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一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

とある二人の話。84

2018-05-11 | 財団関係者





「は!?今、何て言った!!」
「聞こえなかったの?今日からMAX君はチョン君と一緒に住んでって言ったの」
「な、な…」
「チョン君の部屋を狼帝の借りの住み家として進呈するの。だから、チョン君をMAX君の部屋に住まわせてって言ったのよ」
「ば、馬鹿な事を…」
「本当はもっとちゃんとした豪華な部屋を用意したいのよ?でも、生憎…手筈が間に合わないのよ」
「だからって…」
「それに狼妃様は気後れするタイプの方みたいだからね。庶民的な部屋の方が良いかと思って」
「だけど!」


機嫌良く迎え入れ、意味の分からない事を口走る彼女に、彼は全力で返事をする。


「俺は喜んで部屋を差し出す!」
「ふ、ふざけるな!」
「今日からよろしくな、MAX!」
「お、おい!」


彼は勝手に、彼女と話を進めていく。騒いでいるのは僕だけだ。意識はあってもぼんやりしている狼帝を抱える人物の横では、小さな二人が楽しげに菓子を食べている。




「狼帝達に警備はつけるから、安心して」
「そこを心配している訳じゃ…」
「貴方達はもう公認の夫婦なんだから、問題ないでしょう?」
「だ、誰が夫婦だ!」
「みんなの幸せに協力する気はないの?」
「みんなって…」

研究員の彼女は真っ直ぐと僕を見据え、返事を迫る。

「言っておくけど、あの小さな二人。もう大人な関係よ?」
「は!?」
「勝ち負けじゃないでしょうけど。引けを取っていても良いの?」
「…そ、それは…」
「チョン君はいつまでも待つでしょうけど。待たせる意味はある?」
「……な」


小声で囁かれ、関係ないだろ!って、言えなかったのは…何故なのか。

ピタリとくっつく小さな二人を見て、僕は何故か…遅れを取り戻したいと思ってしまった。


 

 

「チョン君、部屋から運び出したい物とか、必要な物はある?」
「ある物、全てを進呈する!」
「そう。でもそれだとMAX君が困るだろうから…勝手に見繕わせて貰うわね」
「ああ!」
 
「ちょっと待て!!」

 

彼女の提案に喜々として頷いていると、MAXが雄叫びを上げる。まさか、こんな展開が待ち受けているとは思わなかった。MAXとの同棲まで漕ぎ着けられるなんて。これも突然、現れた老帝達のお陰か?いや、彼女のお陰なのか?兎に角、湧き上がってくる嬉しさは半端ない。何も考えられず、MAXを思いきり抱き締めた。


「な、何をする!!」
「そんなに怒らないでくれよ」
「こんな勝手をされて、怒らない方がおかしいだろ!!」
「俺はMAXと一緒に居られて嬉しいだけだ」
「…っ」
「…チャンミンと離れなくて良いなんて。こんな幸せな事はない」
「…っつ!!」


誰にも聞き取れない耳打ちなら、約束を違えた事にならない。そう思って、名前を囁くとMAXの身体から力が抜け、抱き締めやすくなる。

 



 

「あっ!こっちのお兄ちゃん達もラブラブだ!!」
「あ、本当だね」
「よし、チャンミン!ボク達も仲良くしよ!」
「あ… ユノ…」


駆け寄る小さな二人の声が聞こえた。チラリと視線を向ける。すると、年には似合わない濃厚な絡み合いを始めているじゃないか。


…俺はこの子達に負けているのか…?

不意に浮かぶ想いをどう扱えば良いのか考える。


その時、手の平が頬へと当てられた。MAXのビンタが飛んでくるのかって、一瞬、覚悟した。でも、駆け巡ったのは痛みじゃない。思いもしない…温かさだ。ほんとに一瞬だけの触れ合い。だけど、確かに…唇に何かが触れた!!


「い、今のは!!」
「さっ、騒ぐな!!」


気のせいや勘違いじゃない!MAXから貰った軽いキスに狂喜乱舞しようとした。でも、案の定、ビンタもお見舞いされる。


 

「大丈夫?お兄ちゃん」
「痛くないの?」


バチンと鳴った余りの音に驚いたのだろう。小さな二人は心配そうに俺を見上げてくる。



「ああ!俺は嬉しいだけだ」

「そうなの?」
「そっちの可愛いお兄ちゃん、顔が真っ赤だけど大丈夫?」


「MAXは照れ屋だからな。直ぐに顔が赤くなるんだ。でも大丈夫だからな」

 「そうなの…」
「そうなのか!直ぐ真っ赤になるの、ボクのチャンミンと一緒だね!」


赤頭巾の子はニコッと笑い、オオカミの尻尾を撫でる。その途端、可愛い声が響き、ハッとしたMAXが急に叫んだ。


「ま、負けないからな!!」

 

その言葉の意味は分からない。研究員の彼女だけは腕組みをして、冷静に状況の観察をしていた。