今日も閉店セールのショップに足を運ぶ。
さすがに狩り尽くされていた。
それでも、前になかったソフトが補給されていたりしたので、めぼしいものを確保。
ボンバーマンウォーズ
パロウォーズ
Ｒ？ＭＪ
グレイトヒッツ
ゾイドサーガ
ブラブ
デュアルブレード
幻想水滸伝カードストーリーズ
店内を見てまわっていると、同系列の別のショップ（これは去年潰れた）にいた店員さんが店内を整理していた。
同じ系列店なので、いても不思議ではない。
この人は、犬みたいな顔をしているので、俺は親しみをこめて「犬」とあだ名をつけていた。
もちろん声に出したことはない。
店内に入って、レジを確認して「あ、今日も犬いるな」といった感じだ。
ちなみに、「犬」と一時期一緒に働いていた、いつもニコニコしている店員さんにも、「スマイル」というあだ名をつけていた。
俺はそれこそ小学生のころから、このショップでゲームを買い続けてきたが、
歴代店員の中でも、この「犬」と「スマイル」は接客態度がとてもよく、ベスト店員賞をあげたいほどのナイスコンビだった。
いつの間にか「スマイル」はいなくなってしまったが、「犬」の方は、前の店舗が潰れるまで働いていた。
まるで沈みゆく戦艦に一人残る艦長のような姿に感動を覚えたものだ。
前の店が潰れてしまい、「もう会うこともないだろう」、そう思っていたのだが、
今日、「犬」は突然俺の目の前に現れた。
またもやゲーム店員として、そしてまたもや潰れ行く店とともに。
「うおっ、犬だ」と心の中で叫んだ。
赤の他人だが、「健在でなによりだ」と思った。
さっそくソフトをレジに出すと、商品整理中の犬は素早くレジに駆け込む。
フッ、そのフットワークの軽さ、相変わらずだな。
「いらっしゃいませ、え～こちら全て中古ソフトになります。
プレステのソフトとゲームボーイアドバンスのソフトになりますがよろしいですか」
独特の口調も健在だ。
「犬」は以前よりも少しやせていた。
不況のせいだろうか。
次の就職先はあるんだろうか。
飯はちゃんと食っているんだろうか。
俺のそんな心配をよそに、犬は手馴れた手つきでソフトを袋に包み、「え～合計４４０円になります」と告げる。
素早く５００円を払って、お釣りを貰う。
今まで幾度となく繰り返したレジでのやりとり。
お互い口は聞かないが、これが俺と犬の会話だ。
犬は、最後に袋を俺に渡しながら「ありがとうございました～」と言った。
何の変哲もない店員の決まり文句。
だが、俺には「今までゲームをたくさん買ってくれてどうもありがとう」と聞こえた。
だから俺も軽く笑って会釈して店を出た。
こちらこそありがとう、犬。
あなたは俺のことを気にも留めてなかったかも知れないが
俺のゲームライフの多くは、あなたと共にあった。
もし再び会うことがあるならば、その場所がゲームショップであることを望む。
