ちからをぬいて気楽にいきたい

たま~に本や映画の感想,雑感を書き記してますが,よく長期で留守にしています。

ヒッチコックの映画

2017年02月19日 | 映画
 金曜の夜妻が不在だったんで、本当は遠藤周作原作の『沈黙~サイレンス~』を仕事帰りに観に行こうかなと思っていたんだけれど、職場を出て夕飯食べながら酒を飲んでいたら、ついつい面倒臭くなって結局は行かず、土日に行こうかなと思いつつ、家でだらだらしていたらやっぱり行かなかった。

 土日の休み中も、妻一人でいろんな用事で出かけるものだから、残された僕は特にすることもなく、以前にテレビで録りためていた映画はないかなと思っチェックしてみたら、4年前にNHKBSで録画したままにしていたヒッチコックの映画『サイコ』と『裏窓が』があったんで、一人でぼーっとした気分で観ていたら、けっこうはまって2本ともあっという間に観終わってしまった。

 2本とも今から50年くらい前に制作された映画なんだけど、今観ても何ら色あせない斬新な映画だなぁと感じてしまった。『サイコ』の方は今回が初見だったので、観て本当によかったなぁと思ってしまった。あの浴室での殺害シーンだけは、何回もテレビで観たことはあったけど、その前後のストーリーを知ったのは今回が初めてだった。
 『裏窓』の方は、若い頃、テレビ放送で観たことがあったんだけど、ストーリーとかほとんど忘れていた。都会のアパートで、住民たちがあんなにあけっぴろげな生活をしないだろうなぁというツッコミはあるが、それが逆に面白くもあった。グレース・ケリーってやっぱり美しい女優だったんですね。



「君の名は。」、良かったです。

2017年01月03日 | 映画
今夜、ずっと話題になっている「君の名は。」を観てきました。
妻は「スターウォーズ」の新作を希望したんですが、
とりあえず、早くから公開している「君の名は。」の方から観てみたいとの
僕の希望が通りまして観てきました。

若い人向けの映画なのかなとの思いから躊躇する気持ちもあったんですが、
あまりにも評判がいいので気になってしまい観に行きました。

観に行ってほんと良かったです。

テレビのコメンテーターが何度も泣いたなんていうもんで、
それなりの覚悟はしていったんですが、映画の中盤くらいから、やばかったです。
それからはハンカチが手放せませんでした。
主人公の二人に感情移入し過ぎたせいなのか、
年甲斐もなく泣いてしまいました。
席が一番後ろの端の席だったんで、妻以外はまわりに誰もいなくてよかったです。

僕はかなり映画の世界に入り込んでいたんですが、
妻は観終わったあと、意外にもけろっとしてましたので、
人によっては全然違うんですねぇ。
まぁ、僕の場合、年をとったせいか最近涙もろくなってきたことは否めません(笑)

映画の内容を書くとネタバレになるので書きませんが、
年齢に関係なく観てほしい映画でした。
でもすでにかなりの人は観てるんですね。

ストーリーもさることながら、
アニメの映像の美しさにも目を奪われました。

聖地巡礼がはやってるとのことですが、
ほんと、実際のモデルとなった場所に行ってみたいなぁと思ってしまいました。

年の初めにいい映画を観られて良かったです。
やっぱり映画は映画館で観るのがいいですね。





歩いても 歩いても(映画)

2014年09月15日 | 映画
阿部寛の『結婚できない男』(2006年)は、今振り返ってみても傑作ドラマでした。桑野信介(阿部寛)と早坂夏美(夏川結衣)のかけあいはもちろん、桑野信介を取り巻く人々と犬、それぞれが面白かったなぁ。
最終回はその二人がいい感じのところで終わってしまい、きっとその後うまくいくんだろうなぁと思ってみたり、いや、あの桑野信介では結婚してもとてもうまくいかないだろうな(そこが面白くもありますが)などと想像してみたり。続編が出来たらいいなぁなどと思っていたんですが、僕が知らない間に出来てたんですね。知らなかった。それも今から6年前に。。。

などと言ってみましたが、ドラマの中で結婚しそうな感じだった阿部寛と夏川結衣の二人が夫婦となっていた映画が『歩いても 歩いても』(2008年)です。7月にNHKBSで放送されていて、面白そうだったんで録画しておいて観たんですが、なんとも味わいのある映画でした。

監督は是枝裕和。ちなみに是枝監督と阿部寛とのテレビドラマに、2012年秋に放送された『ゴーイングマイホーム』があります。ここでは余談となってしまいますが、このドラマが毎回低視聴率だったため、当時ヤフーで話題になってました。しかし、視聴率とそれに対するドラマの質や面白さとは本当は関係しないということを証明していたドラマだったともいえます。

さて、『歩いても 歩いても』に戻ります。海に面した町、その高台に横山家はあります。開業医だった父親とそれを支えてきた母親が住んでいます。
夏のある日、そこに今は独立した子供たちが集まります。絵画修復士だが今は失業中(求職中)の横山良多(阿部寛)、良多と再婚したばかりのゆかり(夏川結衣)とその子供。姉(YOU)の4人家族(高橋和也と子供2人)。集まったのは長兄の命日です。じつは長兄は15年前に、海で溺れそうになった子供を助けようとして亡くなっていたのでした。

