ロスタイム・CAFE

シンドラーのリフト

 昨今、「シンドラー社製のエレベーターの死亡事故」がテレビのニュースで連日報道されています。 実は僕はサラリ-マン時代、エレベータに関わっていました。 僕のブログはあまり社会性には無縁のところで勝手に書いてるんで、この話題を取り上げるかどうか迷ったんですが、どうしても言いたいことがあったんで、今日は久しぶりに真面目に書こうと思います。

 今回の死亡事故にはいろいろな原因があると思いますが、最終的には制御基板の故障が原因になると思います。(現在のエレベーターは、ほとんどコンピューター制御になっています)・・・じゃぁ、メンテナンスはちゃんとしてたのか?ここも責任追及の大きなポイントになると思われるかも知れませんが、基板が故障した場合はメーカーだろうと、独立系(メーカーのグループ会社以外のメンテ会社)だろうと、基本的には『基板の交換』になります。
 じゃぁ、メンテナンス会社の責任としては、エレベーターの昇降に少しでも異常が出たら、基板を交換しておけばあのような事故は起こらなかったのか?・・・たぶん、起こらなかったと思います。(推測ですが・・。) そして、ここが一番のポイントなんです。

 今回の事故機は事故当時、独立系のメンテ会社がメンテナンス契約を結んでいた。 そしてこの会社は、独立系の中では保守台数でたぶんトップではないかと思います。そしてこれも推測ですが、問題はこのトップのメンテ会社が事故機の制御板を在庫していたのかどうかということなんです。これがこの業界の実態なんです。

 メーカーは新築のビルやマンションにエレベーターを入れる場合、入札または、相見積となり、金額を叩かれます。そしてやっとエレベーターを納品したら、その値引分をメンテナンスで取り返す為、月々、高額なメンテ料での契約を迫ります。 収支のきついビルのオーナーや管理組合は他のメンテ会社を探します。そこで出てくるのが、独立系のメンテ会社。メーカー系の約半額で営業を仕掛け、「部品はメーカーの製造者責任で、メーカーから支給を受けます。」とクロージングに追い込み、収支のきついオーナーは独立系と契約します。・・・これが独立系メンテ会社の契約に至る一般的経緯です。

そして、実態は・・・。

メーカーはエレベーターの納品時、叩かれた値引き分を取り返すため、なんとしてもメンテ契約が欲しい。独立系にとんびに油揚げとられてなるものか!と「独立系には部品の在庫がありませんよ!」「独立系と契約したら、万一故障した時、うちは面倒見ませんよ!」と脅しを掛けてくる。メーカー系メンテナンス会社の営業は、基本的に競合他社が居ない為(メーカー系メンテ会社どうしは他社には絶対営業をかけません)営業レベルが低く、その脅しの低レベルに嫌気がさしたビル・オーナーは独立系と契約する。・・・・しかし、実際独立系は契約した時点でそのエレベーターの部品、特に新製品の基板の在庫は、まず持ってない!(場合が多い)。何故ならメーカーに部品の注文を出しても、ビル・オーナーとの契約の証明書を求めたり、他県にしか在庫がないと、どうかしたら納品は半年後との回答がきたりする。そして、こんな独立系がメンテするエレベーターがもし、故障したら・・・。

メーカー系にとっては格好の独立系潰しであり、ビル・オーナーに「それみたことか!」とメンテ契約を再び迫り、その間部品のない独立系は他のエレベーターの基板と抜き差ししたりして、復旧を目指す。しかし在庫のない基板の故障ならおてあげ!!ついにはメーカーに応援を求めメーカーが勝ち誇ったように登場し、他県にあったはずの基板を入れ替えて、ものの数分で復旧する。

 この構図には、利用者の安全とか、メーカーの製造者責任なんて毛頭ありません。そして独立系もまた、部品がないのにメンテ契約を結んだツケが幾重にも襲ってきます。・・・・そして今回のような重大な事故が起こってしまう。

 今回、僕が言いたかったのは、こんなねじれたエレベーター業界の実態もありますが、こんな業界の縮図だけではなく、各現場のメンテナンスマンの中には、メーカー・独立系問わず、故障を直すという使命に憑かれた、賞賛すべき機械屋がいっぱい居ると言うことです。(僕は、基板がないばかりに歯を食いしばって、徹夜で機械室にこもる独立系のメンテマンや、会社の意向を無視して、独立系の故障現場に入るメーカー系のメンテマンを実際見ています) 業界のひずみに関係なく、利用者の為に、一刻も早く復旧したい・・・。  (これも推測ですが)もし今回の事故機のメンテマンがそんな機械屋だったら、彼も今回の事故の犠牲者なのかも知れません。ねじれた業界の中で優秀なメンテマンが消えていくかも知れない。それは低レベルな業界幹部が作り上げた自分本位の汚い渦の中に飲み込まれたと言うことになるでしょう。

シンドラー社が言った「我社が14ヶ月、メンテナンスをしていなかったエレベーターの事故には責任がない」という言葉も外部の人には奇異に聞こえるでしょうし、メンテ契約を結んでいた独立系はもともと反論の余地もないでしょう。

 今回、僕が書いたことは、事故に関しては、すべて推測です。しかしそれは各論ではありませんが、総論であることは間違いありません。 現実には、エレベーターを信用して利用していた大切な人命が、奪われてしまった。 


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コメント一覧

マスター
墓穴
俊ちゃん、他の業界でもそうでしょうけど、行政なんて出てきた問題を表面だけ潰して根本まで根絶しないから、また同じような問題の芽だ出てくる・・・。 その繰り返しですね!



 ただ今回のシンドラー社は、この業界独特の体質のままマスコミに対処してしまった。

これで墓穴を掘りましたね。

 まだまだ「現場は一生懸命、上はバカ」は変わってない。 僕もバカの一員だったんですが・・。  
マスター
ほんとだね!
 鉄人姉妹MaMa、ほんとそうですよね!

mamaのコメント読んで、なくなった義母がテレビで子供が犠牲になったニュースが報道されると、必ず電話してきて「孫達は大丈夫ね?」と言ってたのを、何故か思い出しました。 
俊です
やはり・・・
http://marui.exblog.jp/
この事件を聞いたとき、木家マスなら全て問題点を理解できるだろうなとすぐ思いました。前の会社には確か僕が弁護士を紹介したので、メーカーとはいろいろ問題があるんだなとは思っていましたが・・。しかし、ほかの事件にしても、誰かが犠牲にならなければ改善されないというのは、行政の認識の甘さではないでしょうか?
鉄人姉妹MaMa
やりきれないですね・・・
http://najurin.blog52.fc2.com/
今回のエレベーターの事故や、秋田の殺人事件・・・

連日・何の罪もない子供の死を伝えるニュースばかりで

同じ子を持つ親として胸が痛みます。



人ごとでは済まされない現代社会への不安と守りたくても守りきれない現実。

人間の身勝手さによって、尊い命が二度と失われない事を願いたいものです。
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