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一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

ケーキ屋さんのハロウィン編 17

2016-10-31 | ケーキ屋さんのハロウィン編



「…っあ …ユノ様…っ」

攻められるのも悪くはないが…やっぱり俺は攻める方が良い。入り込んでいたチャンミンの舌先を押し返しながら、絡める。


「…チャンミンの方が…可愛い…」

耳元で囁きながら露出した足に指を這わせると、チャンミンは驚いて肩を跳ねさせた。


「…僕より…ユノ様の方が…」
「いや、俺より、チャンミンの方が数百倍可愛いに決まっている…」
「…んんっ!」


さっきまでの積極姿勢は失せ、チャンミンの恥じらう様子や跳ね返される肌の弾力を楽しんでいると、バタバタと羽音を響かせつ鳥が飛び込んでくる。





「ちょっと!!まだ、日は高いでしょ!!」




「ちょっ!!無視するな!!」



俺は敢えて、だけれど、チャンミンに耳に鳥の声は本当に届いていないのか。
ピタリとくっついた俺達は離れる術を知らないように、行為を続ける。







「ケーキ屋さん!!クッキー、まだある!?」
「…あ!ウサギさんが…絡まってる…」


聞こえた声は赤頭巾とオオカミのだろうか。視線を向けようとして、それとは別の突き刺さるような視線を感じた。




「…お前達は客を待たせる気か」


その威圧感ある声に、俺もチャンミンも動きが止まる。






「こんにちは~!!」


その最中、店先から、また別の声が聞こえる。


「あ!!あの声は!!」
「双子ちゃんが来た!!」


俺のチャンミンも含めて反応を示し、作業場から一気に誰も居なくなった。












「んぱ!!」
「んま!!」


両親に抱えられた双子は、この前とは違う恰好をしている。頭はミツバチで…あれは南瓜ではなく、イチゴだろうか。


「これじゃないと駄目だって、二人とも怒るから。ちょっと、改良したの」
「そうなんですか!」
「チャンミンちゃんが手伝ってくれた部分も、ちゃんとここに付けたからね」
「ありがとうございます!!」


母鹿チャンミンの話に、俺のチャンミンは大きく頷いて感動していた。

可愛いイチゴ姿の双子は厳つい虎ユノを指差し、抱っこをせがんでいる。




「…でも、鹿ミンちゃん…本当に綺麗です…」
「そう?」


母鹿チャンミンは旦那とお揃いの黒いマントを解き、赤いドレス姿を披露する。

…何というか…確かに、綺麗だ。俺のチャンミンや、その他のチャンミンにはない…色香と言うのか…大人の雰囲気を漂わせている。





「チャンミン!それ以上は危険だ!!」
「あ、ユノ様」


俺だけで無く、至る所から集まる視線に慌てる旦那が自身のマントでさっと包み隠す。

それを素直に受け入れる母鹿チャンミンはとても嬉しそうだ。


「旦那さんの仮装は何ですか?」
「ユノ様は吸血鬼だよ」
「ドラキュラですか!?」
「そうなの。格好いいでしょう?」
「…でも、ちょっと…怖いです」




俺のチャンミンは恐がりらしい。格好良さより、可愛いのが良いと言いたげに、振り返り俺を見る。

ニコリと微笑むと、我慢が出来ないと眉間に皺を寄せながら、また駆け寄ってくる。




「もう!イチャイチャは良いから!早くみんなにお菓子を配って!!」



その場をしきる頼もしい鳥の叫び声に、他のユノとチャンミンが動き出すのを確かめて、俺はチャンミンと共に作業場へこっそり戻る。








「…ユノ様」
「でも、やっぱり俺のチャンミンが…一番可愛い」
「…僕のユノ様も…一番可愛いです…」


小声で囁き、耐えきれないように唇を合わせる。



「そう言えばユノ様、トリックオアトリートって…どう言う意味ですか?」
「お菓子をくれないと、悪戯するって意味だったような…」
「…お菓子か悪戯ですか…」

チャンミンはどちらも楽しそうだと、可愛く呟く。


「お菓子もあるが…先に…二人で悪戯をしようか…」
「…ユノ様、それって…」



用意した菓子は後回しにして。

また鳥が飛び込んでくるまで、本能に従い、求めるままに。

お互いの温もりや甘さを貪り合っていた。

















おしまい。



ケーキ屋さんのハロウィン編 16

2016-10-31 | ケーキ屋さんのハロウィン編





「…このクッキーは、赤頭巾とオオカミ用だからな…」


この前の集まりの時よりは上達した、それなりに見える二人がお互いの顔を描いたアイシングクッキーを袋に入れる。

それから、チャンミンのおやつ用のクッキーは別に…。

作業の合間に個別の用意をしていると、それまでとは違う、チャンミンの声が辺りに響いた。






「チャンミンちゃん!!可愛い!!お姫様みたいっ!!」



何を喜んでいるのだろう。顔を覗け、様子を窺うと、虎ユノとお坊ちゃんチャンミンが訪ねて来たようだった。


あれは何の仮装だろうか。お坊ちゃんチャンミンは…水色のワンピースと白のエプロンに…身を包んでいる。
不思議の国のアリス…だとか、説明が聞こえない。…そうか。あの綺麗な布をあんな形に仕上げたのか。よく似合っていて可愛らしい。

