見出し画像

月華抄 北園俊治

あさこひし ひとみしときや いつみのゝ 昔を今に なすよしもかな

NHKオンデマンド
『義経』(5) 「五条の大橋

 静と遮那王…後の九郎義経…とのなれ初め。
 これから、思慕、敬愛し合うことになる男と女の、洗練された心と心の邂逅。
 やがて、どこまでも凜として奥ゆかしく、真心の美に貫かれてゆく。
 ふと、自分の佳日の逢瀬と自ずと重ね合わされていった。

 すでに、あの日、かくなるさだめを、心の奥の片隅で、そこはかとなく覚悟する節はあったのかもしれない。
 このごろ悟るごと、神さんは、自我をこしらえていく最も多感なときに、最も大切で愛しく美しい縁を与えてくれたのかもしれない。
 それゆゑに、その後、どんなにつらく道の移ろうとも、美と德についての不動の信念を心に据え、今日の、自身の、というより自身の関わってきたありように繋がっている。
 
 あるいは、この作品の演出家も、同じ、日本人が素敵であった、最近の昭和のあの時を、みているのではとも、思った。

 大河ドラマで、平安朝や中世の京を舞台とするとき、求められるのは、究極の美学。
 こと、石原さとみさんの扮する静御前につけられた演出は、愛でたきことこの上なし。
 後々、鎌倉殿の前で披露することになる、九郎判官義経への恋慕の舞は、大河ドラマの演出史に残る渾身の、美、であった。

 しつやしつ しつのをたまき くり返し 昔を今に なすよしもがな

 ほんに、昔を今に、なすよしもがな。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「名作に出逢う」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事