彼ら、彼女らの会話ややりとりが、僕自分の一族にあてはめるとどれも「あるある」っていう感じで共感することばかりです。じつは家族って、好きでいながらたまに疎ましく愛おしく、どうしようもないほど計算通りにいかないものなんですね。そういう家族のあり方が、長兄の命日とその翌日の二日間の中で淡々とした様子で描かれています。

親は子供がいつでも何でもやってあげられると思っている間に老いていきます。この作品においても、母親の小さな願い、父親との約束、どれも結局果たせないままとなってしまいました。僕もここ6~7年の間に両親と兄を立て続けに亡くすという経験をしましたが、心にあいた穴はなかなか塞がらないというのが実感です。生きている間にもっと親孝行ができただろうとか、もっと兄貴と仲良くしていれば良かったとか、兄貴が困っていたときにもっと全力で助けてやれたらよかったのにとか、色々な思いが交錯してしまいました。兄貴が亡くなったとき、母親は言葉では言い表せない程の悲しみを胸にしまいこんでいました。その時、もっと母親の気持ちを理解してやれていたらと今でも後悔しています。
この作品を観て、父親と息子の間にはいつまでも埋まらない溝があるという思いを更に強くしました。じつは分かり合えるはずなんですが、お互い、独立した男と男という関係でみてしまうのが原因なのかもしれません。その点が、母親に対する思いとは絶対的に違うと思えます。

この映画は阿部寛が主役ですが、じつはその母親のとし子(樹木希林)が影の主役だったのかもしれないですね。この映画のタイトルは、いしだあゆみが歌った『ブルーライト・ヨコハマ』の歌詞が由来となっているようです(歩いても~♪歩いても~♪小舟のよう~に~♪)。とし子が好きな歌なんですが、じつは父親の恭平(原田芳雄)の浮気にまつわる歌で、夫の浮気をいつまでも許さないという妻の怨念がこもったものといえるでしょう。また、海で溺れようとしていた子供を助けようとして亡くなった長兄の命日に、その長兄から助けられた子供(現在は青年)がお参りに来るのですが、毎年お参りに来ることを優しい言葉で誘うとし子に、母親の業の深さと怖さを感じます。さらに、嫁(夏川結衣)に対して、ぐさっと傷つけるようなことを平気で言うのですが、これが計算だったら怖いですね。とし子は、家の中に迷い込んだ黄色い蝶々に亡くなった子供(長兄)を重ね合わせます。黄色い蝶々は、先だった子供に対して、ずっとあきらめることができない部分を表すための象徴だったのではないかと思います。

良多の父親の恭平は、長兄と良多のどちらかには医院を継いでもらいたいと思いながら、その願いが叶うことはありませんでした。しかし、良多の義理の息子(ゆかりの子)は、亡くなった実の父親の仕事であるピアノの調律師になりたいという希望を持っています。短絡的な捉え方と指摘されることを覚悟で書くと、父親が亡くなって初めて父親の良さに気づくものかもしれません。

阿部寛は不器用そうに見えながら、じつはどの役を演じても自然にその役になりきってしまう名優だという思いを改めて強く持ちました。息子とともに良多とこれからの人生を歩んでいこうという強い覚悟を持つ妻を演じた夏川結衣も、きりっとした目元に強い芯が感じられてとても良かったです。樹木希林と原田芳雄の老夫婦もとても深い味わいがありました。YOUと高橋和也の夫婦が、少し調子いい感じながら、どこにでもいそうな人の良い夫婦な感じで良かったです。ゴンチチの音楽もしみじみとした味わいがありました。そして、『ゴーイングマイホーム』でも感じたことでしたが、是枝監督の作品って、自然な映像と淡々とした演出でありながら、日常風景の中に小さな小石を投げ込んで波紋を起こし、観る人たちをその物語の中に引き寄せてしまう名監督なんですね。

エンディングの墓参りのシーンでは、良多とゆかりの一家に可愛い家族(末娘)が一人増えていました。母親をドライブに連れてはいけませんでしたが、新しい車にも乗っていました。これからの新しい家族の歩みを象徴するシーンでとても良い余韻を残しながら映画は終わりました。歩いても歩いても人生は思い通りにはならないけれども、その中に喜びも哀しみも家族と分かち合いながら生きていくしかないのだろうなということに気づくことができた作品でした。

映画感想『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

2010年12月05日 | 映画
 アニメ『宇宙戦艦ヤマト』は,僕が中三の秋(日曜日の夜7時30分)から半年間放送されていたのだが,そのときは全く観たことがなかった。たしか裏番組のNHK『お笑いオンステージ』を家族で観ていたのじゃなかったろうか。「てんぷく笑劇場」や「減点パパ」を見て家族団らんでゲラゲラ笑っていた時かもしれない(今考えるといい時代であったなあ。。。しみじみ)。

 今であれば裏番組を録画してあとから観ることもできるが,あの当時は,そのときのテレビ放送をオンタイムで見たらそれで終わりという時代であったから,クラスで『ヤマト』の話題が出ていても,話にもついていけず,またそれほど興味もなかったので,『宇宙戦艦ヤマト』の有名な主題歌は知っていてもストーリーがどうなっているのか全くといっていいほど知らないままでいた。

