先輩と後輩、それは決して変わることのない縦社会の縮図です。
優しくて友達のように接することが出来る先輩もいますが、大抵は
気をつかう存在ではないでしょうか。
私の先輩がお土産屋さんの営業マンとして活動しており、何かしら
用事があるそうで、今日は来てしまうことになりました。
出来ればお会いしたくないですが、どう頑張っても、逃げ切るには
限界がありますからね。
ピンポーン♪ ピピピピ、ピンポーン♪ ピンポーン♪
何回も押すなよ。クイズ番組じゃないんだから。 ガチャ。
どうも先輩! 心よりお待ちしてました。
「おう、まんぼ~じゃないか。久しぶりだな」
「最後に会ったのが、いつなのかも思い出せないぞ」
「全く連絡が取れないから、俺のことを忘れてたんじゃないか」
忘れるなんて、とんでもありません。
最後にお会いしたのは何年も前ですよね。
先輩には学生時代から可愛がって頂きましたが、テストの直前に
消しゴムを隠して頂いたことが、特に思い出深いです。
あのピンチを乗り切ったからこそ、今の自分がありますから。
(忘れたくても、忘れられないんだよ)
「ハッハッハッ! ちゃんと覚えてるじゃないか」
「そうだそうだ、そんなことがあったな」
「絶対に間違いが許されないプレッシャーは凄かっただろ」
「物を隠すシリーズなら、靴を片方だけ隠したり、集めてるマンガを
1冊だけ隠したパターンも思い出したぞ」
「本当によく遊んでやったもんだ」
そうです。そうです。 本当に楽しかったですね。
(靴もマンガもコイツが犯人だったのか・・・)
「なんだかんだと、俺たちも長い付き合いじゃないか」
「それでだな、俺も何かとお前には世話になったと思うから、今日は
お返しに素敵なものを持って来てやったぞ」
「遠慮はいらないから、このクッキーを食べてみろ」
いえいえ、先輩が食べてないのに僕が先に食べるわけには・・・。
「それはいいから、次から次にクッキーを食べてみろって」
「美味いか? 美味しいか? どっちだ?」
これは美味しいですね。サクサクしてて、甘すぎることもなく上品な
味のクッキーだと思います。
(どれだ、どれにワサビが入ってるんだ)
「そうだろ。こんなにも美味しいクッキーは沢山の人に知ってもらう
べきだと俺は思ってるわけだ」
「そこで、新聞配達の経験があるまんぼ~が活躍するんだよ」
「お土産のパンフレットを5000冊持ってきてるから、それを近所の
家やマンションのポストに配ってきてくれ」
えーーっ! 僕が配っていいんですか!
いやいや、願ったり叶ったりって、本当にあるんだな。
手首の感覚がなくなるくらい、何かを配りたいと思ってたんですよ。
色々な意味で美味しいな~。
(本当は悲しいけど、嬉しいフリをしなければ)
「よし、今日の用事はこれで終わりだ」
「今から出張でニューカレドニアに行くことになってる」
「そろそろ関西空港に行かないと飛行機に間に合わなくなるから、
空港に向かうことにする」
えーーっ! もう帰るんですか。来たばっかりじゃないですか。
関西空港がコッチに来てくれたらいいのに。
あの空港は海にプカプカと浮いてますから、橋をガチャっと外して、
スイスイーっと移動できるはずです。
もっとゆっくりして下さいよ。 残念だな~。
(本当は嬉しいけど、悲しいフリをしなければ)
やっと大魔王が帰ったか。 塩をまいておこう。
どうせロクでもない用事だと思ってたけど、予想どおりだったな。
ああやって、都合の良い時だけ先輩風を吹かせにくるんだ。
って言うか、ワサビの方が良かった。
新聞配達はやってましたけど、自転車で朝刊を250冊配るのに、
3時間以上はかかってた記憶があります。
配達用の自転車もバイクもないのに5000冊って。
いったい何日かかるんだよ。
ハァ~。 お土産だけに、荷が重いって。
南太平洋・モルディブ旅行専門店・お問い合わせはこちらへ