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みなとみらい線と折返し乗車の不正乗車問題

先日10月21日の毎日新聞でみなとみらい線に関する以下のような記事が出ました。

みなとみらい線:折り返し乗車やめて 不正と知らない人も
http://mainichi.jp/select/news/20141022k0000m040014000c.html

(以下引用)
地下鉄みなとみらい(MM)線で朝のラッシュ時、相互乗り入れする東急東横線・渋谷方面の座席を確保するため、横浜駅などからいったん乗車券のない下り方面の駅まで乗って折り返す「不正乗車」が増えている。運行する横浜高速鉄道(横浜市中区)が20日、不正撲滅に向けた集中取り締まりキャンペーンを開始した。担当者は「不正と知らない方にもご理解いただき、正しく乗車してほしい」と呼び掛ける。
(以下省略)

記事の要旨としては、2004年の開業以来、東横線渋谷方面への電車への着席目的で、横浜~みなとみらい間の折り返し乗車に頭を痛める横浜高速鉄道では、月に2回程度みなとみらい駅で下り電車から上り電車に乗り換える客に声をかけて不正乗車の取り締まりをしている。今月20日には社員や警備員30人規模で声かけを実施。というもの。

このみなとみらい駅での折り返し乗車問題が新聞記事になるのは今回が初めてではなく以前にも。もはや朝ラッシュ時の風物詩とも言えるようなもの?で、横浜近辺の鉄道に詳しい人なら割と知られた話かもですね。


(みなとみらい駅ホーム各所に掲出されているポスター)

対策をしても増収があまり期待できなさそうな、頭が痛いみなとみらい線(横浜高速鉄道)

みなとみらい駅は上下線が同じ島のホームに発着する「島式ホーム」というタイプの駅。なので反対側の電車には階段などを使わずにすぐに乗り換え出来ます。


(みなとみらい駅のホーム。写真左側が元町中華街方面。右側が渋谷方面ホーム)

このような折り返し不正乗車を取り締まるには、上下ホーム別々に改札を設置するなど抜本的な駅改造や、一定数の係員配置のよる検札など、どうしてもコストがかかります。

また鉄道の規定では定期券を利用した不正乗車は定期券を没収した上で運賃の3倍の罰金を徴収することが認められています。しかし使用しているのは「東急線」の定期であり「みなとみらい線」の定期ではありません。みなとみらい線内では「定期券を利用した不正乗車」ではなく「無札での乗車」となり、横浜高速鉄道の判断で定期券の没収のような強硬策が取れない(取りずらい)という噂もあります。

一方で厳密に取締りをしても後述するように、「正当な折返し乗車」をする為の追加金額が高いので「定期の区間を伸ばす」などの「増収」よりも「折り返し乗車を止める」人も多いのは予想できます。
ある意味で厳密に取り締まって「折り返し乗車を撲滅したとしても増収にはならない」という、みなとみらい線特有の事情がありそうです。

結局は掲示などで「不正乗車」であることを告知しながら、利用者の良心に訴えたりコストが許す範囲でたまに係員を配置してチエックするしか手がないのが実情とも言えそうです。

これは無人駅などが多い地方のローカル鉄道などでよく言われる
「不正乗車を野放しにする損害よりも厳密に不正乗車を取り締まる費用の方が高い」
という問題を端的に表しています。


みなとみらい駅で折り返している人の内、結構な数は実は新高島駅利用者かも

このニュース記事の
「昨年度の1年間、駅で下り電車から上り電車に乗り換える客を呼び止めたところ、147人中、約半数に当たる71人が乗車券を持っていなかった」
この部分。
みなとみらい駅で折り返す人の半分程度は正当な乗車券類を持っていた。というのはこの記事で一番驚きました。

横浜~みなとみらい(1.7km)の定期代は通勤定期(1ヶ月)で7120円(新高島・馬車道も同額)
仮にみなとみらい駅まで乗れる定期を買うなら、1ヶ月辺り東急線の定期の値段+7120円が必要です。
この値段でも払う人は払うでしょうが結構な出費です。


