスナギツネと呼ばれるきつねが多く棲んでいるようです。サンテグジュペリがそこにいたころはもっと数が多かったそうです。
 彼のなかで砂漠ときつねが結びついていたとしても不思議じゃありません。
 きつねとは砂漠の象徴だと思うのです。
 つまり、砂漠に不時着してから、<ぼく>が機体の修理にいそしんでいる間、王子様は愛の問題について砂漠と会話していた、それがきつねのエピソードだと思います。
 しかし砂漠と会話するとはどうゆうことか、砂漠は何かがあるのではなく、なにもない場所です。
 そこで会話するということは、結局自分自身と会話し、自分の奥深くに沈み込んでゆく、と言うことです
 そして最も深い場所で答えをみつけた。
 一つの問題に解決の道筋をみつけた王子様は、もう一つの、生死と言う問題に<ぼく>と一緒に対処します。
 花との問題が人と人との問題だとすれば、こんどは人と自然、拡大解釈すれば人と世界との問題です。
 この世界は敵か味方か?
 なぜ一晩歩いたくらいで井戸を見つけられたのか?
 偶然ではありえません。
 井戸を見つけたのは明け方ですが、奇跡はすでにその夜のうちに起きていたとおもいます。
 井戸はその奇跡の結果、あるいは反射によって夜のうちに穴が開き、石が積みあがり、滑車と桶が現れた。
 <ぼく>は砂漠を見て「美しい」と言った。
 王子様が傍らにいなければ出なかった言葉だと思いますが、それは奇跡だった。
 なぜならそれは自分に死をもたらす風景だからです。
 <ぼく>は自分の利害に関係なく、この世界を肯定した。
その無条件の肯定、それがこの世界という名の砂漠の井戸なんじゃないでしょうか?
 もちろん、僕自身はそんな心境に達したことはありません。想像で言ってるだけです。

 「すべての美しいものは何かを隠している」
 このセリフはこの物語自身をも表現している。と思います。
 これまで謎解きをしてきましたが、まだ、大切な何かが隠れている、と感じます。
 何か、サンテグジュペリの人類に対する祈りのようなものを感じるのです。
 
 
 
  
   
 
 
 

星の王子様 9

2006-01-21 02:55:49 | Weblog
 倉橋由美子さんのあとがきによると、星の王子様は聖書とコーランの次に売れているそうです。
 そして、倉橋さんは他の二つはあまり良くない本なので一緒に並べるのは好きじゃない、と書かれてました。
 結構、危険な発言だと思います。倉橋さん度胸あります。
 また、表面的には難しくないけど、一歩踏み込むと謎と矛盾に満ちている、と言う点でも聖書と共通性があります。
 そこで僕なりに謎解きに挑戦してみました。
 念のために言っておきますが、文学作品は解釈に自由度があるのがいいところなので、今から書く解釈を強要するつもりはありません。ただ一つのアイディアとして提案するだけです。
 
 王子様は大蛇の絵を描いたころの<ぼく>そのものだと思います。
 そう考えるといろいろな事がうまく説明できるのです。
 まず、最初に登場したときに「羊の絵を描いてよ」といいます。
 王子様の星に行くと絵の羊が実体化してバオバブの芽を食べてくれるらしい。
 絵、つまりイメージが実体化する世界・・・それは心の中に他なりません。
 誰の心かといえば、<ぼく>しかいません。
 王子様が最後に死んだかどうか良く分らない消え方をしますが、あれは、<ぼく>が通常の世界に戻ることになったので自分も通常の居場所である、心の中に帰っていったのです。
 蛇に噛まれたのは別れの悲しみを表現した、とゆうことだとおもいます。
 人のいる場所から1000マイルも離れることによって水圧が消え、心のなかの住人が出てきたのでしょう。
 とすると、王子様がいた宇宙は<ぼく>の心の内宇宙であり、<うぬぼれや>や<酒飲み>なども、<ぼく>のこころを構成する一員だとゆうことになります。
 そう言えば<ぼく>が修理に夢中になってる時に、「君はまるで一日中机に向かって仕事してる男みたいだ!」と王子様に怒られてますが、その時まさにその男が<ぼく>の心の前面に出てきていたわけです。
 王子様が子供のころの<ぼく>なら、王様は年寄りになったときに現れるであろう、<ぼく>なのかもしれません。
 そうゆう、特に根拠は見当たらないのに、自分は偉大だと思い込んでる老人とゆうのは良く見かけるものです。
 無意味な規則に縛られる点灯夫
 問題から逃げることしか知らない酒飲み
 知識だけで全て分った気になってる地理学者
 などなど、これら愚かな人たちは誰の心にも住み着いているものです。

