macaroon

人生に乾杯!

おしょりん

2025-04-07 | 映画

2023年製作/120分/G/日本

解説
日本製メガネの95%! は福井県で生産されている! その始まりは、明治時代のことだった。豪雪地帯のため冬は農作業ができず収入の道がなくなる村を助けようと、その地で生まれ育った増永五左衛門と幸八の兄弟が、全身全霊を注いだのだ。その史実をもとに、“ものづくり”の魅力と、実用品かつ装飾品でもあるメガネに渾身の技術と魂を吹き込む職人と、そんな彼らを支える家族を描く。
「おしょりん」とは、田畑を覆う雪が固く凍った状態を指す福井の言葉。おしょりんになれば、回り道しないで好きなところへまっすぐ行ける。いくつになっても、どんな時も、夢に向かって自由に突き進もうという想いが込められた、挑戦と情熱と愛の物語がここに完成した。(公式HPより)

明治37年、福井県足羽郡麻生津村の庄屋の長男である増永五左衛門の妻・むめは、育児と家事に追われる日々を過ごしていた。そんなある日、大阪で働いていた五左衛門の弟・幸八が帰郷し、村をあげてメガネ作りに取り組まないかと提案する。その頃メガネはまだほとんど知られていなかったが、活字文化の普及により今後は必需品になるというのだ。初めは反対していた五左衛門も、視力の弱い子どもがメガネをかけて喜ぶ姿を見て挑戦を決め、村の人々を集めて工場を立ちあげるが……。

先日、福井県を通過した。足羽郡麻生津村(あそうづむら)は、かつて福井県足羽郡にあった村。現在の福井市中心部の南に位置する。そして、福井市の南に位置する鯖江市は、日本の眼鏡フレーム生産の約96%、世界でも約20%のシェアを誇っている。多くの世帯がその特産である眼鏡関連の産業、あるいは業務用の漆器生産に関わっている。ということを知らずに、越前、越中、越後の呼称についても、あいまいなまま、富山に着いた。

日本に眼鏡を初めてもたらしたのは、フランシスコ・ザビエルらしい。ザビエルが大内義隆にプレゼントをしたものが日本最古の眼鏡。日本でのメガネづくりは17世紀に長崎から始まり、18世紀には製造場所が大阪、京都、江戸へと徐々に広がり、20世紀にはいって、大阪や東京のメガネ製造技術が福井県鯖江市に伝わった。

感情移入はあまりできなかったけれど、俳優さんの演技力の評価をしたくなる。

スタッフ

監督:児玉宜久

キャスト

増永むめ:北乃きい
増永幸八:森崎ウィン
増永末吉:駿河太郎
増永小春:高橋愛
橋本千代:秋田汐梨
米田ミツノ:磯野貴理子
豊島松太郎:津田寛治
久々津五郎右衛門:榎木孝明
久々津きり:東てる美
橋本清三郎:佐野史郎


青い衣の女

2025-04-07 | 

Book紹介:1600年代前半、現在のアメリカ・ニューメキシコ州にあたる地域に現れた「青い衣」を着た女性は、「バイロケーション」で身体ごと海を渡ったスペイン人修道女だった!同一の人間が、複数の場所で同時に現れる現象や能力「バイロケーション」。神父、雑誌記者、精神科医が、サイキックや謎の集団、法王庁と関わりながらその謎を探る!20カ国で翻訳されたスペインの人気作家ハビエル・シエラによるスピリチュアル小説の話題作!

ハビエル・シエラ4冊目。スピリチュアル系には、なんとなく馴染めないにも関わらず、今の心境に合うのか、さらっと読んだ。

「青衣の女」といえば、フェルメールの絵を思い浮かべる。あのスモックのような洋服を着ている女性。この絵には、作中に描かれていない窓を前にして、手紙を読む青い衣服の女性が描かれている。女性の外観からは妊娠しているようにも見えるが、確証はないそうだ。この小説は、青い衣の女。結論からいえば、それは天使。

スペインとアメリカのニューメキシコ州、バチカン、ニューヨーク、ヴェネチアが交錯する。スペインではマドリード、ビルバオなどを行き交う。修道院、図書館、寺院など、舞台となる場所も興味深い。

バイロケーションをした修道女と聖母の混同。数人の神秘家修道女の対外離脱現象を利用して聖母崇拝を浸透させていく。修道女たちは、特定の振動数の音楽に浸って、恍惚状態が促進されると、バイローケーション能力を発揮する。それが「アレルヤ唱」。

自分の心より目の方を信じる、精神より肉体の感覚の方を重視する、と気づかないことがある。

偶然は存在しない、というカルロス。意味のある偶然の一致、共時性、シンクロニシティ。


最後の晩餐の暗号

2025-04-03 | 

Book紹介:1497年、ミラノで若き大公妃が急死する。そのころ〈予言者〉なる匿名の人物からの手紙が、毎週のようにローマ教会に届いていた。ミラノ大公の不穏な動きを訴える内容には信憑性があり、教皇庁の秘密諜報組織〈ベタニア団〉の一員である異端審問官アゴスティーノ神父が密偵として派遣される。
アゴスティーノが滞在したサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院ではミラノ大公の命を受けたレオナルド・ダ・ヴィンチが「最後の晩餐」を完成させようとしていた。絵には聖書を無視した点が多く見られる。巨匠は絵に秘密を忍ばせているらしい。
〈予言者〉とはだれなのか、そしてダ・ヴィンチの秘密のメッセージとは。
必死で謎解きに挑むアゴスティーノ。そんな彼に献身的に尽くした修道院の司書が、大公妃葬儀の日、遺体で発見された。恐怖の表情を浮かべ、首を吊って――。
数多く登場する歴史上の人物、原始キリスト教やプラトン哲学、そして数秘術などの暗号の手法……。芸術と宗教、ルネサンス期のイタリアを堪能できる歴史ミステリーは、『ダ・ヴィンチ・コード』の知的スリル、『薔薇の名前』の重厚さを併せ持つ作品として世界的にヒットした。

