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北斗の拳の南斗人間砲弾

2017-07-27 20:54:13 | アニメ・コミック・ゲーム


少年ジャンプの北斗の拳がテレビアニメ化決定!と発表された時には、いささか驚いたものだ。
当時、少年ジャンプの漫画はほとんどがアニメになっていたと思うが、それでも、北斗の拳はないだろう、と考えていたからだ。
まずは、あの線の多さ、そして、体が砕け散るバイオレンスな描写である。どうやって、これをテレビアニメにするのだ?と誰しも思ったのではないだろうか。

しかし、そこは見事にテレビアニメとなっていた。線は極力減らし、戦闘シーンも止め絵を多用、そして「あべし!」なシーンも透過光で処理するという、いやあ、放送コードを考えたら、こうなるよね、というものだった。
だから、正直、第4話くらいまでを見る限りは、がっかりもしなければ興奮もしなかった。もう、本当に「ああ、こうテレビ向けに処理したか」と思うだけだったのだ。

だが、人類は死に絶えてはいなかった!
アニメ北斗の拳の真骨頂は、以降のアニメオリジナル部分から始まるのだ。

北斗の拳のファーストエピソード、シンとの決着編は、原作では1巻に収まるくらいの少ない分量である。
しかし、アニメ北斗の拳は、オリジナルを交えつつ、これを半年(22話)かけてやったのだ。
もちろん、後期のエピソードの前倒しもあったが、ほぼアニメオリジナルの世界観で支配したのである。

まず、初陣を切ったのは、上原正三脚本の「南斗蝙蝠拳」である。
え?なにそれ?
その頃、原作では、おそらく南斗水鳥拳のレイが出てきていて、ああ、南斗にも他に派閥があるのだなあ、と言った流れだった。
しかし、それをテレビアニメはあっさりとオリジナルでやってしまったのだ。
そして、この回がターニングポイントとなる理由はもう一つあって、ユリアを追い、シンの部下と戦うケンシロウという流れに、1話完結のロードムービー的要素を持ち込んだことである。
この回を境に、1話完結で、毎回、女性ゲストが出てきて、クライマックスは悪の南斗の拳法使いと決着をつけるという、それこそヒーローものと化したのだ。

特筆すべきは、悪の描写であり、とんでもない南斗の別派閥が跋扈する。
南斗龍神拳のドラゴン、南斗百斬拳のダンテ、南斗暗鐘拳のザリア・・・すらすら覚えている。この辺はまだしも、後半になると、ケンシロウと戦車が戦うは、列車砲まで出てきて、もうストイックな原作がどっかに行ってしまうのである。
ただ、私は独自の道を歩み始めたアニメ北斗の拳が毎週楽しみで仕方がなくなった。

正直「どこが拳法やねん!」という技が多い。原作にも登場するジャッカルなんて爆弾投げるだけで「南斗爆殺拳!」とかぬかす。
その極めつけが、南斗人間砲弾である。これ、ただ単に大砲から人間を打ち出して、上空から襲い掛かるだけの技だ。どこが拳法やねん!
それが仰々しくテロップで「南斗人間砲弾」とか書かれるのだから、笑わずにいられるか?
そして、そこがよかったのだ。

北斗の拳は、熱いドラマもあるが、基本的にはギャグマンガだと思っている。
もちろん、ケンシロウが南斗爆殺拳でやられてしまっては、洒落にならないのだが、どうせケンシロウにやられるのだから、それくらい陳腐な方が面白いではないか。
いかにも小悪党が「南斗爆殺拳~」とか言いながら、ケンシロウに「アホかお前」的にやられてしまう。
南斗人間砲弾の終幕なんて、ケンシロウの遊び心が満載である。
北斗の拳を熱血人間ドラマと考えている人は腹立たしかっただろうなあとは思うが、少なくとも、私は評価する側だ。

さすがに、これを何年も続けられたら「ちょっと待て」と言いたくはなるが、22話に収めたことは素晴らしい。
しかも、ケンシロウに味方するバイク乗りのジェニファーやら、原作ではほとんど出番がなかったユリアの生前の姿が描かれて、それを見守る付き人のサキ、シンの配下で反乱をもくろむバルコム将軍やら、そして隠密ジョーカーなど、一方で南斗なんでも拳でギャグをやりつつ、一方で原作の基本路線を膨らませたキャラクターを配置して、前半を乗り切ったスタッフは大したものだと思うし、私も原作とは一味違うアニメを存分に楽しんだものだ。
これは、原作の尺が足りないから、引き伸ばしましたというものではなく、「アニメ北斗の拳」という世界なのである。それもあって、きちんと、ジェニファーやサキ、バルコム、ジョーカーに見せ場を与えつつ、原作の以降の展開に引っかからないような、それぞれに幕引きを用意してあげたのはさすがである。(なお、サキに関しては、かなり後半のユリアの墓参りシーンで再登場する。と言うか、よく忘れていなかったな。あれだけユリアを慕っていたサキが墓参りしないわけがないし、よくぞ拾い上げてくれたと思う。この心遣いはうれしかったものだ)

ただし、アニメ北斗の拳はここまでである。
シンとの決着以降も、オリジナルなエピソードが入ったりもするし、絵も格段に良くなっていくのだが、基本的に原作をなぞるだけである。
私は、芦田豊雄や上原正三が作り上げた「アニメ北斗の拳」の世界観を楽しんでいたのだ。

テレビアニメの場合、どうしても原作の量が少なくてオリジナルエピソードやキャラクター、演出を配置する例は多いが、そのほとんどが失敗している。失敗は言い過ぎかもしれないが、どうしても浮いてしまうのだ。
そんな中、「アニメ北斗の拳」は、あの原作をテレビアニメ化するには制約が多すぎて、それを逆手にとって開き直ったともとれるのだが、それが成功した稀有な例だろう。

そんな私は、劇場版「北斗の拳」のムチャクチャさがかなり好きです。

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