では、さっそく。
建物の裏口に横付けされているバス、

こちらが本日の現場です。
すでに5,6人がバスの外で待っている。
一人が吸い込まれては、一人が出てくる。
出てくる人は、”アノ”検査を終了したせいか表情が明るい。
わたしには、そう見える。

15分ほど待つを扉が開いて、
中にいる保健師さんが人差し指を立てた。
一人、入ってください。
じゃじゃん、じゃん、じゃじゃん。
(ターミネーター風)
バスに入ると正面にカーテンで仕切られた更衣室、
右手に
検査を待つ人の2人掛けのイス、
左手に
次ぎに受ける人の一人掛けイスと、
その人に発泡剤とバリウムを渡す保健師さん。
そしてその奥が、
現場
戸口には受診者を整理しながら、
検査が終わった人に下剤と水を渡す保健師さん。
更衣室で着替えを済ませ、待ちイスに座る。
自然に視線は
次に受けるおばちゃんへ。
保健師さんから 親指ほどの小さな小瓶(発泡剤)を渡される。
調べたところによるとこれを飲むとゲップが出るらしいが、
ゴクンと飲むようにしてクリアしなくてはならない。
おばちゃん、飲む。
水で流しこむ。
・・・ゲップは出ますか?
すぐさま紙コップを渡される。
・・・奴だ。
飲む。
おばちゃんは一気に飲み込めないらしく、
顔をしかめ、”まずいー”口型に
唇についた、白い液体。
・・・これは、・・・ホラーだ
おばちゃん、飲む。
飲めない。
でも、飲む。
がしゃんと扉が開いて終わった人が出てきて、
おばちゃんが吸い込まれる。
「●●さん」と呼ばれ、わたしは次席につく。
わたしの後に控える2人のおばあの熱視線を一心に受ける。
・・・がんばります
保健師さんから発泡剤を渡される。
すぐ水で流しこむ。
すかさず紙コップを渡され、バリウムだ!と思うと
ゲップどころではなかった。
・・・アディオス
バリウムを、飲む。
・・・ん?
ゴクゴク飲む。
・・・思いのほか?
飲めるところまで、飲む。
・・・そんなにまずくはないよ?
でもさすがに一気に飲みない。
胃がいっぱいだ。
一旦飲むのを止めて、二度目に口にすると。
・・・なんと。
今度は、まずい・・・。
えー。ちょっと、キビしいかもー。
わたしの唇にも白い液体がついてるんだろうか・・・。
余裕がなくて、熱い視線を送るおばあたちにも 感想を述べられない。
白い液体だらけの口を、開けてはいけないような気も、する。
がんばって、飲む。
飲めない
思わず、保健師さんに「全部?」
と聞いてしまう。
苦い笑顔で「できれば」
という。
だめよ、ちろみ、もう、逃げられない。