 このように考えることは、人のオカシイところをあげつらって笑うよりも、僕は好きです。

 では6歳の自分は砂漠で遭難している<ぼく>になにをいいにきたのでしょう?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

星の王子様 8

2006-01-20 00:19:15 | Weblog
 その夜。
 二人で砂の上に座っていた。
 そこはちょうど一年前、王子様が地球に降り立った場所だった。
 「ねえ、分ってよあの花は弱い。僕には責任があるんだ。」
 王子様は震えてるようだった。そして少しためらってから立ち上がった。
 一歩踏み出した。僕は見てるしかなかった。
 彼の足元で黄色い影が走った。
 王子様は声もなく倒れた。

 あれから6年たった。
 王子様は無事自分の星に帰れたとおもう。
 なぜなら翌朝見たときにはもう彼の体はそこになかったから。それほど重い体ではなかったのだ。
 けれど一つだけ気がかりなことがある。
 彼にあげたひつじ用の口輪の絵に、固定するためのひもを描きわすれたのだ。
 あの花はだいじょうぶだろうか?
 この夜空の星ぼしのどこかにいるはずの花をひつじが食べてしまったかどうか?
 それはとても重要なことだ。

 あらすじ終わり。

 やっと終わった。なんでこんなに長くなってしまうんだろう?
 星の王子様でこれなら「戦争と平和」とかならどうなってしまうんだろう。ヤバイ気がします。
 
 では感想を書きます。
 Yさんがコメントで「あれ、こんな話だっけ」と(幸い肯定的な意味で)書かれているように、一度読まれたことがある方なら、僕のあらすじに違和感を覚えると思います。
 なぜなら「子供は…」「大人は…」と言うこの物語を最も特徴づける言い回しを全て避けるか、言い換えてるからです。
 例えば、王子様が王様の所を立ち去るときに、僕は
 「変な人だな、とおもった」と書きましたが、元は
 「大人って変だな」です。
 たった一人会っただけで結論早すぎ!じゃないですか?
 この物語はさっと読むと「子供は純粋で素直」「大人は不純で歪んでる」と言うメッセージだけが印象に残ります。
 自分に照らせば、そりゃ今は不純だけど、子供のころも充分歪んでた。
 だから、そうゆうのは安直だ、と思う人はこの本をパスしていくでしょう。
 しかし、この作品はシンボリックな登場人物がシンボリックなエピソードを綴っていく、物語よりは詩に近いものです。
 だから、<子供><大人>も具体的なそれらではなく、それらの本質にあるものを指していると思います。
 しかし、サンテグジュペリが生きていた当時ほともかく、現在ではこれらの表現は通用しないんじゃないでしょうか。
 なぜなら、今は子供は大人みたいだし、大人は子供みたいだからです。それがいいのか悪いのかわかりませんが。
 
 
 
  
   
 
 
 

 
  

