カーテンの隙間から光が差し込む。
太陽の光が私を起こす。
朝、メイクをしながら姉に、今日行く観劇について質問ぜめにされた。
その時は、小ホールで、無料で、とか答えたけど、
私も正直分からなかった。
演劇祭なんて初めてだ。
しかも劇場ではなく、ホールである。
今まで学生演劇も、下北沢の小劇場も、劇団四季も、東京芸術劇場も見たことがあったけれど、
ホールでやる、社会人劇団を観劇するのは初だった。
初めての分野へのワクワクと
久しぶりに友達に会えるワクワク
初めてみる友達の演劇にどきどき
見終わった後、私はどんな気持ちだろう
舞台という熱いものの高揚感でいっぱいだろうか
元気がもらえるだろうか
それとも私はあんなに頑張っていない、私もやってみたかったという後悔で落ち込むだろうか。
久しぶりに会った友達は、綺麗になっていた。
一緒に友達の観劇をする友達にも、久しく会っていなかっため、
私に会うなり抱きついて来てくれた。
久しぶりの友達の優しさに、とても嬉しい気持ちでいっぱいになった。
家族以外の人と触れたのはいつぶりだろう。
人と近い距離になること、
人と直接会うことの大切さを実感した。
小ホールの入り口まで来ると、
大きな声で、滑舌のいいスタッフが案内してくれた。
そうだ。この感じ。
演劇する人の声が懐かしく思えた。
席はひと席ずつ空いていて、少し安心した。
それでもほぼ満席で、劇団の人気が伝わってくる。
前の方の席が運良くまだ空いていて、通路側に座っている人に「すみません」と言いながら席についた。
お偉い方の挨拶が終わると、いよいよ段幕が上がった。
役者が舞台の中心に立っている。
この役者はいつから舞台に立って待っていたのだろう。
バミリは貼ってあるか…
などと考えていたら、ストーリーに置いていかれそうになった。
テンポよく進むコメディ。
段々舞台の作りよりもストーリーに引き込まれていく。
友達は物語が1/3ほど進んだところで舞台に現れた。
友達の大きな声が舞台に響く。
私のよく知っていた友達は、私の知らない人たちに混ざり、体全体を使って演技をしている。
ああ、もう私の知らないところで、ここで、友達は頑張っているのか。
でも、役の中でも隙間から少し感じるいつもの友達の雰囲気に、少し安心している自分がいるのに気づいた。
まだ大丈夫。まだ人生置いていかれていない。
そう自分に言い聞かせるように、心の中で何回も唱えていた。
お話はコメディだけど、日々現実を生きる人々に訴えかけるメッセージ性もある舞台だった。
ストーリーが終わると、舞台に役者が全員出てきた。
カーテンコールだ。
役から解放された役者さんたちの笑顔。
まるでカーテンの隙間から差す太陽の光みたいだ。
ああ、この笑顔を見るのが私好きなんだったと思い出させてくれた。
友達の瞳もキラキラ光っていた。
観劇前に想像していた感情は、どれも外れていたけれど、
久しぶりの友達、舞台の演者の笑顔が、
しばらく自粛生活で家にこもっていた私を、太陽の光のように起こしてくれた一日だった。