仮に横浜~みなとみらいも東急線なら横浜までの定期+1140円でみなとみらい駅を利用出来る。
(渋谷~みなとみらいと同じぐらいの距離の横浜~池尻大橋・渋谷経由の値段から推定)

この値段でも不正をする人はするでしょうが、週に1~2度はみなとみらい駅に行く。という人ならば、定期を伸ばして買っても十分にペイするとも。

実は正当な定期券を使って折り返している人のうち、結構な人数は新高島駅最寄の乗客なのかも
新高島駅は各駅停車しか停車しない駅。新高島から渋谷方面に乗って横浜や菊名で通勤特急や急行に乗換えなら、全列車停車するみなとみらい駅まで一駅戻ってから、座って通勤も1回乗換えは一緒。

更に新高島~横浜とみなとみらい~横浜の定期代は同額。
新高島駅は横浜駅東口に歩けるような場所ですが、横浜駅の東横線ホームまでは徒歩で+10分強ぐらいと少し遠いので通勤手当で定期代が出るなら、みなとみらいからの定期を持つのも当然と言えるでしょう。


(新高島駅。写真右奥のビルはスカイビル)
ひっそりとした駅ですが、近年になって駅周辺には高層マンションも増加。写真左側には駐輪場も。

実は「半数の人が正当な乗車をしていた」に一番驚いているのは横浜高速鉄道自身なのかも。
他の乗客からのクレームや係員の目撃で取締りをしてみたら、予想よりも不正乗車は少なかったのかも(=その分取締りによる収入額も少ない)


折返し乗車=不正乗車という決め付けは全くもってナンセンス。

今回のニュース記事に対するコメントなどを見ていると「折返し乗車=不正乗車」と考えている意見が散見されますが、これは全くの誤りだと思います。

鉄道の規則では「折返し乗車をすること」が不正なのではなく、「乗車区間に対する有効な乗車券類を持っていないこと」が不正乗車です。
suica・pasmoのようなICカードの場合、乗車駅~降車駅の運賃を降車時に精算することで、その区間のきっぷを買ったのと同じ扱いにするシステムなので、折返し駅で改札を出入しないと不正乗車になります。

一方で定期券や1日乗車券などのフリーきっぷは「決められた区間を決められた期間自由に乗り降りできる」というタイプのきっぷなので、区間内ならば折返し駅で改札を出入しなくても不正乗車になりません。


冒頭のニュース記事では
「他の客から『注意しても無視する。大変不愉快だ』などの苦情も」
の一文がありますが、これは注意する側が悪いような全く失礼な話。業務中の係員でなければ、乗客のきっぷを検札をする権利はありません。


事業者・路線などで微妙に異なるので一概には言えない面もありますが、JR・私鉄共に定期運賃は距離が長くなればなるほど1キロ辺りの値段が安くなる傾向があります。

全区間が東急運賃なら、渋谷~横浜とみなとみらいで1ヶ月1140円しか変わらないと前述しましたが、例えばJR運賃で見てみると。


中央線(快速線)の例。中央線東京駅も、夕方ラッシュなど折り返し乗車が多いといわれる駅の一つ


このように伸ばした側の駅がターミナル駅など主要駅だったり他路線との乗換駅など、通勤以外でも時々利用する可能性がある駅だと、折返し乗車をしなくても定期を伸ばして買うことを検討するのをお勧めです。
往々にして電車の始発駅はこういう「便利な」駅なことも多いですよね。

注:通学定期の場合、そもそも通勤定期に較べて大幅に割り引かれている代わりに、一部を除き「指定の学校最寄駅~自宅最寄駅」でしか買えないのが基本なので、伸ばして買うことが不可能な事も多いです

