◆235 『赤土色のスペイン』堀越千秋
一番好きなお話は「全部嘘」。こんなお話。
ホアン・アグヘータの父、老アグヘータは伝説的な唄い手とし
て知られている。その老アグヘータが自分の死期を悟ったとき
仲のよかった友人のぺぺを枕元に呼んでこういった。
「ようぺぺ、おめえには長い間いろいろとお世話になったなぁ。
おれもいよいよもうだめだ。長い友情のしるしに、ひとつ言って
おきたいことがある。おれはおめえにいろいろと、カンテの歴史
だのヒターノの言い伝えだのを教えたっけなぁ。ぺぺ、あれは全
部嘘だよ」
老アグヘータのカンテを愛し尊敬していろいろな援助を惜しま
なかったぺぺのために、老アグヘータはおもしろそうなことを一
生懸命に考えてぺぺに教えてきたのだ。この話を読んでフラメ
ンコに関する技術的、歴史的な説明をすべて疑うようになったの
はいうまでもない(笑)でも芸術って、そんな情熱的な嘘によって
伝えられている気がしますね。
一番好きなお話は「全部嘘」。こんなお話。
ホアン・アグヘータの父、老アグヘータは伝説的な唄い手とし
て知られている。その老アグヘータが自分の死期を悟ったとき
仲のよかった友人のぺぺを枕元に呼んでこういった。
「ようぺぺ、おめえには長い間いろいろとお世話になったなぁ。
おれもいよいよもうだめだ。長い友情のしるしに、ひとつ言って
おきたいことがある。おれはおめえにいろいろと、カンテの歴史
だのヒターノの言い伝えだのを教えたっけなぁ。ぺぺ、あれは全
部嘘だよ」
老アグヘータのカンテを愛し尊敬していろいろな援助を惜しま
なかったぺぺのために、老アグヘータはおもしろそうなことを一
生懸命に考えてぺぺに教えてきたのだ。この話を読んでフラメ
ンコに関する技術的、歴史的な説明をすべて疑うようになったの
はいうまでもない(笑)でも芸術って、そんな情熱的な嘘によって
伝えられている気がしますね。