見出し画像

月華抄 北園俊治

佳き時代の欧州の響き、最初期のヤマハ・フルート

 貴重。YAMAHAの最初期のフルートのカタログ。










 Louis Lotのキーワークの美しさを模した、YFL-81(音孔ハンダ付け)、YFL-61(音孔引き上げ)のシリーズは、最初にして最高の作品。Ag900(Coin Silver)。佳き時代の欧州の典雅な音。
 芯金とバネ、及びスプリングの材質、ピボットスクリューの形状まで表記されている。YFL-81シリーズは、ハイピッチ(A=445Hz)の設定も。当時の豊田氏たちの若き職人さんのこだわりの窺える。設計は山口氏の由。
 ホワイトゴールド(おそらくK16.8)のバネは、その後のFMCフルートマスターズにも受け継がれたか。
 昭和51(1976)年の標準価格は、現在の同クラスの楽器の1/3程度。
 使用プレイヤー欄に、沼田先生のお名が見えず…まだ学生さんでいらっしゃったか。
 ずっと探していたYFL-81の検索アラートを有効にしていたら、このカタログがヒットしたという。二次元で堪能(笑)。

 小ぶりのカップはLouis Lotにそっくりで、指に馴染み、見た目も小綺麗で上品。
 音は、いろいろと譬えられるものゝ、素材のAg900からして、Helmuth Hammigの響きに最も近いとも感じるし、Louis Lotにも通じる。人によってはオールドHaynesに似ているとも。いずれにせよ、欧州発祥のフルートの伝統をよく継承した素晴らしい品のある音。僕は、LotとHelmuthとは、フランスとドイツと対置するまでもなく、相通じると考えている。
 試行錯誤の段階でも、ヤマハのフルート部門の最初期の「若き」製作者方の、青春の飽くなき探究心をひしひしと感じる楽器。

 独自に手を入れさせて戴いたYFL-61(No.3347)は残しておきたかったなぁ…やはり。

当時のフルート部門を立ち上げられたお一人の原嘉靖先生の記事


追記 令和6年2月23日

 つくづく、縁とは味なもので、拙稿をお読み戴き、感激されたことがきっかけで、YFL-61の虜となられ、愛用されていた方が、買換のためかその楽器をオークションに出品されることに。その際、この記事を引用して下さりました。
 もっとも、タイトルを無断使用されるのはいかゞなものかと思ったのですが、まぁ、趣味のものですし、この楽器の素晴らしさを伝えて戴けるのなら、不問と致しましょう。(^_^;
 お返事を戴きました。直接の引用は差し控え、要旨をご紹介。
            *
 メッセージをもらって感激しています。タイトルがあまりに素敵で、そのまゝ使用してしまい、たいへん失礼しました。
 自分はサックス奏者なのですが、欧州の留学先で必須科目のフルートを頑張りました。今では大好きな楽器になり、仕事でも吹く機会が多く、フルートという楽器に感謝する毎日です。こちらのブログを読んで、ぜひ入手したい楽器であると決意しました。お蔭で、YFL-61と出会えたことに感謝しています。
            *
 との旨です。
 NIKKANを完全に吸収した頃の、YAMAHAのハンドメイドフルートの黎明期の、志ある若き製作者たちの作品を、評価し伝えてくれる演奏家の一人でも多くおられることは、嬉しい限りです。
 大企業の無機質な営業主義の体質に至る前の、千載一遇の佳き時代であったのかもしれません。
 歴史にも、組織にも、そういう無二の佳境の時期はあるものです。 

出品記事
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「黎明期のヤマハ・ハンドメイドフルート」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事