校長室だより ~ 武蔵野の森で紡ぐ友情『明星学苑・スクールライフ』

民間企業勤務から中学、高校、大学など、教育現場へ転じた『キャリアコンサルタント』の日常をお伝えします。

ジヴェルニーの食卓

2015年11月27日 05時17分36秒 | 本の紹介
マルモッタン・モネ美術展を見に行った朝、原田マハさんが書いた『ジヴェルニーの食卓』をネットで注文して家を出ました。『即日無料』便でしたので、帰って間もない頃には本が到着。いやはや、便利な時代になったものです。つい先日、『日曜美術館』でモネの傑作10選を放映していて、ゲストとして解説をされていたのが原田マハさんでした。その語り口と、豊富な知識に惹き込まれ「きっとこの人が書いた物語なら面白いに違いない」と思ったのです。本書に登場するのは、モネだけでなくマティス、ドガ、ピカソ、セザンヌなど、印象派を中心とした巨匠の面々。創作に対する姿勢や生きざまを、身近にいた女性の視点から描き出すというユニークな手法の短編小説集です。絵画史を大きく書き換えた印象派が、どのような時代背景の中で幕を開け、そして隆盛を築いたのか、興味深く読み進められました。

モネ展で出品されていた作品の一つに『サン・ラザール駅』があります。滅多にフランス国外に出ないといわれている貴重なこの作品。音声ガイドで「モネはこの時、駅にいた乗客を立ち退かせ、機関車に石炭を大量にくべさせて、もうもうと立つ蒸気で光と音と色を表現した」といったことを説明していました。創作に向き合うモネの、狂おしいほどの情熱を表すエピソードですが、年間1億人が利用するターミナル駅というので、今の時代では許されないことでしょうね。86年を生きた大画家の生涯を、一遍の短編小説で表すことは困難です。しかし日常のきめ細かい描写がすぐれているからこそ、時間の跳躍を埋められることを思わずにいられません。家族や友人と取り交わす会話の中から、モネの絵に向き合う真摯な態度が思い浮かんできます。一遍の、美しい映画を見た時のような心地よい読後感が残りました。

※1年生の教科書に、原田マハさんの掌編が載っていたので、名前を見て「あぁ、あの作品の…」と思った人もいるかもしれません。2・3年生も、同じ教科書を使ったのでしょうか。原田さんの繊細な筆致は、物語世界に引き込む鮮烈な魅力があり、もう一度モネ展を見に行きたくなりました。
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