ドキュメンタリー映画「SELF AND OTHERS 写真家 牛腸茂雄のまなざし」
監督 佐藤 真 音楽 経麻朗 2000年
牛腸 茂雄
1946年新潟県加茂市出身の写真家。
幼少時より胸椎カリエスを患いながらも、36歳の若さでこの世を去るまで写真家として活躍。
写真集「SELF AND OTHERS」では日本写真協会新人賞受賞。
SELF AND OTHERS.mp4
~SELF AND OTHERS 音楽作りの思い出~
佐藤真監督とは、「阿賀に生きる」以降、テレビドキュメンタリ-作品などで何度か一緒に仕事をさせて頂いていましたが、
「SELF AND OTHERS」で再度映画の音作りのご依頼を受け、大変うれしかった記憶があります。
音楽作成の締め切り1ヶ月前に、この作品では初めて見る編集中の映像のビデオテープが送られてきました。
僕は「経麻朗さん、まだ仮編集のビデオだけど、ただボ-として見ていて下さいね。」
という佐藤監督の言葉通りに、次々と送られてくる編集ビデオをただボ-と見ていました。
中身は牛腸茂雄さんが撮った人物写真でいっぱいです。
締め切りの半月前、監督が打ち合わせにやって来るという連絡が入りました。
この作品は映像に音楽をあてはめようとしても、納得のいく音がなかなか浮かばず、焦るばかりです。
監督が来るまであと5日。僕は、ビデオを見る事をやめました。
目で見る映像に縛られるのはやめてみよう。
今まで、ボ-っと見てきた編集ビデオの中から、牛腸茂雄という人物をただ見つめ、
思い描く事によって、僕なりのストーリーを作り始めてみよう、そんなふうに思いました。
体調のバロメ-タ-だった牛腸さんの声
「おはよう、こんにちわ、ドレミファソラ・・・・。この声はどのように聞こえているんだろう・・・。」
もう逢うことのないピアノを弾く少女
ストップモ-ションの写真
牛腸さんの姿
若いときに撮った一枚の写真
映像の中の何点かが印象深く感じられ、そこから僕の中に音が鳴り始め、
佐藤監督が訪れた日、音のスケッチも含め何曲か用意する事ができました。
「うん使える、これと、これも。」監督に聞いてもらうと予想外にOKが出て、うれしい限りでした。
そこで実験的に映像に音楽をあてはめてみる事になり、監督の思うシーンに音を乗せていきます。
ここで驚いたのは、僕が思っていたシーンとは違う場所に次々と音楽が乗せられていった事です。
映画監督というのはスゴイ!思いもよらないシーンに思いもよらない音楽!
結果は、映像と音楽がきちんと融合。
この日の作業のあと、二人で飲んだお酒は格別でした。
翌日から音の細かい編集を始めました。0.5秒でもサイズが違うとやり直し。
一週間後、東京のスタジオで音入れです。
(続く)