 そういう僕ではあったが,日曜のきょう『SPACE BATTLESHIP ヤマト』を妻と二人で観に行ってきた(朝9時半という早い時間の上映であったが,頑張って起きることができた)。じつはヤマトの基本的なストーリーも今回映画を観に行く前に仕入れた情報で初めて知った。ところが意外なことに,妻の方はアニメが放送されたとき欠かさずずっと観ていたとのこと。でも数十年前のことでもありストーリーはあんまり覚えていないらしい。それでも,映画を観る前までは,古代進役にキムタクが配役されたのがどうも納得いかない,キムタクだと年をとりすぎていてもっと若い役者さんがよかったんじゃないかなとぶつぶつ言っていた。それでもかなり楽しみにしている様子がうかがえた。

 2時間30分ほどの映画であったが,思いがけず見応えがあってなかなかよかった。半年間にわたって放送されたアニメのエッセンスを,映画の枠のなかですべて表すことは不可能だろうとは思うが,ヤマト初心者の僕にとってはけっこう新鮮に観ることができた。原作に思い入れがない分,素直に楽しめたところもあるだろう。

 日本のSF映画もこのレベルまできたかと思わせた。艦内や戦闘機の描写では少しチープに見える場面もありはしたが,全体的にみるとなかなかの出来だと思われた。VFXの技術が発達すると,大がかりなセットを必要とすることなく,日本映画でもここまでのものができるということだろう。なにより『ALWAYS 三丁目の夕日』の監督でもあった山崎貴やスタッフのがんばりが大きかったのだろう。

 映画を見終わった妻の感想だが,キムタクの古代進もけっこうよかったねと満足そうだった。島(緒方直人)と真田(柳葉敏郎)がイメージぴったりだと言っていた。僕にしても見終わってみると,古代進=キムタクのイメージで固まってしまった。キムタクは,ドラマで見るようないつものキムタクでなく,古代進になりきっているようで好感が持てた。緒方直人も落ち着いた演技でよかった。高島礼子と一升瓶は合うような合わないような(笑)。沖田十三の山崎努は原作のイメージに合っていて重厚な演技でよかったけれど,病床飲んでいたのはあれは酒だったのかな。沖田船長は飲んべえだったのか(知らなかった)。古代守の堤真一は,存在感はあったけれど出番がちょっとで肩すかしをくったよう。本人も物足りなかったんではないだろうか(パンフレットのインタビューでも,本人が出演時間について触れていたが)。

 古代進と森雪の二人の関係については,劇中すこし冗長的になっている部分もあってつっこみを入れたくなったりもしたが,まあ目をつぶろう。ただし,エンディングでの森雪の登場場面でちょっとびっくり。あと,ピンチを脱して乗組員全員で肩を抱き合って喜んでいると必ずといっていいほど敵の攻撃を受けていた。相原隊員(マイコ)はもっと見張っとくべきだろう(笑)。

 余談になるけれど,700円のパンフレットがけっこう内容が充実していてお得感があってお勧めかも。

映画感想 「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」

2010年11月21日 | 映画
 先週の土曜日、気分転換に映画でも観ようかと思ったもののこれといった映画が見あたらず、とりあえずちょうどいい時間帯の「インシテミル」を観てみた。藤原竜也主演、ほか北大路欣也、片平なぎさ、綾瀬はるか、石原さとみら主演級をずらっとそろえた出演陣であったが、ネット上での感想ではさほど評価が高くないとの妻の話。
 2010年度「このミステリーがすごい!」1位となった原作は読んでおらず、ほとんど前知識がない状態で観た映画であった。
 さて、いきなりであるけれど、2時間近い映画を見終わったあとの感想。一言でいうと妙な虚脱感を感じてしまった。様々な経歴を持つ10人が暗鬼館という限られた空間の中で織りなす葛藤と衝突。これは現代社会を端的に表したものであるのだろうなということは感じられるのだが、どうしても脚本と演出がうすっぺらく感じられ、ミステリーそのものにもひねりが感じられず(原作はどうかわからないけれど)、恐怖感もわくわく感も感じられず淡々としたなかであっさり終わってしまった。見終わったあと、あれ!?なんだこの映画は!何の印象も残らなかったぞ!ということで前述した虚脱感に包まれてしまったのだった。
 はっきりいって期待はずれ(というかはじめからさほど期待もしていなかったのだが)の映画で、2時間の時間を返してほしいとまで思ってしまったのだけれど、そんな中で救いを求めるとしたら武田真二であったろうか。一人異彩を放ち一番印象に残った(役柄的なものもあったとは思うが)。
 一方、主演の藤原竜也は、ちょっと力が入りすぎている感じがして、周りから浮いていたように感じられてしまった。
 石原さとみといえば、少女時代の映画「わたしのグランパ」の楚々とした印象があったが、ちょっと変な方向にいってしまっているみたいな気がする。
 綾瀬はるかも何となく陰が薄く感じられた。北大路欣也は演技としては申し分なかったけれど、この映画にはもったいなさすぎた。ほかの出演者では、阿部力と平山あやはまあまあ。大野拓郎はほとんど存在感なし。石井正則はそれなりの演技だったが、可もなく不可もなくといったところか。
 とにもかくにも、僕にはこの映画は失敗作に思われた。その大きな原因としては監督や脚本家などの制作陣にあるのではないだろうか。制作陣、出演陣みな自己満足の映画に思えてならない代物だった。この映画を世界公開して大丈夫なのだろうか?かなり心配だ。

