
前衛句も芸術的な句も、他人(ひと)よりは好きなのでしょうが、それでも時々うんざりします。
そういう時は、一茶でしょう。まず、分からない句というのはありません。
そのなかでも子どもを対象とした句、これはほっといたします。
一茶が子供を句に詠むようになるのは、文化11年に、52歳にして始めて年若い妻を迎えて以降になる。それ以前にもあることはあるがそう多くはない。
時系列に句を挙げてみよう。
<文化11年>
雪とけて村一ぱいの子ども哉
御雛をしやぶりたがりて這子(はふこ)哉
五十年一日の安き日もなく、ことし春漸く妻を迎へ、我が身につもる老を忘れて、凡夫の浅ましさに、初花に胡蝶の戯るゝが如く、幸あらんとねがふことのはづかしさ、あきらめがたきは業のふしぎ、おそろしくなん思ひ侍りぬ。
三日月に天窓(あたま)うつなよほととぎす
千代の小松と祝ひはやされて、行すゑの幸有らんとて、隣々へ酒ふるまひて、
五十婿天窓をかくす扇かな
片天窓(あたま)剃て乳を呑夕涼
子宝が蚯蚓のたるぞ梶の葉に
<文化12年>
妹が子やじくねた形(な)りでよぶ蛍 「すねた」の俗語
里神楽懐(ふところ)の子も手をたゝく
<文化13年>
石なごの一二三(ひふみ)を蝶の舞にけり 小石でするお手玉
凧抱たなりですやすや寝たりけり
たのもしやてんつるてんの初袷
瓜西瓜ねんねんころりころり哉
里の子が犬に付けたるさ苗哉
わんぱくや縛れながらよぶ蛍
千太郎に申す
はつ袷にくまれ盛(さかり)にはやくなれ
妹が子は穂麦の風にふとりけり
あこよ来よ転ぶも上手夕涼
茹栗や胡坐巧者なちひさい子
縄帯の倅いくつぞ霜柱
竹ぎれで手習ひをするまゝ子哉
<文化14年>
をさなごや尿(しと)やりながら梅の花
ちさい子がたばこ吹也麦の秋
<文政元年>
雪解や貧乏町の痩子達
としとへば片手出子や更衣
蚤の迹(あと)かぞへながらに添乳哉
暑き夜や子に踏せたる足のうら
立臼に子を安置して盆の月
雪車(そり)負て坂を上るや小サイ子
二ッ子にいふ
這へ笑へ二ツになるぞけさからは
鬼打の豆に辷て泣子哉
是程の牡丹の仕方する子哉 身振り、手まね。
<文政2年>
畠打や子が這ひ歩くつくし原
門前や子どもの作る雪げ川
初瓜を引とらまへて寝た子哉
妹の子のせおうたなりや配り餅 配り餅を背負っている
まゝつ子や涼み仕事にわらたゝき
越後女、旅かけて商ひする哀さを
麦秋や子を負ながらいわし売
暑き日に面は手習した子かな
露の玉つまんで見たるわらべ哉
名月や膳に這よる子があらば
子を負て川越す旅や一しぐれ
さと女笑顔して夢に見えけるままを
頬べたにあてなどしたる真瓜(まくは)哉
さと女三十五日墓
秋風やむしりたがりし赤い花
子宝がきやらきやら笑ふ榾火哉
<文政3年>
弧(みなしご)の我は光らぬ蛍かな
雀子やものやる児(ちご)も口を明(あく)
子宝の多い在所や夕ぎぬた
鬼灯の口つきを姉が指南哉
★手と目が疲れました。続きは明日。
そういう時は、一茶でしょう。まず、分からない句というのはありません。
そのなかでも子どもを対象とした句、これはほっといたします。
一茶が子供を句に詠むようになるのは、文化11年に、52歳にして始めて年若い妻を迎えて以降になる。それ以前にもあることはあるがそう多くはない。
時系列に句を挙げてみよう。
<文化11年>
雪とけて村一ぱいの子ども哉
御雛をしやぶりたがりて這子(はふこ)哉
五十年一日の安き日もなく、ことし春漸く妻を迎へ、我が身につもる老を忘れて、凡夫の浅ましさに、初花に胡蝶の戯るゝが如く、幸あらんとねがふことのはづかしさ、あきらめがたきは業のふしぎ、おそろしくなん思ひ侍りぬ。
三日月に天窓(あたま)うつなよほととぎす
千代の小松と祝ひはやされて、行すゑの幸有らんとて、隣々へ酒ふるまひて、
五十婿天窓をかくす扇かな
片天窓(あたま)剃て乳を呑夕涼
子宝が蚯蚓のたるぞ梶の葉に
<文化12年>
妹が子やじくねた形(な)りでよぶ蛍 「すねた」の俗語
里神楽懐(ふところ)の子も手をたゝく
<文化13年>
石なごの一二三(ひふみ)を蝶の舞にけり 小石でするお手玉
凧抱たなりですやすや寝たりけり
たのもしやてんつるてんの初袷
瓜西瓜ねんねんころりころり哉
里の子が犬に付けたるさ苗哉
わんぱくや縛れながらよぶ蛍
千太郎に申す
はつ袷にくまれ盛(さかり)にはやくなれ
妹が子は穂麦の風にふとりけり
あこよ来よ転ぶも上手夕涼
茹栗や胡坐巧者なちひさい子
縄帯の倅いくつぞ霜柱
竹ぎれで手習ひをするまゝ子哉
<文化14年>
をさなごや尿(しと)やりながら梅の花
ちさい子がたばこ吹也麦の秋
<文政元年>
雪解や貧乏町の痩子達
としとへば片手出子や更衣
蚤の迹(あと)かぞへながらに添乳哉
暑き夜や子に踏せたる足のうら
立臼に子を安置して盆の月
雪車(そり)負て坂を上るや小サイ子
二ッ子にいふ
這へ笑へ二ツになるぞけさからは
鬼打の豆に辷て泣子哉
是程の牡丹の仕方する子哉 身振り、手まね。
<文政2年>
畠打や子が這ひ歩くつくし原
門前や子どもの作る雪げ川
初瓜を引とらまへて寝た子哉
妹の子のせおうたなりや配り餅 配り餅を背負っている
まゝつ子や涼み仕事にわらたゝき
越後女、旅かけて商ひする哀さを
麦秋や子を負ながらいわし売
暑き日に面は手習した子かな
露の玉つまんで見たるわらべ哉
名月や膳に這よる子があらば
子を負て川越す旅や一しぐれ
さと女笑顔して夢に見えけるままを
頬べたにあてなどしたる真瓜(まくは)哉
さと女三十五日墓
秋風やむしりたがりし赤い花
子宝がきやらきやら笑ふ榾火哉
<文政3年>
弧(みなしご)の我は光らぬ蛍かな
雀子やものやる児(ちご)も口を明(あく)
子宝の多い在所や夕ぎぬた
鬼灯の口つきを姉が指南哉
★手と目が疲れました。続きは明日。