星の王子様 7

2006-01-19 01:30:17 | Weblog
 飛行機が直らないまま8日経ってしまった。
 水が底をついた。
 「井戸を探しに行こうよ」
 王子様がピクニックにでも行くような感じで言った。
 それはほとんど可能性のないことだが、確かに行くしかなかった。
 当てずっぽうの方角へ歩き始め、夜になった。
 月明かりが砂丘を照らしている。
 「きれいだ」思わずつぶやいた。
 「砂漠がきれいなのはね、どこかに井戸をかくしているからなんだよ」
 ぼくは突然、疑問が解けて、びっくりした。
 子供のころ住んでいた家には、どこかに宝物が隠されていると言う伝説があった。
 古びてボロくなった家だったが、そのためにとても神秘的に見えたものだ。
 全ての美しいものは何かを隠しているものなのだ。

 夜が明けるころ、僕たちは井戸を見つけた。
 信じられないことだが、夢ではなかった。
 桶につながった綱を引っ張ると、滑車がきしんで音を立てた。
 引き上げた桶の中には透き通った水が波打ち、日光に反射してきらきら光った。
 僕たちは夢中で飲んだ。こんなおいしい水は飲んだことがなかった。
 「滑車が僕たちのために歌ってくれたね、光と水が踊ってくれたね」王子様が言った。
 「一輪の花や一杯の水の中にみんなが求めているものが見つかるんだよ」
 
 翌日の夕方、飛行機の修理を終えて井戸の場所に戻った。王子様が待っているはずだった。
 しかし、王子様は何故か崩れ残った塀に上り、地面に向かって何かしゃべっていた。
 「君は強い毒を持ってるんだね、長い時間苦しまないよね」
 地面を良くみると、そこに黄色い毒蛇がいた。
 僕は驚いて駆け寄ったが、蛇は瓦礫のすき間に潜りこんで逃げた。
 「蛇と何を話してたんだ!」
 「君の機械が直ってうれしいよ、君は家に帰れるね」
 「何故そのことを」
 「僕も家にかえるんだ、今日の夜に。でも僕のところは遠いからね、この体は重すぎて置いてかなくちゃならないんだ。」
 「僕は君の笑い声をもっと聞きたい」
 「これから星空を見上げる時、どこかの星に僕がいて笑ってると思ってみて。そうすれば全部の星が笑い出すから」
   
 

星の王子様 6

2006-01-17 02:09:05 | Weblog
 「仲良しじゃないってどうゆう意味?」
 「まだ心と心がつながり合ってないってことさ、俺にとってきみは大勢いる人間の一人に過ぎない。俺もその辺のきつねの一匹に過ぎない。でも心が通じ合えば君は世界で一人だけの君になり、俺も世界で一匹だけの俺になる。そうすれば俺は君の足音を聞くだけでわくわくするようになる」
 「じゃあ、どうすれば仲良しになれるの?」
 「それには時間をかけなくちゃならない。人間はせっかちだから友達ができないんだ。これから毎日同じ時間にここで会うことにしよう、最初は遠くからお互いチラチラ見るだけ、次の日はちょこっとだけ近づく、3日目は挨拶をかわす。そうやって徐々に距離を縮めていくんだ。するとだんだん君に会うのがまちどうしくなる!」
 そうやってふたりは仲良くなった。
 しかし王子様はすぐに出発しなければならなかった。
 「俺は寂しくなるよ」きつねは言った。
 「仲良しにならない方がよかたのかな?」
 「いや、これから小麦畑が君の髪の色にそまる季節の度に俺はうれしい気持ちになれるのさ、それからもう一度あのバラ園に行ってごらん、きっと違って見えるから」
 王子様はバラ園に行ってみると、確かにきつねの言う通りだった。
 そこに咲いていたには美しいだけで空っぽの花だった。
 自分の星にいた、眺めたり、世話をしたり、喧嘩をしたあの花とは似ても似つかないものだった。
 王子様はきつねのところに戻っていった。
 「君の言いたい事がわかったよ、悲しむ必要なんかなかったんだ」
 「目では何も見えない、心で見なくちゃ大切なものは見えないんだ」きつねは言った。
 「もう一つ大事なことは、心を通わせたものに対しては責任がある。きみはその花に責任がある」