京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

鬼子母神と吉祥果

2019-10-31 17:10:27 | 雑学・蘊蓄・豆知識
妙顯寺の境内の鬼子母神堂の前でザクロ(石榴/柘榴)が枝もたわわに実をつけていました。写真はそのひとつを撮影したものです。



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ところで、日本では、鬼子母神がお祀りされている御堂の近くにザクロが植えられていることが多いのですが、その理由をご存じでしょうか?

要約になりますが、以下のような由来があるそうです。

鬼子母神はインドでは訶梨帝母(かりていも;梵名のハーリーティーを音写した表記)と呼ばれ、王舎城の夜叉の娘として生まれました。
 
生涯に五百人とも千人ともいわれるほどの子供を産み、過去世の因縁により人間に恨みを抱いていたこともあり、王舎城(インド・ビハール州ラジギール)の街に行っては人間の子供を殺して食べるといった悪事を働いていました。
 
この悪行に困ったのが王舎城の街で暮らす人間たち。お釈迦様にすがって助けを求めたところ、人間たちの訴えを聞き入れ、神通力で鬼子母神の末っ子であるピンガラ(氷竭羅天)を托鉢に使う鉢に隠してしまいます。
 
自分の末っ子がいなくなったことを知った鬼子母神は大いに嘆き悲しみ、気も狂わんばかりに探し回りますが、どこを探しても見つかりません。
 
ついに観念してお釈迦様に助けを請い、教えを説かれて改心し、仏教に帰依して安産や子供の守護神になって祀られるようになりました。

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由来がわかったところで、祀られている鬼子母神像の姿をよく見ると、片方の腕に子供を一人抱きかかえて、もう一方の手には果物を持っていることに気づくでしょう。

この果物は「吉祥果」と呼ばれるもので、魔障を払い子孫繁栄をあらわす縁起のよい果物です。ちなみに、抱き抱えている子供は先ほどの逸話に出てきた末っ子のピンガラだということです。

ただ、インドから仏教が伝わった中国では、この「吉祥果」が何の果物かわからず、仏典などから推測して「ザクロ」で代用したそうです。

そして、日本にもこれがそのまま伝えられ、鬼子母神の御堂の近くには「吉祥果」としてザクロが植えられていることが多いのだそうです。

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では、インドではこの吉祥果は何の果実だったのでしょうか。調べてみてもわからなかったのですが、はたして空想の果物なのでしょうか?

中国西北部が原産の桃の実も魔除けや子宝の縁起をかつぎますが、ザクロは西南アジアが原産の落葉小高木で、果実が割れると中に半透明の赤紫色の果肉がたくさんあり、中国ではこれを子供と捉えてザクロとしたのだと思いますが、インドでは本来何の果実だったのか、ちょっと気になります。

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そうそう、鬼子母神ではありませんが、出町柳の近くにある日蓮宗の本満寺では、七面天女とも呼ばれる七面大明神が祀られている御堂の前に1本のザクロの木が植えられています。日蓮宗では法華経の守護神として七面大明神が祀られていることが多く、神仏習合の考えから七面大明神は吉祥天や弁財天の本地垂迹とされていますが、仏教では吉祥天は鬼子母神の娘とされるので、七面大明神の御堂の前にも吉祥果であるザクロが植えられているのかもしれません。

(本満寺のザクロの実:2017年8月撮影)

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