「今回の展開は、ほとんど私の脚本によるものだけど、全部が全部、作り事ではない気もしてるのよ」
「どういうことですか?」
「だってそうでしょ。黄色い車のお弁当屋さんはおいしかった。また食べたいけど、回ってこないので、チラシの番号に電話した…」
「そしたら、もうやめていて、たまたま自宅にいた私が電話に出た。私は気になっていた男性が持っていた、手提げの会社の人だったので驚いた」
「私だって、逆にあなたの会社にこんな人がいませんかと聞かれ、それが同僚だとわかって、おまけに仲をとりもってほしいとまで言われて、ホントびっくりしたわよ。つまり、偶然のいたずらがなかったら、成立しなかったってことよね。あなたも可愛い顔して、かなり大胆だと思うわ」
「やっと就職が決まったんです、小さいですけどインテリアデザインの会社に。学生最後の思い出に思い切って告白したいけど、どうしたらいいんだろうって迷ってました」
綾香は足元に視線を落とした。今日は杖を持ってきてはいないが、黒いタイツを履いた右膝は微妙に形が違っている。
「私、足のことは仕方がないと思っているんですよ。あまりネガティブにならずに、自分ではちゃんと受け入れているつもりだし。でも、どこかでブレーキ踏んでるって言うか…。だから、電話がきて奈々子さんとお話ししたときに、思い切ってお願いしちゃいました」
奈々子は長めに残っていたタバコを灰皿でもみ消すと、綾香に向き直った。
「あなたのひたむきさには頭が下がるわ。私も二人には、心からエールを送らせてもらうわね。だから、もし何かあったら言って。できるだけ力になるから。さてと、では私への報酬をお願いできる?」
「本当にいいんですか?現在は、失意のフリーターですよ」
「クリスマスは過ぎちゃったけど、私にとってはお気に入りなのよ」
綾香はくすくすと笑いながら、連絡先を書いたメモを奈々子に手渡した。
「何か可笑しい?」
「だって、仮定の話ですけどね。もし、奈々子さんも兄とうまくいって、二組ともめでたくゴールインということになったとするじゃないですか?」
「ずいぶん先走った話ねえ、まあいいけど」
「そしたら、奈々子さん、彼の義理のお姉さんってことですよ」
驚きは時にドラマを紡ぎ出す。
・・そんな人々の火照った思いを冷ますように、今年も残りわずかとなった街には、ちらちらと白いものが舞い始めていた。
「どういうことですか?」
「だってそうでしょ。黄色い車のお弁当屋さんはおいしかった。また食べたいけど、回ってこないので、チラシの番号に電話した…」
「そしたら、もうやめていて、たまたま自宅にいた私が電話に出た。私は気になっていた男性が持っていた、手提げの会社の人だったので驚いた」
「私だって、逆にあなたの会社にこんな人がいませんかと聞かれ、それが同僚だとわかって、おまけに仲をとりもってほしいとまで言われて、ホントびっくりしたわよ。つまり、偶然のいたずらがなかったら、成立しなかったってことよね。あなたも可愛い顔して、かなり大胆だと思うわ」
「やっと就職が決まったんです、小さいですけどインテリアデザインの会社に。学生最後の思い出に思い切って告白したいけど、どうしたらいいんだろうって迷ってました」
綾香は足元に視線を落とした。今日は杖を持ってきてはいないが、黒いタイツを履いた右膝は微妙に形が違っている。
「私、足のことは仕方がないと思っているんですよ。あまりネガティブにならずに、自分ではちゃんと受け入れているつもりだし。でも、どこかでブレーキ踏んでるって言うか…。だから、電話がきて奈々子さんとお話ししたときに、思い切ってお願いしちゃいました」
奈々子は長めに残っていたタバコを灰皿でもみ消すと、綾香に向き直った。
「あなたのひたむきさには頭が下がるわ。私も二人には、心からエールを送らせてもらうわね。だから、もし何かあったら言って。できるだけ力になるから。さてと、では私への報酬をお願いできる?」
「本当にいいんですか?現在は、失意のフリーターですよ」
「クリスマスは過ぎちゃったけど、私にとってはお気に入りなのよ」
綾香はくすくすと笑いながら、連絡先を書いたメモを奈々子に手渡した。
「何か可笑しい?」
「だって、仮定の話ですけどね。もし、奈々子さんも兄とうまくいって、二組ともめでたくゴールインということになったとするじゃないですか?」
「ずいぶん先走った話ねえ、まあいいけど」
「そしたら、奈々子さん、彼の義理のお姉さんってことですよ」
驚きは時にドラマを紡ぎ出す。
・・そんな人々の火照った思いを冷ますように、今年も残りわずかとなった街には、ちらちらと白いものが舞い始めていた。