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魂響

2007-12-05 00:30:33 | 短編作品
 樹海の朝。
 繁茂する草木を、豪雨が残した草露を、苔生した地面を、地面に落ちた小さな実りを、
 生まれたばかりの朝日が包む。

 一匹のキモリがひょっこり起き出す。まだ重たい瞼を擦ると、キモリは嵐の通り過ぎた森の中、穏やかな日差しの中を探検し始めた。
 昨日の破壊がもたらした変化に心を弾ませながら。そうして河原を歩いていた時、砂に埋もれた一つの輝きを捉える。
 掘り出したそれは、表面がツヤツヤとして、中から規則的な音が聞こえてくる。円盤形をした金色の蓋は容易に開いた。
 
 それは、

 ────時を刻むモノ。

 キモリには初めて見るものだったが、
 不思議と、自分の手の中に納まる感触を、ずっと前からそこにあったかのように、当たり前のものみたいに感じていた。
(本文より)

 
 嵐は過ぎ去った。
 加速もせず、戻りもしない。
 やさしく時を刻み続ける豊かな森で、キモリは‘それ’と出会ったのだ。


作品名「魂響」
作者:天波八次郎様

                                  (おまけ)


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