映画感想『七瀬ふたたび』 (2010年映画版)

2010年10月11日 | 映画
 10月2日公開された芦名星主演の『七瀬ふたたび』を観たかったのだが、あいにく僕が住む地方では上映していなくて、3連休の2日目、列車で片道2時間近くかけて博多まで行ってきた。上映館は博多駅すぐそばの、50数名入場できる小さな映画館だった。

 原作では、前半部分に七瀬と超能力者たちとの印象的な出会いのシーンや超能力を駆使した娯楽的なおもしろさがあり、後半になるにしたがい、見えない敵に追い込まれていく七瀬ら超能力者たちの悲哀が感じられるという構成になっているのだけれど、この映画はいきなり後半部分から話が始まる。そして前半部分は断片的に回想シーンとして表される手法となっている。そのため、観ている側としては、七瀬とその仲間たちに感情移入していくことが難しかったように思う。原作を知らずにこの映画を観た人はどういうふうに感じたであるうか。SFXもちょっと拍子抜けの感があった。が、もともとそこにはほとんど期待していなかったので、こんなものだろうなと思う程度ではあった。

 映画は原作が書かれた数十年前の社会を現代社会に置き換えたものとなっているが、原作が持つテーマは、その時々の時代とはリンクしない普遍的なものとなっているので違和感はさほど感じることなく観ることができた。原作が書かれた時代との大きな違いとなる携帯電話の使用については工夫がなされていた(超能力と携帯電話を組み合わせたシーンは納得するようなしないような・・・)。

 全体的にいまいちの映画だということは否めないところだが、ここはあんまり文句はいわないでおこうと思う。おそらく低予算の厳しい環境のなかで製作されたであろうと思われるこの映画。少しでも七瀬の世界に近づこうとした努力はかっておくべきだろう。

 中川翔子(しょこたん)監督作品として本編とは別に製作されたプロローグは面白さも作品の質としてもけっこうよかったと思う。何より多岐川裕美が七瀬の母親役で出演したことは、初期テレビシリーズからの七瀬ファンである僕にとりとても嬉しいサプライズであった。

映画感想『タイタンの戦い』(じゃっかんのネタバレあり)

2010年05月16日 | 映画
 昨夜,『タイタンの戦い』を観てきた。なんと三週連続土曜日の映画観賞!『タイタンの戦い』は1981年に製作された映画のリメイク版とのこと。

 他の方のブログなど読んでみるとさほど前評判は高くなかったんだけれど,あんまり難しそうな映画は苦手なんでちょうどいいかなと(僕の方が50代で夫婦50割引きが使えて,一人1,000円と安いのも最近映画に行きだした理由の1つです)。

 僕自身3本目の3D映画だったが,3Dに関してはいまいちだった。この程度だったら別に3Dにしなくてもよくないだろうか。やはり後処理での3D化ではかなりしょぼいのかも。3D映画料金として払った300円がちょっともったいなかったような気がした。

 映画自体は単純明快な冒険活劇でかなり楽しめた。ギリシャ神話のことはほとんど知らなかったけれども,この映画をきっかけにちょっと興味が湧いてきた。神話のことをネット上の各サイトで調べてみたら,かなり面白い。西洋人の思想の根本にはギリシャ神話が根付いているのだろうか。元ネタ(ギリシャ神話)から比べてみると,この映画での冥界の神ハデスの扱いがちょっと可哀相だった。ゼウスの兄貴なのにね。。。

 冒頭での大きなゼウス像が倒されるシーンはCGとは思えない迫力があった。全体的にみてCG技術は高く,実物とCGの区別がつきにくかった。ハデスやメデューサの登場シーンはいかにもCGだったけれど。

 なんでメデューサの首が必要なんだろうと不思議だったんだけれど,最後の方でその活用方法(?)に思わず笑ってしまった。メデューサもハデス同様かなり可哀相な扱われ方になってしまったものだ。

 スコーピオン(あのサソリの化け物みたいなやつ)は,実際10メートルくらいの模型も作ったとのことだが,サソリの中から人間がずぼっと出てきたシーンでも思わず笑ってしまった。もしかして,この映画は冒険スペクタル映画でありながら,笑いのつぼも心得た映画なのかも。ペガサスに乗って空を駆けめぐるシーンは見応えがあった。

 アバターで一躍有名になった主人公のサム・ワシントン(ペルセウス役)は,この映画ではちょっと影が薄かったような気がした。いまいち特徴がないような。リーアム・ニーソン(ゼウス役)やレイフ・ファインズ(ハデス役)の方が存在感があったように思えた(貫禄の差か)。

 パンフレットによると,イオ役のジェマ・アータートンは,『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』でも出演しているそうだ。そちらの映画も観てみたい。

映画感想(2010年前半)