…その可愛いお坊ちゃんチャンミンを大事に抱えている眼帯をつけた虎ユノは…、迫力のある…義賊にしか見えない。


「虎ユノさんは何の仮装ですか?」

「ユノはね、海賊の船長さんなの!格好良いでしょ?」
「う、うん。ちょっと怖いけど…」


片眼だけでも、凄みは十分。俺のチャンミンは頷きながら、少々怯えているようにも見えた。




「ボクのチャンミンとお揃い!?そのエプロン、可愛いね!」

「…え?」

駆け寄ってきた赤頭巾ユノがお坊ちゃんチャンミンに話し掛けると、虎ユノはさっと腕を回し、大事な存在を隠す。


「…ユノ。僕より…そっちのチャンミンが良いの…」
「そんな事ないよ!!」


拗ねるオオカミチャンミンを慌てながら抱き寄せる赤頭巾に…虎ユノの嫉妬を喜ぶお坊ちゃんチャンミン。


そんな光景を見ていると、寂しくなったのか、俺のチャンミンが唇を尖らせながら、作業場に視線を向けた。



「あっ!ユノ様!!」


ドアから顔を出し様子を窺っていた事に気付いたチャンミンが大きく目を見開いて、声を上げる。


喜んで飛び付いて来る事を期待したのに、泣きそうな顔をして駆け寄ってきた。



「どうした、チャンミン…」
「可愛いユノ様は…僕のだって言いましたよね!!」
「……」


これは怒っているのか?
勢いの止まらないチャンミンに押し込まれ、作業場内へと戻される。



「落ち着いてくれ、チャンミン…」
「他の誰にも見せたら、駄目です!」
「でも、既に鳥は見た…」
「可愛いユノ様は、僕のですっ!!」


何がそうさせるのだろうか。兎の恰好をしたチャンミンは何時もより、独占欲が強くて…感情の起伏が激しい気がする。

…純粋なチャンミンだから、外見の変化に同調しているのだろうか。

…本来の兎はそんな性格をしているのか?

疑問に答えを見つけられないでいると、積極的なチャンミンに唇を塞がれる。



「…ユノ様は…僕のです…」



切ない吐息を漏らして呟くチャンミンをどうやって落ち着かせようか。考えながらも…嬉しいだけのこの状況を楽しもうと…チャンミンの身体を引き寄せていた。












ケーキ屋さんのハロウィン編 15

2016-10-31 | ケーキ屋さんのハロウィン編




「トリックオアトリート!!」

「ハッピーハロウィン!!」



無事に向かえたハロウィンの日。朝から、店先は賑やかだ。

騒ぎまくった鳥のせいで、森の住人がそれぞれ仮装をし、お菓子か悪戯か…と選択を迫ってくる。

ハロウィンは…皆に無料で菓子を配るイベントだったか?と、疑問は多少残る。

それでも、鹿夫婦の知り合いの商人やお坊ちゃんチャンミンの父親から、材料や包材の提供があった。南瓜やサツマイモは鹿夫婦から大量に貰った。

先日まで菓子の用意の手伝いにと、お坊ちゃんチャンミンと虎ユノも来ていた。

だから、これはこれで良いのかと、納得してみる。


今日は店の手伝いだと言って、赤頭巾ユノとオオカミチャンミンが来てくれている。



「やっぱり、チャンミン!その格好、可愛い!!」
「そう?」
「うん!!耳も尻尾も可愛い!!」
「ユノもカッコいいよ…」


接客の合間に聞こえる声は、朝から変わっていないような…。

オオカミチャンミンは仮装の一部だと思われるだろうからと、いつもと違い、耳と尻尾を隠していない。

フリル付きのカチューシャを装着し、ふりふりのエプロンの下にはメイド服を着ている。

元気に動く度に、少し短めの裾が揺れる。その度、傍にいる赤頭巾ユノが慌てたように手を延ばしていた。
いつものように頭巾を被っていない赤毛のユノは執事…のつもりなのだろうか。
タキシードに身を包み、蝶ネクタイもつけている。最初は堅苦しくて動きにくいと不満げだった。それでも、オオカミチャンミンの褒め言葉に表情を緩ませ、頼もしく接客を頑張っている。








