ほのおタイプは寒さに強いと勝手に思い込み、寒冷な地に連れてきてしまったことを後悔すると同時に、どうしてやればよいかを考えあぐねているところを助けてくれたのが、今の俺の恋人、佑祐(ゆうすけ)だった。
今、考えてみると当然なのだが、佑祐は俺達のことに気づいていた。佑祐はそのとき、同伴のキマワリに、『にほんばれ』を繰り出すよう命じ、どよんと垂れ込めた暗雲を吹き飛ばしてくれたのだ。感謝の言葉を伝えたくて、佑祐のそばに寄り、目を合わせたのだが、彼は振り返り、キマワリと一緒に部屋を出ていってしまった。佑祐が振り返るのと同時に、彼にかけた「ありがとう」の言葉は、宙に浮いて消えてしまった。彼は少し顔を赤らめているように見えた。俺の言葉は彼に、届いたろうか。
最新の画像もっと見る
最近の「小説」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事