2010年05月11日 | 映画
 今年前半は例年になく映画をよく観た(といっても全部で6本ですが)。けっこう気分転換によかった。というわけで,観た映画についてごくごく簡単に感想を書いてみようと思う。

・アバター
 前評判が高いことは知っていたが,じつはそれほど期待していなかった。ところがこれが文句なく面白かった。ストーリーはシンプルなのだがそれ故に奥行きを感じた。とにかくスケールが大きかった。時間を忘れ,ぐいぐいスクリーンの中に引き込まれていき,自然に主人公やナヴィの住人たちに感情移入してしまった。初めての3D映画だったが,迫力を感じた。

・第9地区
 アバターと甲乙つけがたい面白さだった。映画的スケールという点ではアバターに譲らざるを得ないが,総合点,クオリティの高さでは,こちらに軍配があがると思う。とにかく観ていない人には是非勧めたい映画だ。
 SFなのにごく身近の出来事のように感じた。報道ニュースを見るようなざわざわ感がよかった。
主人公と宇宙人たちがペーソスに溢れ,愛着を感じてしまった。宇宙人親子の子供がとても愛嬌があって可愛かった(見かけはグロテスクなんですが・・・)。
 立場が変わった主人公がモビルスーツというか戦闘ロボットみたいなやつに身を包んでのアクションシーンでは,思わず手に汗を握ってしまった(そういや,アバターでは悪役の方が戦闘ロボットに入ってました)。
 この映画の背景には人類への皮肉が込められていると思われるが,あまりしちめんどくさいことは考えなくてもいいと思う。とにかく面白い。続編が作られないかな・・・。

・シャーロック・ホームズ
 観て後悔した。ずっとロンドンの灰色の雲の下にいるような重苦しい雰囲気に感じた。ホームズマニアにはよかったのだろうか。僕は全然面白さを感じなかった。
 ホームズとワトソンの印象が,小中学生の頃読んだ本と全く違っていて違和感を感じてしまった。本当はこの映画のほうが正しいホームズとワトソン像なのだろうか。

・アリス・イン・ワンダーランド
 アリスの原作を読んだことがないので,映画をいきなり観てどうだろうかなと不安もあったが,まあまあ満足した。誰でもそうだと思いますが,小さかった頃の純粋な心って,成長するにつれどこかに置き忘れてくるものなのですね。僕の場合はもう取り戻しようがないですが,この映画では,アリスはそれを取り戻すとともに精神の自立も為し得たことが描かれていて,映画を見終わったあと清々しい気持ちになりました。吹き替え版で観ましたが,エンドクレジットをみるまで深田恭子が声優をしていることに気がつきませんでした。声の雰囲気がぴったりでしたね。
 不思議の国の双子の兄弟が,お笑いコンビのザ・タッチに見えてしょうがなかったのは僕だけだろうか(笑)。3D用のメガネをかけたら画面が暗く感じたのだが,これはメガネのせいなのか,もともと映画がそういう作りなのかどちらだろう?

・シャッターアイランド
 レオナルド・デカプリオの映画を劇場で観るのは,『タイタニック』(注)以来だった。やはり年相応に渋さが出てきたみたいだ。ちょっと怖い映画。ここでは結末をいうことはできないが,あまり難しく考えることはしなくていいのかな。最後のどんでん返し的終わり方もシンプルに(素直に)考えていいんだよね。
 (注)『タイタニック』の監督のジェームズ・キャメロンは,『アバター』の監督でもあったのですね。

・運命のボタン
 SFなのかスリラーなのかヒューマンドラマなのか,いまいちはっきりしない不思議な映画。かなり消化不良です。一昔前のB級映画っぽい。

 次は,『タイタンの戦い』を観てみたい。

映画感想『ミート・ザ・ペアレンツ』

2009年04月19日 | 映画
-結婚志願の男性と、その相手の女性の父親がバトルを繰り広げるコメディ。監督・製作は「オースティン・パワーズ:デラックス」のジェイ・ローチ、脚本は「テープヘッズ」のジム・ハーツフェルドほか。撮影は「ダブル・ジョパディー」のピーター・ジェームズ。音楽は「トイ・ストーリー2」のランディ・ニューマン。出演は「フローレス」のロバート・デ・ニーロ、「僕たちのアナ・バナナ」のベン・スティラー、「愛と精霊の家」のテリー・ポロ、「恋は嵐のように」のブライス・ダナー、「シャンハイ・ヌーン」のオーウェン・ウィルソンほか。(goo映画紹介より。2000年)

久々ブログを再開しましたが,まずは最近観た映画の紹介を。
観たといっても,深夜に地上波のテレビで流していた映画をたまたま観ただけなのですが,これがとてつもなく面白い映画でした。

僕の好きな俳優,ロバート・デ・ニーロ。「ゴッド・ファーザー」,「ディア・ハンター」,「タクシードライバー」,「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」などなど数々の映画に出演していて,そのどれも影を持った渋い演技が印象的なのですが,本作「ミート・ザ・ペアレンツ」ではそれらとは対照的なコメディタッチな役で,クールで渋い演技と表裏一体な感じの演技となっています。コメディといっても,ちゃらちゃらはしゃぎまくる演技ではなく,計算されつくした演出で,元CIAのかなり変わった頑固一徹な父親役ジャックを演じ,それが見事につぼにはまっています。
対する娘の花婿候補を演ずるベン・ステイラーは「メリーに首ったけ」があまりにも有名なコメディ俳優です。

