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元商社マン、いま何想う?

海外生活で体験したこと、想ったことなどをエッセイで伝えたいと思います。時には時局の話題も。

ケント本位制の国(1)

2011年04月30日 | 暮らし
 タバコがお金の代わりになる国、想像したことありますか?
 それがあったんです。かつてのルーマニアがそうでした。

「ケント」というタバコがある。
 かつてのルーマニアほど、「ケント」が幅を利かせた国はないであろう。同じアメリカの
タバコ、「マールボロ」でも、「ラーク」でも、「キャメル」でもダメ。それも白いパック
でロングサイズのケントに限る。

 ルーマニアに着いて早々、ケントの威力を知ることになる。日本から別送したマルティ・
ユースのテレビが届いた。数日後の朝8時、運転手に連れられて空港近くの倉庫へ引き取り
に行った。何カ所もサインを貰わねばならないという。受付日が限られているのか、すでに
長蛇の列ができている。まず受付をしてもらうための行列。次に、責任者の許可を取るため
の行列。

(これは大変だ。何時間かかるか分からないぞ)
 わたしは覚悟した。
 すると運転手が、ポケットにケントをいっぱい詰め込んだ。
(いっしょに来てください)

 そう言うと、運転手はわたしを受付の行列の一番前に連れていき、なにやら係官とひそひ
そ話している。うまく話しをつけたようだ。係官は、すぐ書類にサインをしてくれた。つぎ
に責任者のサインをとるための行列。これも同じようにして、すぐにサインをもらった。

 運転手はケントをそっと手渡して、割り込みをしたのである。わたしはきまりが悪かった。
運転手は平気な顔である。並んでいる人たちも、抗議をするでもなく、なんでもない顔をし
ている。よくあることなんだろうか。

 つぎにテレビが保管してある場所へ行った。ここでも、受付の係官と責任者のサインがす
ぐに取れた。同じように、ケントが威力を発揮した。

 頼みごとをするとき、ケントでお礼をする。なにかの修理を頼むとか、電球の切れたのを
取り替えてもらうとか、オフィスの掃除をしてもらうときなども。 
 チップ代わりにケントを使う。ボーイに荷物を運んでもらうときなど。

 レストランで一曲リクエストするとき、ケントを二箱、バイオリン弾きのポケットにさり
げなく入れる。そうすると、リクエスト曲(わたしの場合は、いつも「バラーダ」だったが)
のほかに、1~2曲、「荒城の月」とか「さくらさくら」をサービスで弾いてくれる。

 タクシーの支払いも、ケントで済ませる。
 ピアノ、歌、ルーマニア語など習い事のお礼にケント、テニスのコーチにもケント。

 医者にかかる。受付にケントをそっと差し出すと、効果てきめん。順番が早くなるし、親
切丁寧に診てくれる。

 飛行場でのパスポート・コントロール。一人ひとりにやたらと時間をかけるのだが、係官
の前にさっとケントを置くと、ずいぶん時間が短縮される。

 むろん貿易公団と商談の際にも、ケントは欠かせない。商談の相手やレセプションの女性
には、忘れずにケントを手渡す。



「ケント」の話しは、まだ続きます。
 今回もブログを読んでくださって、ありがとうございました。



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