俳聖を慕いて

俳聖といわれる芭蕉を想いながら、俳句を詠む楽しみを綴っていきます。

一服の清涼感

2024-09-08 16:19:45 | 日記

 夏の暑さにほとほと疲れたところに、台風が居据わり長きにわたって蒸し暑く、時々の大雨の天気が続いた。何かスカッとさせてくれるものはないかと考えても、そうそう今の生活の中に見つけられるものではなく、時々酒など飲みながらボーっと時間を過ごしていく、そういう日々を送っていたのだと思う。気が付けばもう月が替わって9月になっていた。そして、台風などいつの間にか去ってしまった。というか、迷走した挙げ句に熱帯低気圧に変身してしまったらしい。確かに今までに経験したことのないものだったと思う。

 さて酒の話が出たところで、自分は酒が結構好きでまあそれなりに強いほうだと思っていた。少なくとも弱くはないと思っていたが…。しかしこの数年自分はそれほど酒に強くない、というかあまり酒に向いている体質じゃないのではないかと思うになった。年を取ったからではないと思う。仕事をしている頃は付き合いで飲むことが多いから好きとか好きでないなど関係なく、とにかく飲んでは仕事をしてまた飲んでの繰り返しで、酒に向いているかどうかなど疑問に思うことはなかった。

 しかし、仕事から離れて酒を飲むとまさに酒に向き合わざるを得なくなるのだろう。その結果、どうも自分はこれまで思っているほど酒に向いていないと思うようになった。しかし、だからといって酒をすぐにやめるとかではなく悪あがきをするものである。それは、ビールや日本酒など飲んでいる酒の種類が合わないから、酒が体質に合わないと思ってしまうのだろうとひらめいた。まさに人間の人間たる所以でそういう賢者のひらめきが脳裏をよぎったのだ。

 そこで、さっそくビールや日本酒などは止めて、これまであまり飲んだことのないワインを飲むことにした。きっと、麦や米など原材料が良くない。それは、体を酸性にしてしまうからだ。ところがワインは酒の中で体に入るとアルカリ性に働くらしいということを小耳はさんで、よしこれだと思った。さっそくワインを求めて飲み始めた。むろんワンコインで買える安いワインだが…。そして、飲み進めていくとこれが大当たりだった。ワインのほうが体調がいいのである。

 現実はそうなのだが、今一つパッとしないのはワインがうまいのかどうかということである。安物のワインを飲んでいるからだといわれてしまえばそれまでだが。これまでの人生でほとんど飲んできたことのないものだけに、どうなのだろうと思ってしまった。私の働いている時代、ワインなど似合う職場などどれほど日本の社会にあっただろうか。まあそう思うこと自体、自分の歩んできた道が偏っていたのかもしれないが。ワインが心の底からうまいと思えないが、ワインのほうが体質に合っていることは間違いないようである。酒を飲み飲み40年近く働いてきてそんなことも気づけなかった自分とは一体何なんだろうと思った。

 さて、つい酒の話からしょうもないことを長々書いてしまったが、この不快な日々の中で一服の清涼感を求めるべく頭の中をよぎる光景があった。今年は終わってしまった季節ではあるが、それは黄金色の麦の穂が一面に実って、その上を風が吹き去って麦の穂が一面揺れるのである。自分はその中にたたずんで何ともいえないさわやかな時間を過ごすのであるが、その時麦は風に吹かれなくとも実りの時を迎えた喜びに自ら揺れているのではないかと思ったのである。むろん空想かもしれないが、何十年も生きている自分が酒のことで書いたように自分のことをこれほど知らないのだから、麦がどうなのかなど皆目見当がつかなくても不思議はないと思って、そんな想いから詠んでみた句である。

         黄金の穂 風なく揺れる 麦の秋  

                            令和6年9月8日

コメント
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