ジャック(デ・ニーロ)がグレッグ(ベン・ステイラー)に嘘発見器をかけてみたり,部屋中監視カメラで監視したりする異常っぷりは,異常でありながら元CIAの面目躍如という感じです。対するグレッグがトイレの故障を猫のせいにしたり,行方不明になった猫に似せてノラ猫のしっぽをペンキで塗ってごまかしたりする姑息さも,もともとの真面目な性格との比較から大いに笑わせてくれます。
この2人をはじめとする各出演陣は観客を笑わせようという過剰な演技や演出はないのですが,ちょっとした顔の表情,心理描写,演出,会話やシチュエーションなどで大いに観る側を上質な笑いに誘ってくれています。

やはり古今東西,娘の父親と娘の恋人という設定は,映画やドラマの設定としては客観的にみると,大いに笑えるものなんでしょうかね。
かくいう僕は,結婚のときは義父は既に亡くなっていたので,結婚にあたっての彼女の父親との対面というのは経験がなく,子供もいないので父親として娘の彼氏に相対する機会もないのがちょっと残念なところです。

この作品にはパート2も作られていて,そちらの方ではグレッグの両親(両親役がダスティン・ホフマンとバーブラ・ストライザンド!)も登場して,とても面白い作品に仕上がっています。

映画感想『スティング』

2008年10月13日 | 映画
先週,名優緒形拳の突然の訃報があったが,海の向こうでも20世紀を代表する役者の一人ポール・ニューマンが9月に亡くなった。
じつはポール・ニューマンの映画はそれほど多くは観ていない。『明日に向かって撃て』,『ハスラー』,『ハスラー2』の3本を観た(全てビデオ)。他の作品も小さい頃テレビで観ているかもしれないが残念ながら覚えていない。

先日テレビをつけチャンネルを変えていたら,NHKBSで追悼番組として『スティング』が放映されていた。放送開始から10分ほど過ぎていたが,そのままビール片手に最後まで観てしまった。これがとてつもなく面白い映画だった。そのとき飲んだビールはとても旨かった。

ロバート・レッドフォードの若々しい演技が新鮮だった。また他の出演陣もみんな一癖も二癖もある存在感のある役者ばかりで見応えがあった。しかし,その中においてポール・ニューマンは群を抜いて光っていた。渋くてかっこよかった。

とにかく最高の映画。ワンシーン,ワンシーンの作りがしっかりしていて,役者たちがその中に溶け込み自然に動いている。ストーリーと演出が素晴らしく,スリリングでテンポがよくて息をつかせぬ展開。映画の中にぐんぐん引き込まれてしまった。そして最後の最後に。。。いやーすかっとした。久々に充実感を覚えた映画だった。音楽も軽妙で映画とその時代にマッチした感じでよかった。時間ができたらぜひもう一度観てみたい。

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allcinemaサイトより -
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=11933

アカデミー賞(1973年)第46回 作品賞、監督賞(ジョージ・ロイ・ヒル)、脚本賞、音楽賞

<作品紹介>
 1936年。シカゴの下町で、詐欺師の3人組が通り掛かりの男をヒッカケて金をだまし取る。しかし彼らが手にしたその金は、いつもとは段違いの思わぬ金額だった。悪い予感は的中。その金は、ニューヨークの大物ロネガンの手下が、賭博の上がりをシカゴへ届ける為の金だったのだ。怒った組織は、仲間の一人であるルーサーを殺害。彼の復讐を誓ったフッカーは、助けを求めて、賭博師ゴンドルフを訪ねた。最初は嫌がっていたものの、ロネガンの名を聞いて目を光らせるゴンドルフ。2人は、ロネガン相手に一世一代の大バクチを企てるが……。二転三転するストーリー展開、リズミカルな脚本、テンポ抜群の演出、驚嘆のラスト・シーン、そしてポールン・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウら名優たちが繰り広げる、華麗で巧みな名演技等、そのどれもが文句なく素晴らしい娯楽映画の大傑作! ゴンドルフが列車の中でロネガンにポーカーを使ってイカサマを仕掛けるスリル満点のシーンや、ラスト近く、ロネガンがノミ屋で馬券を買う迄のくだりなど、まさに名シーンが満載。
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容疑者Xの献身

2008年10月05日 | 映画
本日公開の映画をさっそく観てきた(原作は東野圭吾で直木賞受賞作)。
ほとんど原作に忠実に製作されているようでありながら,スケールも面白さもそして感動も期待以上で原作を超えていた感があった。原作がいいから,このようないい作品に仕上がったとも考えられるが。
とても丁寧に作られており精緻でかつ重厚な作品だと感じた。恥ずかしながら,映画後半になるにつれうるうる泣けてきた。周りの人たちも同じようだった。

