最近、お気に入りのセレクトショップで出会ったのは、まるでコートやバッグと同じくらいコーディネートにこだわりたくなるような一本の傘。
“ただの雨具”だと思っていた傘が、いつの間にかファッションアイテムとして定着していることに気づいた瞬間でした。
私たちが普段、何気なく使っている傘。
そのデザインには、実は長い歴史と変遷があるんです。
雨よけから“身分の象徴”へ
傘の起源は、紀元前のエジプトや中国にさかのぼると言われています。
当時の傘は、日差しを遮る“日傘”として使われていたようで、雨具というよりは“身分の象徴”のような存在だったそう。
中国では絹や紙を使った繊細な傘が作られ、貴族や上流階級の人たちが使っていたとか。
今で言うなら、高級ブランドのパラソルみたいな存在ですね。傘を持つこと自体が、ステータスだったんです。
実用性を求めて…ヨーロッパでの進化
時代が進むと、ヨーロッパでは防水加工の技術が発展。18世紀ごろには、ロンドンで現在のような「雨傘」としての傘が登場します。
特に印象的なのは、ロンドン紳士が持つ黒い長傘。それは“男の身だしなみ”として定着したスタイルで、英国のクラシックなファッションとも強く結びついています。
このころから傘は、ただの道具ではなく、「ファッションと天候をつなぐアイテム」になり始めたんですね。
日本の傘文化と“和”のデザイン
日本では、和紙と竹を使った“和傘”が主流でした。
舞妓さんや歌舞伎の世界で使われている赤や紫の和傘には、どこか凛とした美しさがありますよね。
晴れの日に使う“日傘”はもちろん、雨に強い“番傘”もあって、素材や形に日本らしい繊細な工夫が詰まっています。
最近では、代々木上原の小さな雑貨店などで、こうした和傘を現代風にアレンジしたデザインも見かけます。
ちょっとレトロで、どこか新しい。
そんな傘がまた、ファッションとしての魅力を増しているように感じます。
そして現代。傘は“自分らしさ”を表現するものへ
現代の傘は、カラフルで遊び心があるものから、ミニマルでスタイリッシュなものまで本当にさまざま。
最近気になっているのは、透明のビニール傘をベースに、アーティストがペイントした一点ものや、撥水機能に優れた高機能素材を使った傘など、見た目と機能を両立したデザインたち。
Francfrancやunicoのようなライフスタイルショップでは、傘もインテリアや雑貨と同じように、“暮らしのセンスを映すアイテム”として展開されています。
まさに、傘は今や「雨の日のアクセサリー」。
服やバッグのように、“今日はどの傘で出かけよう?”と選ぶ楽しさもあるんです。
雨の日こそ、おしゃれを楽しむきっかけに
私は、どちらかというと雨の日が苦手だったけれど、傘のデザインを意識するようになってから少し気持ちが変わりました。
お気に入りの傘を持つだけで、いつもの景色がちょっと素敵に見えたりします。
もし、毎日頑張っている自分にちょっとしたご褒美をあげたいなら、お気に入りの一本を選んでみるのもいいかもしれません。
“雨を防ぐ”だけじゃなく、“自分らしさを表現する”ファッションアイテムとしての傘。
その変遷を知ることで、いつもより少しだけ丁寧に、雨の日を楽しめるようになる気がします。