数日前のこと。志賀越道近くの細道を入った住宅街にある小さな花壇に植えられていたツバキ(椿)が一輪だけ花を咲かせていました。
数本の雄しべが弁化して旗弁になっていますが、おそらく一重咲きのツバキだと思います。花芯が放射状に広がったいわゆる「梅芯」と呼ばれるものですが、なんとなく花糸の色が黄色みを帯びているように見え、花も平開する咲き方なのでなんとなくユキツバキ(雪椿)系の園芸種でしょうか。もう6年前になりますが、京都府立植物園の植物生態園で咲いていたユキツバキがこちら。
ユキツバキ(京都府立植物園の植物生態園で2016年3月撮影)
ユキツバキは日本在来のツバキのひとつで、日本海側の豪雪地帯に分布しています。原種は株ごとに花の形状や咲き方に違いがあるそうで、近縁種のヤブツバキ(藪椿)とは樹高や枝振り、花の咲き方や葉の形状などで違いがいくつかあるのですが、その点についてはあらためて取り上げることにしたいと思います。このユキツバキは、たしか樹勢があまり良好に見えなかった記憶がありますが、そのためか花も小振りでした。
先ほど、違いがあると述べたことに関して、一部だけ取り上げてみましょうか。葉の鋸歯に違いがあり、ユキツバキは少し尖った形状で鋸歯が入りますがヤブツバキはゆるく波打った形状になりやすいようです。また葉先もユキツバキのほうが尖りやすいそうですが、このあたりは個体差がありそうな気がします。
1枚目の花の葉(ユキツバキ?)
ヤブツバキの園芸種と思われる葉
また、葉を透かしてみたりしてみるとユキツバキのほうが葉脈がはっきり浮き出るようですが、こちらもどうなのでしょうか。ユキツバキは葉柄に微毛も見られるとのことですが、新しい葉にはそれらしいものが見られましたものの古い葉は「?」でした。
1枚目の花の葉を裏側から透かしてみたところ
ユキツバキ系の園芸種で有名な品種に乙女椿がありますので、巷でユキツバキの系統を見かけることが珍しいわけではないのですが、原種に近い咲き方をしているのはあまり見かけないかもしれません。
ちなみにヤブツバキもユキツバキも原種は紅色(赤色もしくは朱色)とされていますが、ユキツバキは白色の原種も確認されているようです。また、このユキツバキとヤブツバキが交雑したものにユキバタツバキ(雪端椿)がありますが、こちらも原種は紅色です。京都府立植物園のつばき園には白色の八重咲きが1本植えられています。
八重で白花のユキバタツバキ(京都府立植物園のつばき園で2017年11月撮影)
八重咲きなので一重咲きとの比較は難しいかもしれませんが、花芯はユキツバキ譲りでしょうか。
ついでながら、こちらも園芸種ですがヤブツバキもどうぞ。
ヤブツバキ(
過去記事より再掲。2016年11月撮影)
ヤブツバキの咲き方はお椀や猪口のような形状で、花芯が筒芯と呼ばれる形状の品種が多いと思います。
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さて、来月3月25日から27日の3日間、京都府立植物園との共催で
第61回つばき展を開催する予定ですが、この時期には本来たくさんの蕾を膨らませ始めているのに今年はその蕾すら見られない株が多いような気がします。まわりに聞いてみると昨秋のうちに蕾を落としたものもあるとのこと。生理的落蕾なのかどうかわかりませんが、昨年8月の戻り梅雨のような長雨等が影響しているのでしょうか。はてさて花を集められるのかどうか、ちょっと気掛かりです。