頑張って、飲む。
でも、もう、飲みきれないよ・・・
保健師さんが見かねたのか、
「・・・もう、いいよ」
「ほ、ほんと?」
いいの? ホントに、いいの?
と、言うのもつかの間、扉が開いた。
湾曲した黒い板に張り付くように立つ。
レントゲン技師さんが見えないどこかから指示を出す。
「はい、じゃぁ、台を倒しますので、取手を握って~」
うぃ~ん。
どきどきどきどき
台が倒れるや否や、
「ハイ、右向いて~、
ハイ、左~、・・・一回転してください。
ぐる~っと。ハイ、もいっかい、ぐる~っと」
斜めに倒れた台の上で、ネズミのようにくるくる動く。
「ハイ、じゃ、スバヤク右向いてっ!
ハイ、今度は左にスバヤクっ!
も~ちょっと右向いて・・・、そこ!」
ぐるぐるしてると、方向感覚がなくなってくる。
「右は反対だよ~」
あわわ、あわわ。
「ハイ、また、スバヤク右向いてっ!
ハイ、今度は左にスバヤクっ!」
息もつかせぬほど、あっちだこっちだと言われ、
台もナナメになったり横になったりして、
なんだか、一人無声コントでもしてるような気分で、
笑けてくる
水分の重みで居場所がわかるくらいの胃の中が、気持ち悪い
それからしばらく、ぐるぐるとした後、
「ハイ、終了~。お疲れ様でした」
・・・ホントっすよ。
だが、しかし。
終わったのだっ!
扉を出ると、すぐに下剤と水をもらった。
「これで、・・・終わりですよね?」
「ハイ、終わりです。
帰ってからいっぱいお水飲んでね。
お疲れさまでした」
解き放たれた
バスを降りるとさっきまでの豪雨が止んでいた。
晴れまではいかないけど、十分だ
胃がウニョウニョしてるけど・・・十分だ
家について、札幌に住む妹に電話をした。
「あらー、ねーちゃん、げんき~?」
「それがさー、がん検診受けてきました!」
「おお~!エライ、エライ!」
この世でたぶんこの妹以上に
私ががん検診を受けた事を喜んでくれる人はいません。
「ええーっと、胃がんと~」
「おお!」
「大腸ガンと~、レントゲンもしたし~、血も抜いたし~」
「おお~!エライ!エライ!」
「そ~ゆ~と思ったよ(笑)」
おそらく日本でも、こんなに検診熱心な姉妹もいないのでは(笑)。
なぜならわたしたちは18年前に病気で母親を亡くしているから。
脳の病気で倒れた母は一生懸命闘いましたが、
4年後に亡くなりました。
大病が
闘病が
命が
生きることは。
19だったわたしは母が亡くなったとき、
命を粗末にしては、ぜぇぇぇったい、いけないんだ。
なにがあっても、寿命まで生きなくてはいけないんだ。
かあさんの姿が、「生きる」そのものだ。
と、そう思っていました。
きっと、妹もそうです。
こうやって検査を受けることにためらいがないのも、
母のおかげでです。
そばにはいませんが、
母なりの方法でわたしたちの健康を支えてくれている。
おなかの底で感じます。
わたしもあと10年もすれば亡くなった時の母の歳を超えますが、
そこから母と二人で経験していくのだと思うと、
今から、
ワクワク
元気で、元気で!迎えたい。
家に帰ってから・・・、
お昼御飯を食べながら・・・、
まだかまだかと待ちかねた、白い便。
その日の夕方、
ぐぐっと手ごたえを感じたお腹を抱えてトイレに行った。
あ・・・
初めまして、白便さん。
ようやく検査が終わったのでした。
完
建物の裏口に横付けされているバス、

こちらが本日の現場です。
すでに5,6人がバスの外で待っている。
一人が吸い込まれては、一人が出てくる。
出てくる人は、”アノ”検査を終了したせいか表情が明るい。
わたしには、そう見える。

15分ほど待つを扉が開いて、
中にいる保健師さんが人差し指を立てた。
一人、入ってください。
じゃじゃん、じゃん、じゃじゃん。
(ターミネーター風)
バスに入ると正面にカーテンで仕切られた更衣室、
右手に
検査を待つ人の2人掛けのイス、
左手に
次ぎに受ける人の一人掛けイスと、
その人に発泡剤とバリウムを渡す保健師さん。
そしてその奥が、


戸口には受診者を整理しながら、
検査が終わった人に下剤と水を渡す保健師さん。
更衣室で着替えを済ませ、待ちイスに座る。
自然に視線は
次に受けるおばちゃんへ。
保健師さんから 親指ほどの小さな小瓶(発泡剤)を渡される。
調べたところによるとこれを飲むとゲップが出るらしいが、
ゴクンと飲むようにしてクリアしなくてはならない。
おばちゃん、飲む。
水で流しこむ。
・・・ゲップは出ますか?
すぐさま紙コップを渡される。
・・・奴だ。
飲む。
おばちゃんは一気に飲み込めないらしく、
顔をしかめ、”まずいー”口型に

唇についた、白い液体。
・・・これは、・・・ホラーだ

おばちゃん、飲む。
飲めない。
でも、飲む。
がしゃんと扉が開いて終わった人が出てきて、
おばちゃんが吸い込まれる。
「●●さん」と呼ばれ、わたしは次席につく。
わたしの後に控える2人のおばあの熱視線を一心に受ける。
・・・がんばります

保健師さんから発泡剤を渡される。
すぐ水で流しこむ。
すかさず紙コップを渡され、バリウムだ!と思うと
ゲップどころではなかった。
・・・アディオス

バリウムを、飲む。
・・・ん?