折返し乗車をしている人はこのように「定期を伸ばして買っている」人も多いでしょうから、「折返し乗車をしている=即不正乗車に違いない」と決め付けるのは全くもって早とちり。失礼な話だと思います。

一方でそれでも不正乗車をする人には「鉄道運賃は乗車駅から降車駅までの運賃。○○駅まで行って降りない(駅から出ないで)戻ってくることに運賃が発生するとは意識してない」人もいるでしょう。
(寝過ごしや乗り間違えの際も厳密には運賃が発生するものの、特別対応の規定で追加代金不要としたりする)
金額の問題以前に「鉄道運賃」への認識の違いも折り返し不正乗車の原因の一つかも。


また、ニュース記事では文末で横浜駅から乗車する人の苛立ちも感じるインタビューが掲載されていましたが「折り返し」が正当な乗車であっても不正乗車であっても、横浜駅から座れないことには変わりません。


終着駅で一度立って降りるべきかどうかはマナーの問題

折り返し乗車の問題で頭が痛いのは実はこの問題。
みなとみらい駅は中間駅なので関係ありませんが、始発駅でしか座れないような路線でよくある問題。
始発駅で並んでいる人からすれば「始発列車が到着した時点で既に座席が埋まっている」というのは「オイオイ、ふざけるな」とも言いたくなるでしょう。
一方で座ったまま折返す人からすれば、「一度逆方向に乗るなど時間を消費もしている、座る為の努力だ」という声もあるでしょう。

前述したように正当な乗車券類を持っていれば折返しは不正乗車ではありません。

着席の為に事前に並ぶのが常態化している小田急線の新宿駅(準急・急行・快速急行)などでは、到着した列車から全員が一度降りることが当たり前になっています。たまに座ったままの人に対して係員が一度降りるように促している光景も見ます。
しかし、これは運賃規則上の不正乗車ではなく「優先席付近では携帯電話の電源はお切りください」という案内と同じ類のいわゆるマナーの問題。


一方で列車が発車する時点で空席を残しているような「発車直前に来ても座れる」駅では、座ったままの折り返しが常態化していたり、容認されている雰囲気の駅もあります。
しかし人には拘りがあるもので「座れれば何処でもいい」のではなく「座る場所に拘りがある」人もいます。自分が座りたい場所に座る為に早くから先頭で並んでいる人なら、他の席が空いていても不満が出るでしょう。

こちらの問題はなかなか難しい問題です。


鉄道規則の抜本的な改定と時間制限の導入も一案

現在の都市鉄道路線は車内改札(検札)を殆ど行わないので、折り返し乗車のような複乗は管理できないものの、自動改札化の進展で乗客個々の駅入場時刻・出場時刻の管理は容易になりました。

鉄道の輸送契約はあくまで「2地点の移動契約」が原則なので、現在の国内の鉄道事業者では入場券などの例外を除き、時間制限の規定は出来ません。これは昔の時代の名残ともいえます。

規定を変更し、折り返し乗車などの複乗は無制限。その代わりに時間制限を設けて、超過時は一定の金額を追加徴収するようなシステムも一案かもしれません。
時間内なら路線内を乗り放題。運賃は乗車駅と降車駅の距離(+時間超過時の通過額)で決まる。という仕組みの方が今の時代の改札などのシステムに合っているようにも思います。

しかしダイヤ乱れや運転見合わせなどの対応など、複数会社が直通運転しているような路線の扱いなど、このシステムが導入できるとしたら、地方都市の地下鉄のように定時運転率が高く、路線ネットワークが一定の範囲で完結しているような路線に限られそうです。


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注:この記事の内容はJRや大手私鉄の一般的な規則に基づいています。地方私鉄などでは微妙に異なる可能性があるので要注意です。

注:乗車券類=普通乗車券・定期・回数券・フリーきっぷ・ICカードなどの、きっぷ類を総称した呼び方

2014/10/25 00:11(JST)

10/27 23:15 写真追加
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