劇場でぜひとも見たかった作品ですが、不本意ながらDVDで鑑賞。
1シーンも無駄がない、すばらしい作品でした
なにげないセリフの一言一言が、いろんな伏線になっていて、
うまいっ!と何度もうならされました。
監督・スタッフ・俳優さんたちが、すごく丁寧に作ったというのが
よく伝わってきました。
いや~、「グエムル」のときは、はっきりいって
「なんじゃこりゃ?」って感想でしたが、
ポン・ジュノ監督って、やっぱりすごいんですねえ~!
ぴーんと2時間、緊張しっぱなしかと思いましたが、
クスっと笑わせてくれるシーンや、人間的にほっとさせられる場面もあり
そのあたりも、すごくよかったです。
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この主人公の「母」(あえて役名がない)の、生々しさったら、不気味なほどです。
同じ母親として共感できる部分も多かったですが、
母親だからこそ、彼女の気持ちが痛いほどわかるからこそ、
ものすごい嫌悪感も同時に持ちました。
キム・ヘジャさん・・・言葉がみつからないほど、完璧で、素晴らしかった。
この年齢の女性のが主役の、映画って、今までなかったんじゃないでしょうか?
そして、ひさびさウォンビン。
ウォンビンらしい、ウォンビンにしか出来ない、すばらしい息子でした。
知的障害で純粋無垢なだけでなく、女遊びもバリバリしたいトジュン。
わかっているのか、わかっていないのか。
母も、どこまで彼を理解できているのか。
青龍映画祭で、(ミンギが逃した)助演男優賞を獲得したチン・グくん、
めっちゃ、かっこよかったあ~~
はまり役です。
今までどおりの演技をしているようにも思いましたが、
作品の中の役柄と相乗効果で、これまでの彼の実力が評価されたように思います。
それにしても、今回も、舞台挨拶とか記者会見とかの画像をみてみましたが、
どうして、演技してないときのチン・グくんは、
こんなにもいけてないんだろう~~(大爆)
あ、「スポットライト」の姿に近いか?
他の脇役さんたちもよかった!
「卑劣」や今「アイリス」でみてるユン・ジェムンssiの優しさも
じーんときました。
そして、どこかで見たと思った写真屋さんのお姉さんは、
「ファン・ジニ」のオンマ、チョン・ミソンさんでした。
↓ ↓ 以下、ネタバレ。未見のかたは、ぜったい読まないでくださいね!!!
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真犯人は、やっぱりトジュンなんじゃないかなあ、と
ジンテが犯人じゃなかったあたりから、漠然と思っていました。
本人がぽいっと投げたゴルフボールが、屋上にいたアジョンに
あたっちゃってて、気がついてなかった? とか。
とはいえ、オンマが友人のジンテを疑うあたりは、ハラハラドキドキでしたね~♪
ゴルフクラブのおちは笑いました。
一番こたえたのが、『真犯人』に面会したとき。
「あなたご両親は?」
「んなもん、いない」 (←記憶で書いてるので、正しくないです)
あの無表情な青年の一言に、ガツンと頭を殴られた気がしました。
立場の弱いトジュンを守ったつもりが、
守ってくれる人が一人もいない青年に罪を押し付けたという結果。
あの号泣が、母の葛藤をあらわしているんだとは思うのですが、
やっぱり後味わるいなあ~
トジュンがやってしまったなら、あの俗物弁護士の言っていた「病院で4年」は
結果正しいわけで、そういう選択肢もあったのでは。
それじゃ正論すぎて、映画にならないか。
「さらに社会的弱者に罪をかぶせた」という意味では
もっと悲劇的なのが、殺された目撃者のおじさん。
妙に無邪気な人でした。
この人も、社会的弱者であり、だからこそ警察も、ただの火事だとして
適当に処理したに違いありません。
そして、「母」もそれを理解している。
その現場にいったのが、トジュンという皮肉。
オンマのお金で買ったであろう、ジンテの車に乗って。
金目のものは見つからなかったけど、オンマの大事なものを拾っていました。
バス旅行で見送りにきたトジュンにさしだされた、鍼セット。
このシーン、やられた~~!!って思いました。
真犯人が誰か、なんて、この映画では問題じゃなかったんんだな、と。
「誰もが忘れたとしても、罪は消えない。」
という声が聞こえたように思いました。
ふとももの「例のツボ」に、こっそり鍼をうつ母。
鍼は効いてなくても、過去の「忌まわしい記憶」を忘れたと
信じるしか、この先彼女の生きる道はないのでしょう。
「いやな過去」が記憶から「消えて」、皆のどんちゃん騒ぎに加り踊る「母」・・・・。
あのエンディングの夕日、ぜったい忘れられません。
ひとつだけ残念だったのが、アジョンが屋上にいた理由を
釈放後、トジュンが
「犯人は、アジョンを早く病院につれていってほしかったんじゃないかな」
って言ったところ。
あとから説明をつけくわえた感がありありで、妙な違和感が・・
石を投げたことは、逆上中で覚えてないにしても、
そのあと屋上に運んだことは、覚えてるんじゃないでしょうか?
もしかしたら、すでに思い出してるのかも・・・。
って思わせる、トジュンの演技が、これまた素晴らしい
残酷なストーリーなのかもしれませんが、
同時に、とても人間的な温かみが感じられるのが不思議な魅力の作品でした。
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