いっくんはどんぐりが大好きである。
懇談のとき、先生に「休憩時間、お友達に遊びに誘われても自分がどんぐりを拾いたかったら、たった一人でも拾っています!」と驚かれたほどどんぐりが好きである。
自らを「どんぐり研究所の所長」と名乗り、拾って帰ったどんぐりは一体どれくらいの量になるのか…。
とにかくどんぐりに目が無い彼である。
そんないっくんが、ある日帰宅したところ、手に大きなオブジェを持っているではないか!
「どどど、どうしたの!?それ!?」
見ると、キレイに色の塗られたどんぐりが、まるで木になっているように上手に接着されていて、鈴なりって感じ。
木の下には可愛らしい椅子とテーブルがあり、丁寧に着色、ニス塗りがされている。
驚いている私にいっくんは
「これな、12番の人がくれてん!僕どんぐりすきやからな、もういっこあげる、っていわれてんけど、ことわってん!」
12番とは、帰り道にある車庫の番号である。
この車庫を作業部屋代わりに使っておられる年配のおじさんが、「12番の人」と言うわけだ。
帰り道によく会うので、挨拶をしたり、立ち話をする(寄り道するな~!!)関係らしいのだ。
もういっこ薦められたオブジェを断ったのは、いっくんなりに遠慮したと言う所だろう。
興奮気味に、実に嬉しそうに報告するいっくんを引っ張って、お礼を言いに「12番」にかけつけたが、もうおじさんは帰ってしまったところだったようである。
いっくんは誰もいない倉庫を眺めて
「きっと僕にしか見えへんねや!魔法つかいのおじさんや!」と夢みたいなことを興奮気味に叫んでいた。
いっくんにおもちゃをくれる、魔法使いのおじさん…?夢があるなぁ…。
とにかく、こんな手の込んだ物を頂いてしまったので、いつかお礼に伺わねば。
次は魔法が解ける前にかけつけたいものである。