京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

陶酔するためだけではなく蚊除けの効果もあり?

2021-01-23 07:19:24 | 雑学・蘊蓄・豆知識
好き嫌いはあるかもしれませんが、行動が愛らしいネコたち。ヒトとネコの関わりは、世界ではおよそ9500年前に中東付近でリビアヤマネコを家畜化したことがはじまりとされており、日本では奈良時代から平安時代にかけて中国から伝わった仏教の経典をネズミから守るため一緒にやってきたというのが長い間通説でしたが、長崎県壱岐市のカラカミ遺跡でイエネコの骨が見つかったことから弥生時代にはネコを飼っていたということがわかったそうです。


木の葉隠れの術?(京都御苑にて2018年12月撮影)


そして、ヒトと付き合いの歴史が長いネコたちは、ことわざでも多く譬えられていますね。有名なところだと「猫に小判」や「猫に鰹節」などがあり、似たようなものに「猫に木天蓼(マタタビ)」もあります。本来は「猫に木天蓼お女郎に小判」や「猫に木天蓼泣く子に乳房」と続くようですが、これは非常に好きなもの、あるいはそれを与えれば必ず効果のあることの譬えですね。


マタタビの花(過去記事より再掲。2020年5月撮影)


ネコがマタタビを好み、陶酔した状態になることは江戸時代には知られていたそうですが、このほど岩手大学や京都大学、名古屋大学等の共同研究によるとただ陶酔するためだけに枝や葉に体をすり寄せて匂いをつけているのではなく、じつはネコに「マタタビ反応」を誘起する「ネペタラクトール」という強力な活性物質には蚊を寄せ付けない忌避効果もあることがわかり、ネコはマタタビ反応でネペタラクトールを体に付着させ蚊を忌避していることが実証されたようです。


開花時期には白くなるマタタビの葉(過去記事より再掲。2020年5月撮影)


現在でこそ冬は暖かくて夏は涼しい家の中に住み、同居人をあたかも下僕とも思って神のように君臨しているネコたちですが、本来野生では茂みに潜んで狩りをする習性のある動物ですから蚊に刺されやすい環境に住んでいたといえるため、マタタビを体にこすりつけることが蚊除けになることを経験的に習得していたのでしょうね。でも「陶酔するのは、なぜ?」という疑問にはしっかりとした答えが見つかっていないようですが、ひとつには蚊に刺されたときの鎮痛効果なのではないかと考えられているようです。


暖かな冬晴れの窓際(二条城の近くの住宅街にて2019年2月撮影)


今後は、この「ネペタラクトール」が人類にとっての天敵である寄生虫や伝染病を媒介する蚊の忌避剤として活用できる可能性を秘めていると考えて、さらなる研究が続けられるようです。



昔から不思議だったことに対して科学を活用して明らかにし、さらに今後の暮らしに役立つことにつなげていく。これが本来の「研究」としての醍醐味でしょうね。蚊に対する忌避効果もあってさらに楽しくなれるとは、ネコたちはよいものを持っていますね。ふと「お酒にも蚊の忌避効果があればよいのに」と思った飲んだくれは私だけ? お酒は飲めば楽しくなりますが、さらに蚊が寄ってきます……


あっかんべぇ(河合橋西詰にて2019年3月撮影)

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