ゴクゴク飲む。
・・・思いのほか?
飲めるところまで、飲む。
・・・そんなにまずくはないよ?

でもさすがに一気に飲みない。
胃がいっぱいだ。
一旦飲むのを止めて、二度目に口にすると。
・・・なんと。
今度は、まずい・・・。

えー。ちょっと、キビしいかもー。

わたしの唇にも白い液体がついてるんだろうか・・・。
余裕がなくて、熱い視線を送るおばあたちにも 感想を述べられない。
白い液体だらけの口を、開けてはいけないような気も、する。
がんばって、飲む。
飲めない

思わず、保健師さんに「全部?」

苦い笑顔で「できれば」

だめよ、ちろみ、もう、逃げられない。


頑張って、飲む。
でも、もう、飲みきれないよ・・・

保健師さんが見かねたのか、


いいの? ホントに、いいの?
と、言うのもつかの間、扉が開いた。
湾曲した黒い板に張り付くように立つ。
レントゲン技師さんが見えないどこかから指示を出す。

うぃ~ん。
どきどきどきどき
台が倒れるや否や、

ハイ、左~、・・・一回転してください。
ぐる~っと。ハイ、もいっかい、ぐる~っと」
斜めに倒れた台の上で、ネズミのようにくるくる動く。

ハイ、今度は左にスバヤクっ!
も~ちょっと右向いて・・・、そこ!」
ぐるぐるしてると、方向感覚がなくなってくる。

あわわ、あわわ。

ハイ、今度は左にスバヤクっ!」
息もつかせぬほど、あっちだこっちだと言われ、
台もナナメになったり横になったりして、
なんだか、一人無声コントでもしてるような気分で、
笑けてくる

水分の重みで居場所がわかるくらいの胃の中が、気持ち悪い

それからしばらく、ぐるぐるとした後、

・・・ホントっすよ。
だが、しかし。
終わったのだっ!
扉を出ると、すぐに下剤と水をもらった。


帰ってからいっぱいお水飲んでね。
お疲れさまでした」
解き放たれた

バスを降りるとさっきまでの豪雨が止んでいた。
晴れまではいかないけど、十分だ

胃がウニョウニョしてるけど・・・十分だ

家について、札幌に住む妹に電話をした。



この世でたぶんこの妹以上に
私ががん検診を受けた事を喜んでくれる人はいません。





おそらく日本でも、こんなに検診熱心な姉妹もいないのでは(笑)。
なぜならわたしたちは18年前に病気で母親を亡くしているから。
脳の病気で倒れた母は一生懸命闘いましたが、
4年後に亡くなりました。
大病が
闘病が
命が
生きることは。
19だったわたしは母が亡くなったとき、
命を粗末にしては、ぜぇぇぇったい、いけないんだ。
なにがあっても、寿命まで生きなくてはいけないんだ。
かあさんの姿が、「生きる」そのものだ。
と、そう思っていました。
きっと、妹もそうです。
こうやって検査を受けることにためらいがないのも、
母のおかげでです。
そばにはいませんが、
母なりの方法でわたしたちの健康を支えてくれている。
おなかの底で感じます。
わたしもあと10年もすれば亡くなった時の母の歳を超えますが、
そこから母と二人で経験していくのだと思うと、
今から、


元気で、元気で!迎えたい。
家に帰ってから・・・、
お昼御飯を食べながら・・・、
まだかまだかと待ちかねた、白い便。
その日の夕方、
ぐぐっと手ごたえを感じたお腹を抱えてトイレに行った。

あ・・・

初めまして、白便さん。
ようやく検査が終わったのでした。
完