「ユノ様!クッキーの詰め合わせ、追加です!!」
「ああ、分かった」


店先から飛び込んで来たチャンミンがその場に留まるから、不思議に思い、顔を上げる。その途端、チャンミンは破顔して飛び付いてくる。



「ユノ様っ!!やっぱり、可愛いです!!」
「…いや、可愛いのはチャンミンだろ?」
「ユノ様も可愛いですっ!!」


チャンミンが頭に付けている飾りが邪魔をするから、俺は不本意さを感じる。



「何やってんの!お菓子を早く!!」

催促にきた鳥の声がしても、チャンミンは気にしていないようだ。



「ねえ!キュちゃんも思うでしょ?」
「何を?」
「ウサギのユノ様!可愛いって!!」


俺と目が会った鳥は凄まじく…冷めた視線を投げてくる。


「…これ、可愛いって言う?」
「可愛いでしょ!だって、うさ耳だよ!?」
「チャンミンは間違いなく可愛いけど…旦那はそうでも…」
「ユノ様は可愛いのっ!!」


白いシャツと尻尾のついたショートパンツ。良く似合っているが露出が高いと止めようとした俺の意見を聞き入れないで、えらくウサギの格好が気に入ったチャンミンは、鳥に真剣に抗議している。

俺は流石に…そんな可愛い恰好は出来ない。チャンミンとお揃いの白いシャツに白いパンツ。それから兎耳の飾りを頭に乗せ、白のブーツを履いて、白ずくめだ。


「みんなに見て貰って判断して貰おうよ!」
「それは駄目!可愛いユノ様は僕のなの!!他の子には見せてあげないの!!」

珍しい反論に、口元が緩む。


「俺はここにいるから。チャンミンは安心して、客の相手をしてくれ」
「はい!!」


袋詰めが終わったばかりのクッキーを抱え、チャンミンは可愛いウサギの尻尾をふりふりさせながら、店先に戻っていった。













ケーキ屋さんのハロウィン編 14

2016-10-31 | ケーキ屋さんのハロウィン編



いつまでもこのままでは、埒が明かない。折角、皆が集まったのだから、何かしらの成果も必要だと思ったのは、俺だけではないみたいだ。

名残惜しげに母鹿チャンミンから離れ、届いた箱に思い当たる事があると言った旦那が荷を運び入れ、開ける。




「うわあ!」
「すごい!!」


感嘆の声を上げる母鹿と俺のチャンミンの様子に、オオカミチャンミンとお坊ちゃんチャンミンも駆け寄る。



「ユノ様!これ、どうしたんですか?」
「商人がどうしても協賛したいとしつこくてな。仕方なく、注文をつけてみたんだ。こんなに早く届くとは、思わなかったけどな…」


箱の中から出てくるのは、仮装に使えそうな飾りや衣装。



「ユノ様!この赤いドレス!!綺麗です!」
「この耳は、ウサギさんの耳ですか?」
「ねえ、ユノ。見て!このエプロン!ふりふりで可愛い!」
「…うわあ…この衣…肌触りが気持ち良い…」


それぞれに手にした物に感動し、それぞれのチャンミンが早速、身に付けようとする。





「ちょっと、待て!」
「何ですか?ユノ様…」


着ていた衣を脱ごうとする母鹿を旦那が慌てて止める。

「今日はまだハロウィンじゃないだろう?」
「でも、ユノ様」
「こんな人目がある場所で、着替えは駄目だ」
「そうですか?」
「それに、可愛いチャンミンは…先ず、俺だけが楽しみたい」
「…ユノ様…」

旦那の漏らした本心に頬を赤らめ、母鹿チャンミンは嬉しげに飛び付く。







「ねえ、チャンミン」
「なあに?ユノ」
「そのふりふりエプロン、その上から着るの?」
「え?」
「ボク、そのエプロンだけで良いと思おうんだ」
「…え?このエプロンだけ?」
「うん!」
「でも、それだと裸に…って事?」
「うん!!だって、チャンミンの可愛い尻尾が良く見えて可愛いと思う!」
「そ、そう?」


確かに可愛いと想像がつく。けれど、そんな格好を外でさせる気か?

