釣り場で仲良くなった、おしゃべりが好きなオヤジさん。
拾った釣り竿を修理して使ってる、手先が器用なオヤジさん。
質問をしなくても、職場や住んでいるマンションを教えてくれる、
個人情報がダダ漏れのオヤジさん。
静かになったので集中してるのかなと思ったら、昼寝をしている
オヤジさん。
仕掛けを海に投げた勢いで、エサが外れて遠くに飛んで行ってる
オヤジさん。
その事に気付いておらず、エサのない仕掛けで釣ろうとしている
お茶目なオヤジさん。
ぜんぜん釣れる気がしないけど、また釣りに行こう。
いつもの場所に黄色い自転車がとまってる。
今日はオヤジさんに会えそうだな。
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出発をしてから、イルカ君は次々に波を超えて行きます。
泳いだり止まったりを繰り返していますので、予定よりも遅れては
いますが、徐々に群れに近づいているのは確かです。
「もう少し先に進めば、幻のご馳走があるに違いない」
「自分が嫌いだから、ココナツを残してたに決まってる」
「この先の海では、可愛いイルカが僕を待ってるんだろうな」
何を考えてるのか知りませんが、良く分からない独り言をブツブツ
と言いながら前に進んでいます。
ようやく、頭のレーダーが先を行く群れの姿を探知しました。
この調子だと明日には合流できそうなので、日が暮れる前に距離を
稼ぐことにしたようです。
本日のラストスパートでしょうか。
そんなイルカ君が、のんびりと前を泳ぐクジラの親子を追い越そう
とした時に、なんとなく話し声が聞こえてきました。
「コラコラ、そんなに遠くに行ったらダメじゃない」
「乱暴なサメが仲間を集めて、悪いことを計画してるってウワサが
あるのよ」
「見栄っ張りで食いしん坊な魚を探して、何かの仕返しをするとか
言ってるらしいの」
「巻き添えになると危ないから、お母さんの近くにいなさい」
母親のクジラがそこまで言い終えると。
「うわーっ、お母さん! ウワサをしたら本当にサメが出たよ!」
それまで平和だった海が、一瞬で緊張に包まれます。
水面に姿を現した背びれが前方でクルリと向きを変えて、引き波を
立てながらクジラの親子に向かってきました。
突然のことに体が固まってしまい、逃げることもできません。
瞬きをする間もなく、サメとの距離が詰まってきます。
「キャーっ! 子供だけは助けて下さい!」
ところが、サメはクジラの親子には目もくれず、矢のような速さで
真横を通り過ぎ、反対方向へ泳いで行きます。
本当はどうするべきか分かっていたのに、引き返す勇気やキッカケ
がなかったのでは。
戻らないための理由を考えることで、自分自身の行動に辻褄を合わ
せていたのでしょう。
それでも、生まれながらに持っている本能は止められません。
おそるおそる親子が振り返ると、サメにしては丸みのある黒い影が、
オレンジ色の空に浮かんで消えました。
はやく助けに行かないと。
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イルカ君が旅立つ日にまんぼ~の姿はなく、ウミガメ君が見送りに
やってきました。
気持ちを切り替えて出発する。 つもりでしたが・・・。
「イルカ君、元気でね。 また近くに来たら一緒に遊ぼう」
「まんぼ~君から、イルカ君に渡すように頼まれたお土産を持って
きたから受け取ってよ」
「今日のために、何日も前から秘密の場所で拾い集めてたみたい」
「僕は大好きだけど、イルカ君も大好きとは知らなかったな」
山積みのココナツを眺めながら、ウミガメ君の言ってる意味が全く
分からず、イルカ君は呆然としています。
なぜなら、自分はココナツが大好きではないから。
それでも、知能の高いイルカ君の頭は少しずつ整理されて、ある
仮説にたどり着きました。 まさかとは思うけど・・・。
まんぼ~は、自分はココナツが大好きだと勘違いをしてるのでは。
そう考えると、これまでの話が繋がってきます。
勘違いをしてるから、自分のために何度もココナツを拾いに出かけ、
つまみ食いをしてもココナツだけは手を付けなかったのでは。
カモメの話を聞いて泥棒だと決めつけましたけど、本人が盗んだと
認めたわけではありません。
冷静に考えれば、あの食いしん坊ならココナツも食べてしまうのが
普通なのに、いつもココナツだけは残してました。
ウミガメ君に確認をすると、自分がココナツが大好きだという話は
まんぼ~から聞いたと言ってますので、疑いようがありません。
自分が考えていたことと事実が大きく違っています。
悪いことをしたなと思いつつ、ハチャメチャな行動にイライラした
のも事実ですし、どこに気持ちを落ち着かせて良いのやら。
なんとなく、この状況が良くないことは分かりますけど、もう出発
しなくてはなりません。
とても受け取る気持ちにはなれず、ウミガメ君のためにココナツは
置いていくことにします。
出発をしてからも、最後に見たまんぼ~の悲しそうな顔が、頭から
消えることはありませんでした。
どこからどこまでが顔か分かりませんけど。
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「俺たちは先に出発するから、後から追いついてこいよ」
そう言ったのは、群れを束ねるリーダーです。
イルカ君はケガが完全に治ってから追いかけますので、ひと足早く
出発する仲間の見送りに来ています。
あるものはクルクルと回転し、あるものは飛び跳ね、みんな元気に
外洋へ向かって行きました。
そして、時を同じくして。
まんぼ~がお見舞いにやってくると、見送りに出かけているイルカ
君の姿はなく、誰かに貰ったと思われるフルーツが置いてあります。
マンゴーやバナナ、そしてココナツも。
お腹が空いていたまんぼ~は、美味しそうなご馳走に我慢ができず、
目の前のフルーツを食べることにしました。
するとそこへ、イルカ君が見送りから帰ってくることに・・・。
「あーーっ! 僕が楽しみにしてたフルーツを勝手に食べたな!」
「いい加減にしろ! 今日まで我慢してたけど、君のような社会性
に問題がある魚は他にいない!」
「もう知るか! 友達は今日で終わりだ! 顔も見たくない!」
「君の場合、どこからどこまでが顔か分からないけどな!」
イルカ君の大好きなマンゴーやバナナを食べたことで、まんぼ~に
対するモヤモヤした気持ちが爆発したのでした。
やはり、食べ物の恨みは怖いです。
集団で暮らす社会性の高いイルカ君は、単独で暮らすまんぼ~とは
相性が悪いようですね。
お互いに多様性を受け入れる気持ちがないと、このようになること
は避けられません。
それにしても、イルカ君も一言だけ余計だったかな。
どこからどこまでが顔か分からないのは、お互い様ですから。
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