FA28mm F2.8
天才アラーキー氏の本です。心に残る言葉がたくさんありました。おすすめの一冊。
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写真っていうのはそれ自体が死に一番近い作業だからね。だから変な言い方だけど写真は止める作業だし、定着する作業だし・・・。写真は色を消すことから始まったでしょ。カラーがモノクロになっちゃったでしょ。色を消すこととか動体を止めることとか写真自体が死に近い要素を一杯持ってるんだよ。
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シャッターを切る行為は手首を切る行為と似てるんだよ。
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普通はさ、これがビルだよ、というのが良く分かるようにすることをライティングと言っているのかもしれないけど、これは何だか分からないでしょ。不可解なライティングっていうかさ。でももしかしたら本当のいいライティングというのはこういうことで、全部が説明されてるんじゃなくて見る人が想像できるようなのがいいんだよ。見る人によってはビルだし、見る人によっては墓石だし、都市にぶち込んだ木だったりね。見る人がどういう風に見てもいいしアタシはそれを全部決め付けたりしたくないわけ。
・・・意識的なこともあるけど無意識でも完全なものをあたしに作らせないように神が応援してくれる。それとカメラだな。ゴッドオアキャメラ。だからあまり完成度の高いカメラを使わないんだよ。
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写真家っていうのは撮ることによって教えられるんだよ。写すことが自分の先生なんだからさ。写真を撮ってればいいんです。ずーっとずーっと。・・・ただ撮り続けてるんだよ。何を撮っているか実は俺もよく見てないんだ。きっと何も撮ってないんだよ。撮るだけの行為、そうかもしれないね。・・・撮り続けていればあとはカメラがよく見て吸い込んでくれるんだよ、アタシの場合はね。写真の天性がない人は一生懸命テーマを探そうとか思ってるでしょ。俺はそういうのはないね。だってしょっちゅう死体を撮りたいと思ってもそんなもんしょっちゅうないだろう、ねぇ。・・・そういうようなことで言えば全然悩むことなんてないんだよ、俺は。
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でもレンズは一つだけど、目ん玉は二つあるわけでしょ。だから実は35ミリが標準なんだよ。それで日常の中で非日常みたいなものを探そうとすると、28ミリになるわけだよ。そこでレンズ選びによって行動派と静観派みたいなのが分かれるじゃない。十メートル離れてみようと思えば長いレンズだし、もう相手に触れるような位置で撮ろうっていうと28ミリなんだよ。でも面白いのは風景とか街とかを撮ろうとすると近づくよりも引くでしょ、28ミリは。
・・・人を撮ると近づきたい、街を撮る時はちょっと引く。28ミリはそういう特徴があるんだよ。だから、画面にたくさん入れ込みたい感覚と触りたい感覚を混ぜると28ミリの写真はよくなるんですよ。なぜか説明しろって言われてもこれは写真屋さんにしか分からない感覚だよな。
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広角は違う、せいぜい28ミリぐらいでしょ。なんか別世界を作るのが嫌いみたいだね。アタシは。ワイドで撮るともうひとつ世界ができる。レンズが作っちゃう。そうすると現実味っていうか現実の味がなくなっちゃうんだよ。やっぱりそういう味がないと好きじゃないんだよね。
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