マニの読書日記

ぼちぼち更新。

赤土色のスペイン

2011-02-05 | 社会を学ぶ
◆235 『赤土色のスペイン』堀越千秋

 一番好きなお話は「全部嘘」。こんなお話。

 ホアン・アグヘータの父、老アグヘータは伝説的な唄い手とし
て知られている。その老アグヘータが自分の死期を悟ったとき
仲のよかった友人のぺぺを枕元に呼んでこういった。

 「ようぺぺ、おめえには長い間いろいろとお世話になったなぁ。
おれもいよいよもうだめだ。長い友情のしるしに、ひとつ言って
おきたいことがある。おれはおめえにいろいろと、カンテの歴史
だのヒターノの言い伝えだのを教えたっけなぁ。ぺぺ、あれは全
部嘘だよ」

 老アグヘータのカンテを愛し尊敬していろいろな援助を惜しま
なかったぺぺのために、老アグヘータはおもしろそうなことを一
生懸命に考えてぺぺに教えてきたのだ。この話を読んでフラメ
ンコに関する技術的、歴史的な説明をすべて疑うようになったの
はいうまでもない(笑)でも芸術って、そんな情熱的な嘘によって
伝えられている気がしますね。



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