上記の絵は、Wikipediaより引用

ミラノに過去2回も訪れているのに、「最後の晩餐」を観ていない。何を考えていたのだろう、たぶん、何も考えていなかった、と思う。

ハビエル・シエラ。3冊目。内容として重複している部分は、著者が言いたいことなのだろう。二人のイエス。イエスとヨハネ。イエスとマリア。そしてそのことについて意味する絵。

語り手は、ローマ教皇庁の異端審問官アゴスティアーノ・レイレ神父。老境にある神父は、エジプトにあって、30年前の1497年、ミラノで起こったことを回想する。カタリ派の秘跡が人々のまなざしと崇拝にさらされているという事実が、異端審問官であった彼の魂を鷲づかみにした。彼は、最後の晩餐(チェナーコロ)に描かれている13人の人物像が、救慰礼の13文字を体現していること、それはコンコレッツオの<善き人>たちが認める唯一のサクラメントであり、心の奥で行われる目にみえない霊的な儀式であることを悟る。転向なのだろう。

一方、レオナルド。ダヴィンチは、秘密の書物を所持していた。秘密の書とは、ヨハネが最後に残した書。天国での秘密の晩餐で、主が愛する弟子に授けた答えが書かれた本。レオナルドは、絵に呪文をこめた。それが、救慰礼の13文字。

この本では、コンコレッツオの<善き人>を、とても好意的に描いている。アゴスティアーノ神父も、人生を変えられてしまう。もちろん、レオナルドも、最後の晩餐の絵で、世界を啓蒙しようとした。

レオナルドにとって、絵は、手段だったのか、とふと思う。とてつもなく高度な手段。


羊子と玲

2025-04-01 | 

この表紙絵の色は、なんとなく、内容にそぐわない気がするけれど、小説は、なかなか面白かった。

斬新な下着デザイナーの羊子と、人間の心の深淵をのぞき込んだ洋画家の玲。戦後日本のファッション界と画壇でともに異彩を放った鴨居姉弟をモデルにした小説。玲の自死のシーンに始まり、姉弟がたどった成功と挫折の波乱に満ちた軌跡を、作家・司馬遼太郎との友情を交えてドラマチックに描きだす。

著者の植松三十里さん、初めて知った。えっ?と思ったのは、羊子の友人の福田定一。玲の自殺から始まる冒頭で、羊子は、福田に、玲の自殺を新聞や週刊誌の書きたてられるのを抑えてもらうように電話する。福田定一こと司馬遼太郎。

鴨居玲。その端正な顔立ちにまず魅かれる。美男子なのだ。石川県金沢市生まれ。石川県立美術館に収蔵されている「1982年 私」。昨年訪れたときは、展示されていなかったが。この絵、私には、ゴヤを連想させる。

石川県立美術館公式HPより

鴨居玲は、1971年2月から3年8か月間、スペインに滞在している。マドリード、バルデペーニャス村、トレド。その前にはブラジル、ボリビアにも滞在。スペインの血が流れているのではないかと周囲の人たちに言われたりしている。

姉羊子、父、母を含めた家族の歴史。誰もが、ドラマを持っている、と今さらながら思わされる。功名、有名、無名などに関係なく。そして誰もが死を迎える。いや、死は向かってくる。死をどう受け止めるか、受け入れるか。

 

・・・描けないという現実が立ちはだかる。すると、もうやりきったという思いが湧いた。未来の若者たちに受け入れてもらえるのなら、自分の人生は、ここまでで充分な気がした。

母の死を受け入れられなかったように、姉を見送るのも耐えられない。・・・姉より先に死にたかった。・・・堂々巡りの出口は、もう本当の死しかなかった。

福田の言葉。「・・・睡眠薬が手放せんやつ。特に私小説家や。普通やったら人には見せない自分の裏側を天下にさらすわけやから、精神的にきついんやろな。自分が何人もおるわけやないから、いったんさらしてしもうたら、後が続かへんし」「玲くんの『1982年私』も、いわば私小説的やけど、今、しんどくはないか」

「没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く」が、2025年5月30日(金)〜2025年7月6日(日)、美術館「えき」KYOTOで開かれる予定。

 


富山県美術館

2025-04-01 | 美術館

期待度満点の富山県美術館に行く。富山県富山市木場町にある公立美術館、略称は「TAD」。2017年3月25日に一部先行オープン、8月26日に全館開館、20世紀以降の近・現代美術作品とポスターやチェアなどのデザイン作品を中心に約16,000点(時価評価額 約270億円)収蔵し、展示紹介している美術館。1981年開館の富山県立近代美術館のコレクションを引き継ぐ。

なるほど。田中一光のポスターや椅子のコレクションが多かったことを納得するけれど、なんだか期待感を裏切られた。