「…っあ …ユノ様…っ」
攻められるのも悪くはないが…やっぱり俺は攻める方が良い。入り込んでいたチャンミンの舌先を押し返しながら、絡める。
「…チャンミンの方が…可愛い…」
耳元で囁きながら露出した足に指を這わせると、チャンミンは驚いて肩を跳ねさせた。
「…僕より…ユノ様の方が…」
「いや、俺より、チャンミンの方が数百倍可愛いに決まっている…」
「…んんっ!」
さっきまでの積極姿勢は失せ、チャンミンの恥じらう様子や跳ね返される肌の弾力を楽しんでいると、バタバタと羽音を響かせつ鳥が飛び込んでくる。
「ちょっと!!まだ、日は高いでしょ!!」
「ちょっ!!無視するな!!」
俺は敢えて、だけれど、チャンミンに耳に鳥の声は本当に届いていないのか。
ピタリとくっついた俺達は離れる術を知らないように、行為を続ける。
「ケーキ屋さん!!クッキー、まだある!?」
「…あ!ウサギさんが…絡まってる…」
聞こえた声は赤頭巾とオオカミのだろうか。視線を向けようとして、それとは別の突き刺さるような視線を感じた。
「…お前達は客を待たせる気か」
その威圧感ある声に、俺もチャンミンも動きが止まる。
「こんにちは~!!」
その最中、店先から、また別の声が聞こえる。
「あ!!あの声は!!」
「双子ちゃんが来た!!」
俺のチャンミンも含めて反応を示し、作業場から一気に誰も居なくなった。
「んぱ!!」
「んま!!」
両親に抱えられた双子は、この前とは違う恰好をしている。頭はミツバチで…あれは南瓜ではなく、イチゴだろうか。
「これじゃないと駄目だって、二人とも怒るから。ちょっと、改良したの」
「そうなんですか!」
「チャンミンちゃんが手伝ってくれた部分も、ちゃんとここに付けたからね」
「ありがとうございます!!」
母鹿チャンミンの話に、俺のチャンミンは大きく頷いて感動していた。
可愛いイチゴ姿の双子は厳つい虎ユノを指差し、抱っこをせがんでいる。
「…でも、鹿ミンちゃん…本当に綺麗です…」
「そう?」
母鹿チャンミンは旦那とお揃いの黒いマントを解き、赤いドレス姿を披露する。
…何というか…確かに、綺麗だ。俺のチャンミンや、その他のチャンミンにはない…色香と言うのか…大人の雰囲気を漂わせている。
「チャンミン!それ以上は危険だ!!」
「あ、ユノ様」
俺だけで無く、至る所から集まる視線に慌てる旦那が自身のマントでさっと包み隠す。
それを素直に受け入れる母鹿チャンミンはとても嬉しそうだ。
「旦那さんの仮装は何ですか?」
「ユノ様は吸血鬼だよ」
「ドラキュラですか!?」
「そうなの。格好いいでしょう?」
「…でも、ちょっと…怖いです」
俺のチャンミンは恐がりらしい。格好良さより、可愛いのが良いと言いたげに、振り返り俺を見る。
ニコリと微笑むと、我慢が出来ないと眉間に皺を寄せながら、また駆け寄ってくる。
「もう!イチャイチャは良いから!早くみんなにお菓子を配って!!」
その場をしきる頼もしい鳥の叫び声に、他のユノとチャンミンが動き出すのを確かめて、俺はチャンミンと共に作業場へこっそり戻る。
「…ユノ様」
「でも、やっぱり俺のチャンミンが…一番可愛い」
「…僕のユノ様も…一番可愛いです…」
小声で囁き、耐えきれないように唇を合わせる。
「そう言えばユノ様、トリックオアトリートって…どう言う意味ですか?」
「お菓子をくれないと、悪戯するって意味だったような…」
「…お菓子か悪戯ですか…」
チャンミンはどちらも楽しそうだと、可愛く呟く。
「お菓子もあるが…先に…二人で悪戯をしようか…」
「…ユノ様、それって…」
用意した菓子は後回しにして。
また鳥が飛び込んでくるまで、本能に従い、求めるままに。
お互いの温もりや甘さを貪り合っていた。
おしまい。