赤頭巾ユノの提案に忠告をしようと思った時、そこに考えが至ったような赤頭巾は自分の前だけで良いと発言を訂正していた。







「…ねえ、ユノお兄さん」
「どうした?チャンミン」
「…この衣装…僕が身に纏っても良い?」
「それが気に入ったのか?」
「…うん」
「チャンミンが気に入ったのなら…俺は反対しない」
「…そう」
「でも、チャンミン」
「何?」
「仮装なんてしても…しなくても構わない。どんな奴が相手でも、チャンミンは俺が守るからな…」
「…ユノお兄さん…」


虎ユノはそれまでに見せなかった優しい笑みと甘い囁きをお坊ちゃんチャンミンだけに向けている。





俺のチャンミンが手にしている物を抱え、傍まで駆け寄ってくるのを待っていた時、


「…んぷう!」
「…んぱう!」


俺が抱いている双子は、何か不満げな声を上げた。




「チャンミン!大事な双子ちゃんの衣装は!!」


それに気付いた鳥の叫びに、ハッとした母鹿チャンミンと俺のチャンミンが手にしていた自分用の物を置き、また別の何かを手にして駆け寄ってくる。




「これ、チャンミンちゃんと一緒に作ったから、怒らないで?」
「双子ちゃん!どっちが良い?」


ここに来て作れたのは、双子の衣装だけ。そう言いながら、母鹿が双子に何かを着せていく。




「んぱあ!!」
「んまあ!!」


頭に飾りも付けられて、南瓜の衣装とミツバチの衣装にご満悦の双子。

その笑顔に皆も笑顔になって、賑やかな集まりはそれからも騒がしかった。


















ケーキ屋さんのハロウィン編 13

2016-10-30 | ケーキ屋さんのハロウィン編





「…ユ、ユノ様…っ」


俺の行動が予想外だったのか、チャンミンが声と肩を震わせる。


「…これは…朝の続きですか?」
「いや、このクリームの甘さを確かめるのを忘れたからな。今、味見しているんだ」
「…そ、そうですか」


咄嗟に口を衝いた言い訳。それを疑わないチャンミンは素直に納得している。



「…ユノ様、このクリームはちゃんと甘いですか?」
「ああ、甘い」
「…ユノ様の好みの甘さですか?」
「そうだな、俺の好みは…もう少し…」


そう囁きながら、今度はわざと多めにクリームを垂らす。すかさず、唇を寄せ、チャンミンの柔らかな肌毎、甘さを味わった。












「…あ、ユノ…」
「チャンミン!やっぱり、美味しい!」




「ユノ様、もう少し…」
「…だけどなチャンミン…」


あちらやこちらから聞こえ来るのは、悩ましげな声。視線を向け確かめると、俺達以外のカップルも似たような楽しみ方を始めている。

容姿が似ていれば、考えも至る行動も同じなのか?


そんな疑問はさて置いて、今は衝動に従いたい。

煩い鳥は居ない。双子も眠っている。なら遠慮なく俺のチャンミンを味わおうと衣に手を掛けた瞬間。



バタンと大きな音がして、冷たい風が吹き込んできた。




「…何をしているんだ、お前ら…」




威圧感たっぷりの鋭い声に、俺以外のユノの動きが止まる。


「ケーキ屋さん!何か、お届け物があるみたいです。ユノとケーキ屋さんを間違えた人が何かを置いていきました」



お坊ちゃんチャンミンの可愛らしい声が響く。虎ユノの威嚇による怯みとは別の自制心が働き、ここでこれ以上を始めるのは問題だと、俺も母鹿チャンミンの旦那も思ったみたいだ。






「…そこの二人、何をしている」


「何って、仲良くしてるだけ!」
「…あっ、ユノ…っ」


虎ユノの声に動じない赤頭巾はオオカミチャンミンから離れず、くっついたまま。

その光景を見せないように、虎ユノは上手くお坊ちゃんチャンミンを抱え、威嚇を続けている。






「あの…ユノ様」
「どうした、チャンミン」
「僕…オオカミンちゃんと…お坊ちゃまチャンミンちゃんが…羨ましいです…」
「え?」
「僕もユノ様に…あんな風に抱っこされて…ペロペろされたいです…」
「……」


可愛いチャンミンのお強請りには応えてやりたい。けれど、今は…。いや、するべきか?

なんて、考えていると、俺のチャンミンと同じようなお強請りを口にしていた母鹿チャンミンとその旦那がまた絡み始めている。





「いい加減にしろっ!!」


堪り兼ねた虎ユノが怒声を上げると、それに反応したように、隣の部屋から双子の泣き声が聞こえてくる。


助けを呼ぶ鳥が騒ぎながら飛んできて、一気に騒がしくなり、収拾がつかない。



「ああ、もう!チャンミンだけの集まりにすれば良かった!!」


盛大に嘆く鳥は、大きな溜息を吐いていた。