「ユノ様、ユノ様!!」
「どうした?チャンミン…」
昨日、見たばかりの…殆ど同じ光景に苦笑いしながら、作業場に飛び込んできたチャンミンを受け止める。
「今、鳥が来たんだろ?お礼に何かを貰ったのか?」
「あ!そうなんです!みんな喜んでくれて、クッキーのお礼にって、木の実や野菜をくれたんですよ!キュちゃんのお兄ちゃん達も運んでくれたんです!」
「だから、いつもより賑やかだったのか」
「そうですけど、そうじゃないです!!」
報告したかったのは、それじゃない。腕の中で跳ねるチャンミンは、目を輝かせ、俺を見上げる。
「ユノ様、今日はケーキの日です!!」
「…ケーキの日?そんなのがあるのか?」
「キュちゃんが教えてくれました!」
笑顔のチャンミンが一際大きな声を上げた時、煩い鳥が飛び込んでくる。
「チャンミン!流石に今日は旦那の日じゃないよね!」
鳥は嬉しげに叫ぶ。その言葉に被せるように、俺もチャンミンに囁いた。
「今日がケーキの日なら…ケーキが大好きなチャンミンの日だな」
イチゴの日が俺の日なら、今日はチャンミンの日。昨日、チャンミンが言った事をなぞってみた。
向けた微笑みに、可愛い笑顔を見せてくれただけでなく、元気な返事が飛んでくる。
「ユノ様!ちょっと違います!今日はケーキを好きな僕が…大好きなユノ様の日です!」
「……」
「ユノ様が作ってくれるケーキが大好きです!」
「……」
「僕にとっては毎日がユノ様の日です!」
「…チャンミン」
チャンミンの答えに煩い鳥は唖然としている。俺は込み上げる愛しい気持ちを抑えきれず、思い切り、抱き寄せる。
「…ユ、ユノ様、苦しいです!」
「チャンミン、何が食べたい?今から何でも好きなケーキを用意するから、何でも言ってくれ」
俺の言葉を真剣に受け止め、考え始めるチャンミンの後ろで、煩い鳥がけたたましく叫ぶ。
「ボクは木の実入りケーキが良い!クリスマスの時より、胡桃を沢山、追加して!」
「お前のリクエストは聞いていない」
「ユノ様!僕も胡桃を追加に賛成です!」
「え?」
「キュちゃん!木の実たっぷりケーキ、僕も味見していい?」
「もちろん!」
勝手に纏まる話を拒否出来る訳はなかった。飛び回る鳥用に、木の実のケーキを焼きながら、チャンミン用のクリームを泡立てて。
今日も甘い香りに包まれて、幸せな時間が流れていた。
おしまい。