「約束の花瓶、持ってきましたよ」
「ホントですか?じゃあ、ちょっと待ってもらえますか?」
彼女は紙袋をさぐり、小ぶりのスケッチブックを取り出した。一体何が始まるのだろうと思った時、彼女は照れたような表情を浮かべながら言った。
「私、美大へ通っていて、あんまりうまくはないんですけど、イラストを描いたりもするんです。白いバラをいけるために、俊介さんという男性が持ってきてくれる花瓶はどんなだろうって想像してみました」
「じゃあ、それを?」
「はい、簡単なデッサンって感じで描いてみました。『いっせいのせ』で見せ合いませんか?私、目をつぶってますから、包みを開いて花瓶を出したら、声をかけて下さい」
それじゃあ、と言って包装を解き始めた。彼女はスケッチブックに指をはさむと、目を閉じてうつむいた。その顔を見て、可愛い人だなと改めて思いながら、ちょっと気になる感じを抱いた。
(見たことがあるというか、懐かしいような気がするのはどうしてだろう?)
そんな思いにかまっていられる場合ではなかったので、とりあえず荷解き作業を続行した。
「じゃ、いくよ。イチ、ニのサン」
小学生みたいだなという気恥ずかしさに耐えながら、掛け声に合わせて花瓶をテーブルの上に置いた。同時に彼女の細い指が舞うように動いて開かれた頁を見た時、不覚にも僕は小さな叫び声を上げてしまった。そしてその驚きは、目を開いて花瓶を見た彼女にも同じように伝わった。
(これって、一体どういうこと?!)
細長い円筒形、三日月型の切れ込み。僕が持ってきたのと、ほとんど同じ花瓶が、白黒のデッサンとなって彼女のスケッチブックに描かれていた。高さと幅の比率や微妙につけられた口の部分の傾斜などは、現物とまったく一緒ではなかったが、誰が見ても、この花瓶を描いたものってことになる。もっともスケッチブックの方には、数本のバラが挿されてはいたが。クリスマス・イブに起きた素敵な偶然の一致に、僕の胸は一層高鳴った。
後のことは話すまでもないと思う。不思議な出来事への驚きと、年に一度の夜という絶好の設定が、僕たちの間につながった道を作ってくれた。まさに「サンタがくれたプレゼント」となったわけだ。彼女の笑顔を見ながら、僕は柄にもなく神に感謝する気持ちになっていた。
「ホントですか?じゃあ、ちょっと待ってもらえますか?」
彼女は紙袋をさぐり、小ぶりのスケッチブックを取り出した。一体何が始まるのだろうと思った時、彼女は照れたような表情を浮かべながら言った。
「私、美大へ通っていて、あんまりうまくはないんですけど、イラストを描いたりもするんです。白いバラをいけるために、俊介さんという男性が持ってきてくれる花瓶はどんなだろうって想像してみました」
「じゃあ、それを?」
「はい、簡単なデッサンって感じで描いてみました。『いっせいのせ』で見せ合いませんか?私、目をつぶってますから、包みを開いて花瓶を出したら、声をかけて下さい」
それじゃあ、と言って包装を解き始めた。彼女はスケッチブックに指をはさむと、目を閉じてうつむいた。その顔を見て、可愛い人だなと改めて思いながら、ちょっと気になる感じを抱いた。
(見たことがあるというか、懐かしいような気がするのはどうしてだろう?)
そんな思いにかまっていられる場合ではなかったので、とりあえず荷解き作業を続行した。
「じゃ、いくよ。イチ、ニのサン」
小学生みたいだなという気恥ずかしさに耐えながら、掛け声に合わせて花瓶をテーブルの上に置いた。同時に彼女の細い指が舞うように動いて開かれた頁を見た時、不覚にも僕は小さな叫び声を上げてしまった。そしてその驚きは、目を開いて花瓶を見た彼女にも同じように伝わった。
(これって、一体どういうこと?!)
細長い円筒形、三日月型の切れ込み。僕が持ってきたのと、ほとんど同じ花瓶が、白黒のデッサンとなって彼女のスケッチブックに描かれていた。高さと幅の比率や微妙につけられた口の部分の傾斜などは、現物とまったく一緒ではなかったが、誰が見ても、この花瓶を描いたものってことになる。もっともスケッチブックの方には、数本のバラが挿されてはいたが。クリスマス・イブに起きた素敵な偶然の一致に、僕の胸は一層高鳴った。
後のことは話すまでもないと思う。不思議な出来事への驚きと、年に一度の夜という絶好の設定が、僕たちの間につながった道を作ってくれた。まさに「サンタがくれたプレゼント」となったわけだ。彼女の笑顔を見ながら、僕は柄にもなく神に感謝する気持ちになっていた。
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