goo blog サービス終了のお知らせ 

東京のソラ

空を見上げることってありますか?
小さく切り取られた東京の空。

日常に潜む狂気

2006-07-14 | TOKYO STORY
けたたましく警笛が鳴り続いた。
急ブレーキをかけた電車がゆっくり目の前を通過し、
ホームの中程で停止した。
降り始めた雨で電車の正面は濡れ始めている。

一瞬何があったのかわからなかった。

ホームの後方から半べそをかいた女の子が
真っ青な顔で携帯で誰かに何かを訴えてながら歩いてくる。
駅員が何人もホームの後方へ走っていく。
ホームにいた人がぞろぞろその後に続く。

もうじき電車が来るなと「その」電車を確認し
いつも乗る反対側のホームに目を移した数秒後の事だった。

その瞬間をもし見てしまったなら
その電車の運転手の表情をもし見てしまっていたなら
ホームに佇む「その人」をもし見てしまっていたら

それらにシンクロしないように無意識をコントロールする。

パトカーや救急車のサイレンがいくつも近づいて
何人もの人々がホーム後方へ走っていった。
ある者は現場責任者の表示をつけ、
ある者は担架を運び
ある者は手術用のゴム手袋をはめ
そして私の前を神妙な表情で何往復もした。
そして私はひどく冷静にそれらを見続けていた。

全ての電車は止まり、構内にはひっきりなしにアナウンスが流れる。
蒸し暑くじっとしていても汗がにじむ夕方。
各駅が止まる反対側のホームは
流れた人でごった返していた。

その後
たった20分程度で電車はまた走り出す。

何もなかったかのように
多くの人がその電車に乗り込み、降りていった。

揺れる想い

2005-03-09 | TOKYO STORY
「心にひっかかっているんでしょう?」

昨日初めて自分の想いを口に出した。
言葉に出すことで自分の気持ちが僅かだけれど整理されていく。
そういう方向に持って行きたがらなかったのも事実。反面、求めているのも事実。

「自分に素直になるべきだよ。」

お互いに傷つけあうのを怖がって触れようともしない。
まずは相手との時間を増やすべきだよ。あなたから誘ってごらん。
頼りがいある兄のような存在で、頼りない弟のような存在で、そしてなにより私の激しい感情を上手にのみこんでくれる。

「もし私がその人とくっついたら、同じ名字になっちゃうよ」
「そしたらワタシも他の人とくっつきます。ワタシだってナマモノなんだから」
「そうだった、ごめんなさい」
「でもきっとその人はタンポポみたいな人なんだね」

地面に根をはりねばり強く生きる。そして繊細な花をつける。
あぁ、そんな人かもしれない。

別れ際、ぎゅっと抱き合った。
もう戻れないんだなと思うと淋しかった。


鑑賞池

2005-02-18 | TOKYO STORY
京浜東北線、田端駅の下り線路脇に金魚の住む鑑賞池がある。たぶんここで乗り換えたりホームのこの場所に立ったりしないかぎり知る人は少ない。この田端という駅は京浜東北線と山手線の分かれ道。ワタシはここで山手線から京浜東北線に乗り換える事が多い。電車を持つホンの数分、何となくここの金魚たちを眺めるのがお約束になっている。

ある夕立の後の夏の日、池から一匹の赤い金魚が飛び出し、池の外で死んでいた。電車は何本も目の前に止まり、そして通り過ぎていったけれど、ワタシはその場から離れがたく、その金魚に「自分自身」を重ね合わせ、どうしようもない焦燥感におそわれていた。

そんな出来事はそれ以来、一度も見かけないが、自分の世界を飛び出したその金魚は何がおきたのかわからないまま死んでいったのだろうか・・・それとも。

鑑賞地の前で佇む人は意外に少ない。そうはいっても自分の前に先客がいることもある。
そんな時は、さりげなく隣にそっと立ち、ワタシも一緒に金魚を眺めるのである。

3連休のトラウマ

2005-02-12 | TOKYO STORY
RRRRRRRRR!
「はい。私、うん、そうなんだ、わかった。気にしないで。うん、、、。」
 深いため息が、私の口からこぼれた。今日は3連休の最後の夜。この3日間というもの何をするにもずっと電話を待っていた。そしてやっとかかってきた電話。今日も、もう終わろうとしていた。

「連休は休めそうなんだ。どこかへ行こう。」
 あの一言で、今までもやもやとしていたものが一気に晴れた気がした。たった一言が自分をこんなにもわくわくさせていたのに。

 そして電話を待っていた自分。怒りというよりも、自分へ対する情けなさが襲った。もう、感覚が麻痺してしまっているのか涙すら出なかった。そして、何も考えずにベットに潜り込んだ。
「ごめん。今度の週末は必ず、、、。」
「うん。そんなに気にしなくていいよ。部屋の掃除とかいろいろできて、かえってよかったかも。うん。私も仕事で忙しかったから、久しぶりにゆっくりしちゃった。」
 なんで、私、笑っていたんだろう。どうして文句を言わなかったんだろう。まどろみながらそんなことを考えていた。

*****

 帰り支度をしている私に同期の友達から電話がかかってきた。
「急なんだけど、今度の週末、スキーに行かない?」
 一瞬、あの人の顔が浮かんだ。でも、口から出た答えは、
「行きたい!」
 自分でもびっくりした。なにかが、音を立てて崩れていく気がした。言ったあとで不思議と後悔はなかった。たぶん次の週末は休みになる確信もあった。それなのに、なぜか、スキーに行くことを私が望んだ。

 友人の別荘での、2泊3日。今まで味わったことのない安らぎを得た。ブルジョアな彼らは生まれ持った恵まれた生活に甘んじることなく、日々の努力・向上を怠らない。私は今までに自分自身のために、自ら進んで何かをし遂げただろうか。今までに何回完全燃焼できただろうか?何れも皆無である自分を振り返るたびに劣等感に苛まれた。そして、それ以上に日々を有効に生きている彼らがうらやましく思えた。恋愛の感情は芽生えなかったけれど、この仲間とのひとときが永遠であればと願った。夜が明けてしまうのをこれほど恨めしく思ったことはなかった。他愛のないおしゃべりすら有意義な時間に変わり、静寂の中でこの余韻に耽る。静かさが妙に心を安らげる。いつからこういう時間を私は失ってしまったのだろうかと思った。

 これからでも遅くはない。そう考えるしかなかった。そして今度こそ実行に移し、やり遂げる。それが私自身が今求める自分自身の姿だった。この想いを実行に移すこと。

私の周りに新しい風が吹き始めた。


「スキー楽しかったよ!!友達の別荘も広くてねぇ、初めての人ばかりだったんだけど、みんなさりげなく大人なの。同い年なのにびっくりしちゃった。あんな人たちに出会えるとは思っても見なかった。」
 もう、言葉が止まらなかった。あの人はどんな気持ちで私のしゃべるのを聞いていたのだろうか。それから、電話はかかってこなくなった。私自身も電話を待たなくなった。

( I.K.B *第1章 1996.2.12)END