福山雅治と柴咲コウもよかったけど,とにかく堤真一と松雪泰子がよかった。
原作の石神(堤真一)は「ずんぐりした体型で,顔も丸く,大きい。そのくせ目は糸のように細い。頭髪は短くて薄く,そのせいで五十歳くらいに見えるが,実際はもっと若いのかもしれない」と形容されている(まるで俳優の斉藤暁そっくりに思える)。しかし今回の石神の役は堤真一しかいないと思えた。実際,堤真一は前髪を切って白髪で染めるなどの役作りをしたとのことだが,そういった見た目ではなく,堤の演技はまさに迫真に迫るものがあった。

松雪泰子も堤真一に負けず劣らずの演技だった。以前から思っていたが本当にいい役者さんだ。喜び,恐怖,不安,儚げさなどの細かな感情表現が観るものに伝わってきた。

福山雅治は男の僕がいうのも何だがやっぱり魅力的でかっこよかった。物理学者湯川学の人間性を感じさせる苦悩,石神のことを思いやる友情も十分観るものに伝わってきた。柴咲コウは相変わらず演技がうまいと感じた。それでいて自然で天然な感じがよかった。

今回の映画は,ドラマでおなじみのメンバーも揃っていてドラマの時の面白さやテイストを引き継ぎいでいるので,ドラマからのファンの方も安心して観られるものだ。ドラマの方ではあんまり出番がなかった草薙刑事(北村一輝)も全編通して登場してくるので,原作ファンも必見だ。

まだ公開されたばかりの映画なので,これ以上の感想あらすじなどは書かないことにしておく。原作を読んだ人にも読んだことがない人にも,福山雅治ファンはもちろんだけどそれほどでもという人にもぜひ観てほしい作品だ。

ただ一つ気になったところは,殺人事件に対してとても大規模な捜査陣だったことだ。実際の事件でもあんなものなのだろうか。

キャッチボール屋

2007年12月08日 | 映画
WOWOWで放送された「キャッチボール屋」。最初は何となく、そして最後まで観てしまった。

主たる舞台は「公園」。公園は誰もが集まることができる場所だが、そこに集まる人々は様々。いろいろな事情を抱えている。そんな公園で、ひょんなことから、10分100円のキャッチボール屋を引き継ぐことになった主人公。この設定からして浮世離れしている。そう、この映画はちょっとメルヘンチックでいい感じの映画だ(映画でありながら、舞台を観ているような気もする)。

キャッチボール屋は主人公で7代目となる。長くやる人もいれば、一日で辞めた人もいたという。10分100円のキャッチボールに人は何を求めるか?ほんのしばらくの心の繋がり?そう簡単にいえないところがこの映画の不思議なところだろう。

リストラされた、ちょっと頼りない主人公。甲子園5打席敬遠のトラウマから抜け出せないでいる元高校球児。息子との断絶に悩む中年男性。ちょっと不良のやくざ風の男。失踪した旦那を捜す売店の中年女性。ちょっと謎めいたOL。こんな人々が公園に集まって、キャッチボールを手段としながら何となく繋がっている。
密接ではないが、決して無関心ではない。というか、けっこうお互いのことを気にかけている。それでいて暑苦しくない。そう、公園とはそんな人々が集まるにはもってこいのシチュエーションの場かもしれない(吉田修一の「パークライフ」を思い出してしまった)。

それぞれが、心の中にもやもやを抱えつつ「キャッチボール」をしながら、その場から一歩先へ行くことができないでいる。それがあることをきっかけにして、それぞれが新しい場所、次のステップを踏むことができる。

見終わったあと、長い人生、たまには誰かとキャッチボールでもしながら立ち止まっていろいろと考えるのもいいのではないかな、その間にあくせくしていた頃忘れていた優しさや暖かさを思い出すこともありますよ、翼を傷めて今は跳べないでいる鳥もそのうち(心が)癒されたら飛び立つこともできますよ、なんてことをそれとはなく言っているのかなあという思いになった。そしてここが肝心なのだが、キャッチボールって一人ではできないもの。誰か相手がいないと成り立たないもの。都会の片隅でも、互いに思いやりを持ちながら、長い人生のんびりいきましょうや、なんてことをそれとはなく訴えてるのかなと思った。そんな映画の意図にまんまとはまって、けっこう心が癒されてしまった僕でした。

P.S.
コインランドリーでの山口百恵の「夢先案内人」のエピソードは心に残ります。

『ALWAYS 続・三丁目の夕日』を観て

2007年11月13日 | 映画
仕事帰り、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』を観てきた。期待に違わぬ面白さで、すっかり昭和34年にタイムスリップしてしまった。見終わってからもずっと心ポカポカ気分で帰路についた。

小説家くずれで人生に夢をなくしかけている駄菓子屋主人茶川さん(吉岡秀隆)、親の病気で借金を背負うも明るく生きる踊り子ヒロミ(小雪)、一途な吉行淳之介君(須賀健太)の3人を中心に、怖い親父の雰囲気を残すものの熱血漢で人情家の鈴木オート社長(堤真一)、日本のお母さんという感じのトモエさん(薬師丸博子)、東北弁が可愛いくて純情少女の六ちゃん(堀北真希)、腕白だが心は優しい一平君(小清水一輝)、戦争で家族を失った喪失感からまだ立ち直れない町医者宅間先生(三浦友和)、煙草屋の大田キン(もたいまさこ)などなど、前作同様、登場するみんなが全て愛すべきキャラクターたちばかりなのだ。それに新たな登場人物たちも加わって、古き良き時代の下町人情溢れるストーリーが繰り広げられる。

