京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

出町柳の柳はシダレヤナギだけでない?

2022-06-15 19:44:27 | 園芸・植物・自然環境
今出川通を川向こう(東側)に渡すため、鴨川に架けられた賀茂大橋の南側にあたりますが、鴨川左岸の寄州に生えている樹木でひときわ目を惹きつけるものがあり、護岸の石垣をつたって降りて近寄ってみると……



写真で切り取ってしまうと変哲もない植物なのですが、他は青々とした葉をしがらせている草木ばかりのところに新芽は赤い樹木なので、くっきり浮かび上がるように見えました。



新芽が赤いといえばアカメガシワ(赤芽槲)がありますが、色合いはよく似ているといえるかもしれません。


アカメガシワ(過去記事より再掲。2020年7月撮影)


もちろん、下のほうには青々とした葉を茂らせているのですが……



もうひとつの特徴は、葉の基部にちらちらと見えている大きな托葉があることでしょうか。



もちろん新葉にもついていますよ。



と、ここまで書いたのですが、見つけたときには植物名がまったくわかりませんでしたので、この植物の特徴を羅列して、とりあえずインターネットで検索してみたら、あっさりと名前が出てきました。

どうやら東北地方中部以南から九州にかけて自生するマルバヤナギ(丸葉柳)というヤナギ科ヤナギ属の落葉高木のようです。もうひとつの特徴である赤い新芽にちなんでアカメヤナギ(赤芽柳)とも呼ばれるようです。

出町柳近辺に植えられているシダレヤナギ(枝垂れ柳)を思い浮かべてしまうとヤナギらしく思えないかもしれませんがネコヤナギ(猫柳)等を思い浮かべていただけたら、ヤナギらしく思えるかもしれません。

マルバヤナギは川原などの湿地を好んで生育するそうですが、かなり上流まで護岸等の人間の手が入った鴨川(賀茂川)の河川敷に、どうやって運ばれてきたのかが少し不思議ですが、おそらく上流から流されてきたりしたのでしょうか。

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さて、題名に『出町柳』と書きましたが、京都や関西にお住まいの方ならどのあたりのことか想像はつくかもしれませんが、じつは『出町柳』というのは正確な地名ではなく、鴨川(賀茂川/高野川)を挟んだ2つの地名(呼び名)を足し合わせたものです。

出町柳を初めて使ったのは、おそらく京都電燈が開業した叡山線の駅である『出町柳駅』になるかと思います。琵琶湖疏水を利用した蹴上発電所の電力の供給を受けた電力・配電会社の京都電燈が持っていた叡山線は現在、叡山電車の叡山本線(鞍馬線)の路線ですが、第二次世界大戦中の配電統制令により解散となった京都電燈から京福電車(京福電鉄)に譲渡され、昭和の終わり頃に叡山電車として京福電車の子会社化、その後に京阪電車の子会社として引き継がれた経緯がありますが、駅名は変わらずそのまま使用されています。

ちなみに『出町』とは豆餅で有名な「ふたば」のある出町桝形商店街を中心とする賀茂川右岸(西側)一帯の呼び名であり、もうひとつの『柳』とは賀茂川(高野川)左岸一帯の呼び名です。1930年代に賀茂大橋が架けられるまでは今出川通の東端は河原町通までで、賀茂大橋より少し北に架けられていた出町橋とを結んで東に伸びる『柳通』が当時の道でした。この柳通の前に叡山電車の出町柳駅があり、道を挟んで北側が左京区田中上柳町、南側が左京区田中下柳町という町名で残り、下柳町は今出川通を挟んだ南側にも及ぶ町域です。

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と、蘊蓄はさておき、このマルバヤナギを見つけたのは下柳町より少し南側にあたる鴨川河川敷なので、出町柳の範囲に含めるには少し離れてしまっているかもしれませんが、地域の呼び名の『柳』つながりということでご容赦を……

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