毒舌の日々

なかなか人前で言えないことをぶちまけます。

『感染地図』 スティーヴン・ジョンソン

2020-08-06 02:56:56 | 読書
『感染地図 歴史を変えた未知の病原体』 スティーヴン・ジョンソン(矢野真千子・訳)
¥2,600+税 河出書房新社 2007/12/30発行
ISBN978-4-309-25218-6

1854年8月、ロンドン。
ブロード・ストリートをコレラが襲った。
開業医ジョン・スノーは、病の原因を探るべく、探偵のように歩き回り、話を聞き回った。
副牧師のヘンリー・ホワイトヘッドは、普段からよく知る教区の人々から話を聞いた。
当時、病の原因は瘴気(悪臭)であると信じられていたが、スノーは水が感染源だと疑い、コレラにかかった住民が同じ井戸を利用していたことを突き止める。
スノーの立てた推論にはじめは懐疑的だったホワイトヘッドは、調べるほどに、スノーの説の正しさが理解できるようになる。ふたりは力を合わせ、現代に至るも評価の高い感染地図を作り上げた。

常識に惑わされず真実を見抜く力を持った天才、スノー。
自説に固執することなく柔軟に事実を認めるホワイトヘッド。

めっちゃおもしろかったです。

>  スノーとホワイトヘッドは[…]小さな、だが力強い貢献をした。二人は地元の謎を解決し、やがてはそれが世界中の解決になった。都市生活を、死人の山を生むものから持続可能なものに変えたのだ。そしてそこの解決を可能にしたのもまた、都会の中の人と人のつながりだった。経歴の違う見知らぬ者二人が、ご近所どうしだったというだけで交差し、大都会の路上で貴重な情報と技能を分かち合ったのだから。ブロード・ストリートのできごとは、もちろん疫学と科学的推論、情報デザインの勝利であるが、都市生活の勝利でもあった。(211頁)


>  ニュースを見聞きして暗い気持ちになったときには、むかしむかしロンドンのあるところに、無口な医者と世話好きな副牧師がいた、という話を思い出そう。そのころ、コレラは人の手には負えない天罰のような疫病で、世の中は迷信に支配されていた。でも、最後に勝ったのは理性の力だった。ポンプの柄は取り外された。地図は作られた。瘴気説は消えた。下水道は建設された。飲料水はきれいになった。この物語は、私たちに勇気と希望をあたえてくれる。[…]私たちはこれまでも、さまざまな危機に直面してきた。問題は、今後もそうした危機がやってきたときに大量の命を犠牲にすることなく対応できるかどうかだ。さあ、ぼやぼやしてはいられない。(265頁)