誕生日の翌日、私は朝からイベントだった。
京都の雪に1人感嘆の声を上げつつ、時折凍結した路面にヒヤヒヤしながら会場に向かう。
厳しい寒さの中、室内でのイベントに胸を撫で下ろしつつ無事終了。

京都の雪に1人感嘆の声を上げつつ、時折凍結した路面にヒヤヒヤしながら会場に向かう。

厳しい寒さの中、室内でのイベントに胸を撫で下ろしつつ無事終了。
帰宅すると訃報が待っていた。
つばきさんが虹の橋を渡った。
まだ6歳になったばかり。
私は真っ暗な早朝に出て行ったので、この日つばきさんに会えていない。
伴侶が朝にカバーを外し、夕方5時ごろ放鳥しようと見たらもう亡くなっていたらしい。
寒がりのつばきさんのために昼間は別暖房に切り替えていたが、それはされていなかった。
「私がカバーを外していたら」
「暖房を切り替えていれば」
「病院に行っていたら助かったかも」
「もっと遊んであげたら良かった」
「甘やかしてあげれば」
山のようなタラレバが浮かんで来て混乱した。
ごめんと繰り返す私に、
「病気かもしれないし、寿命かも知れないけど、事故や怪我をさせて死なせてしまう事が無くて良かったと思うよ」といっくんが言葉を選びながら慰めてくれる。
いっくんは鳥かごを全て洗浄してくれていた。
「お母さんに任せたら洗いながらずっと泣くだろうから」
その言葉にまた泣けた。
名残惜しいとは言え腐敗が進んでは大変なので小さな冷たい体を撫でてからティッシュに包み、保冷剤と一緒に発泡スチロールにそっと入れた。
指で触ろうとするとくってかかるはずのつばきさんが無抵抗なのが悲しい。
すでに硬直が始まっていて目を覚さないのは頭では分かっているのに、なぜつばきさんをこんなところに閉じ込めなければならないのか理解が追いつかない。
今にも飛び上がって肩に乗ってきそうで、小さな箱につばきさんを入れる事が苦しかった。
混乱と悲しみでひたすら泣いた1日目、本当の喪失感は2日目にやってきた。
朝、カバーを外そうとして「いない…」と胸が締め付けられる。
窓を開けて鳥の声が聞こえると呼応するように鳴くつばきさんの囀りがない事や、放鳥の時間になると、つばきさんがいなくなってしまった事を痛感する。
そして我が家で一番涼しい場所に安置された、つばきさんが入っているとは到底想像がつかない発泡スチロールが目に入るたびに混乱する。
つばきさんの箱を開け保冷剤を替え、現実を突きつけられる。
伴侶の休みを待ってつばきさんを埋葬する事にした。
2日ぶりに手に乗せたつばきさんは相変わらず可愛くてふわふわしていて、どんなにティッシュにくるんでも冷たい土の中に埋めるのは苦しかった。
可愛い瞼を閉じた可愛すぎる模様のつばきさんを泣く泣く手放した。
こんなに辛いと思わなかったし、こんなに愛おしく思っていた事に気が付かなかった。
何よりこんなに懐いてくれるとは夢にも思っていなかった。
亡くなる数日前から随分甘えてきていたのはこうゆう事だったのかと、今更分かっても、もう遅い。
グズグズ泣いて、最終的には向こうで会えるから大丈夫と自分に言い聞かせた。
涙なしでつばきさんの事を思い出せるようになるのはもう少し先になりそうである。