親の事業の失敗で一時的に引き取られてきたわがまま育ちの美加が、トモエさんや一平君の優しさに触れて優しい少女に変わっていく様子がよかった。戦争で家族をなくした喪失感から立ち直れないでいる宅間先生に新たな家族が生まれてよかった。半ば人生をあきらめかけていた茶川さんが立ち直る様もよかった。六ちゃんも前作同様元気いっぱいでよかったなあ。鈴木オート社長さんと戦友のエピソードにはホロリ・・・。印象に残るシーンやエピソードをあげたらきりがない。おいしさてんこ盛りの映画だ。

昭和30年代の東京が精巧なセットとVFXによって見事に再現されていて、これも大きな見所だ。下町のシーンにはジオラマを俯瞰するような面白さも感じることができた。

この映画のテーマは「絆と心の豊かさ」だと思う。
何気ない日常の中で、みんなが貧しくても明日への希望と心の豊かさが今よりもたくさんあった時代の中で、家族、友達、隣人などなどいくつもの絆が、何本ものエピソードを絡めながら描かれていく。物が溢れ格差社会と呼ばれる今の時代に生きる私たちに対し、本当に大切なものは何なのかを思い出させてくれる。
もはや昔に戻ることはできないが、自分の大切な人とあの頃の時代と同じ美しい夕日を毎日眺めて暮らしたい、心を豊かにして生きていきたい、そう思わせてくれる素敵な映画だ。

ルート225

2006年10月01日 | 映画
多部未華子主演『ルート225』のDVDが届いた。
封を開き、さっそく観てみた。切なくぐっとくる映画だった。

パラレルワールドの世界の中で、観る者に日常の何でもない人生の大切さを訴えているように感じられる、心に残る佳作となった。

その伝えようとするところを理解するのはなかなか難しいように思えたのだが、映画の公式サイトをみて少しわかった。

公式サイトによると、ルート225のルートとは、道、道筋のこと。
そしてもう一つの意味、ルート225は15の平方根、すなわち15才のメタファー(暗喩)とのことだ。

人生を歩んで行くうえで分岐点がいくつも待ち受けるが、そこを選択していく者にとって結局ルート(道)は1つしかない(人生は1つしかない)。
タイトルが表すルート225は、単純には普通の国道225号線のことなのだが、なぜかパラレルワールドの分岐点になっている。そこから、異空間の、前と同じような微妙に違う世界に迷い込んだ14才の少女とその弟が、父母がいない混乱の中でその世界を受け入れつつ、15才に向かって成長していく

原作本(著者は藤野千夜)を読めば、映画ではわからなかった部分が見えてくるかもしれない。

ここで出演者に目を向けてみる。
なんといっても主人公、田中エリ子役の多部未華子だ。その存在感はすごい。
多部未華子は、僕にとってはずっと前にこのブログでもとりあげたWOWOWドラマ『対岸の彼女』の野口魚子(ななこ)役が印象的(http://www.wowow.co.jp/dramaw/taigan/)で、これもまたWOWOWで観た『HINOKIO』(準主演)などの演技により、今年のブルーリボン新人賞も受賞した、今もっとも注目の女優だ。

弟(田中ダイゴ)役の岩田力は、映画初出演とは思えない自然体の演技で今後注目したい。

多部未華子が主演をつとめる映画『夜のピクニック』が、昨日全国一斉公開されている。恩田陸原作本は、昨年の本屋大賞受賞作。『夜ピク』と多部ファン(僕も含めて)が公開を待ちこがれていた映画だ。

FLY,DADDY,FLY

2006年09月04日 | 映画
今夜WOWOWで金城一紀原作の「FLY、DADDY、FLY」が放送された。
昨年劇場で観たかったところがついつい見逃してしまっていたものだった。

金城一紀の著作は少ないのだが、この「FLY,~」を含むゾンビーズシリーズと「GO」が好きだ。
(反面僕にとっては面白くない本もある両極端な評価がし難い作家)

主演の堤真一も好きな俳優だ。
普段は二枚目役が多いと思うが、「FLY、~」では普通のサラリーマン、普通の父親を演じていて、親近感がわく。

人間誰でも守るべき者があると強くなれる=飛べる(跳べる)。
一番大切なものは何なのか?
そういうことを考えさせられる。
自分にとって大切なもの・・・妻、親、兄弟、自分、プライド、友情、仕事・・・
いろいろある。

普通に考えるとありえない物語だけど素直に観ることができた。
一見単純な筋立てで、ちょっと意地悪な見方をすると和製サラリーマン版ロッキーでもあるけれど、それでもいいかな。
サラリーマン(オヤジ)への応援歌ともなっている。
僕もがんばらなくっちゃ!

ゾンビーズシリーズではおなじみの面々も、原作のイメージとあまり違っていなくてよかった。
しかし原作を読まないで映画を観ると、細かい設定や登場人物の人物設定がよくわからないかもしれない。
そういう点には目をつむってもいい映画だと言えるだろう。