「俗気」抜きの川柳大会 黒川 孤遊
この会の会長を引き受けたとき、真っ先に浮かんだ句が二句ある。
太陽を真ン中にしてみんな生き 大嶋 濤明
熊本の川柳吟社の先駆けである川柳噴煙吟社を創立、発展に尽くした人である。人間の包容力の大きさを太陽というスケールで詠んだ名句といえる。そして噴煙吟社設立に加わり全日本川柳協会会長(後に名誉理事長)を務めた吉岡龍城の
たっぷりと血を吸った蚊が飛びたてぬ
である。穿ちが効いた句ではないか。そして龍城は川柳人の心構えを自著に残している。「二十代は遊びの、三十代は追いつき追い越せ、四十代で川柳の俗気に惹かれ、生涯の宿縁のものと知り、五十歳以降は、川柳は心を豊かにし人間愛に触れ、信頼の友を作る」
今日の川柳界を見回してみると、濤明のスケールの大きさや龍城の「人間愛に触れた」作家が何人いるのか疑問に思えてならない。賞狙いに走る七十代が多いのは「俗気」から抜け出せないからだろう。賞を巡ってあらぬ噂がまことしやかに流されたりもする。「蚊の句」をおもい出したのもそんな背景からだ。
川柳、と言ってもサラリーマン川柳、シルバー川柳など自虐、言葉遊びの川柳がもてはやされる。季語も不要。話し言葉で十七音字にまとめる手軽さがそれに拍車をかけ、川柳=笑いの図式から抜け出せずにいる。
そんな時代に賞状や楯といったものに目の色をかえる。「俗気」をそろそろ捨てようではないか。
協議会が来年二月に予定している大会は新鮮な内容で「俗気」抜きであることを明言しておきたい。 (敬称略)
画は熊本の川柳人・江上精治さん 柿山紘輝さん 川柳 ひのくに(熊本県川柳協議会 会報)第3号から
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