日月譚

日月庵 庵主 大樹独活の駄文の世界

一筆啓上仕候


日月庵(にちげつあん)を
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管理人の大樹独活(おおきうど)と申します
コラム、エッセイ、ショートショート
掌編、短詩型などさまざまなジャンルで創作
モットーは『読んで・読んで・書きまくりぃ!』
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ナオトの受難  (その3)

2012年01月28日 | 掌編
ナオトの悲鳴が広い浴室内に“3度”こだました。 1度目はジェット水流が背中に当たった瞬間だった。 浴槽はお湯がこぼれ出ないようにタイルで縁が高く盛られている。 2度目はジェットバスの浴槽から水圧に押し出されるときである。 その高い縁を越えた瞬間だった。 3度目は薬草風呂にヘッドスライディングで突っ込んだ瞬間、そこにも高い縁があった。 言うまでもないが――いや、誤解を招かぬよう正確に言っておこ . . . 本文を読む

ナオトの受難  (その2)

2012年01月23日 | 掌編
平日の5時ということもあって浴室内は思いのほか空いていた。 (ケッコー、広いジャン!) ざっと見渡しても、10個くらいは風呂があった。屋外にはちゃんと露天風呂もある。 アカスリはショウタが5時半、ナオトは6時に予約した。ナオトは内心ホッとしていた。2人同時だったらどうしようかと…… 「ナオト――オレ、サウナでゆだってくるから、オマエもさあ、どっかテキトーに入ってれば!」 「ああ、わかった。そうす . . . 本文を読む

ナオトの受難  (その1)

2012年01月22日 | 掌編
「ナオト――学校の帰りにさあ、日帰り温泉行かない?」 「日帰り温泉って、ナニ?」 「オレ、ときどき行くんだぜ。美形男子をめざすメンズとしては、お顔の手入れだけじゃダメなんだよね! アカスリだよ、ア・カ・ス・リ!」 「えっ、アレってさあ、マッパ(真っ裸)で台の上に寝かされて、おばちゃんにタワシで身体中ゴシゴシこすられるんじゃねえの?」 「ナオト――それって、チョー古くねぇ! ちゃんとダサイ海パン貸 . . . 本文を読む

七草粥

2012年01月08日 | ショートショート
昭和30年代初頭は、未だ国も貧しく人々も飢えていた。 私が子どもの頃である。 我が家も貧乏だった。 母が風呂敷を抱えて出かける先といえば、きまって質屋だった。 大晦日に質草が工面でき家族7(シチ)人なんとか年が越せた。 「今年も年が越せてよかったね!」 と元旦の朝母は言った。 6日の日は家族全員で土手に出かけ草を摘んだ。 「セリ・ナズナ、ゴギョウにハコベラ・ホトケノザ、スズナ、スズシロ」と。 . . . 本文を読む