
連日、イスラエルとイランの軍事衝突に関する報道が流れてきて、胸が塞がれる思いがいたします。イランへの空爆は、日に日に激しさを増しているようですが、一体この先どのような展開になっていくのでしょうか? この報道を聞くたびに私が思い出すのは、サヘル・ローズさんのことです。サヘル・ローズさんについてはその生い立ちがいろいろな場で紹介されていますし、2024年度から高等学校で使用されているコミュニケーション英語Ⅲの検定教科書『Heartening』(桐原書店刊)にも、ご自身のエピソードがLesson 1のReading本文として掲載されたことも伝わってきました。ですから、彼女のことを応援している若者も、たくさんいることでしょう。私が2009年に千葉県の高校へ入職してまもなくの頃、私はある特集番組でサヘルさんがペルシャ絨毯を織っている場面を見ました。記憶ではイランで空爆に遭い、今は日本でこうしてペルシャ絨毯のアルバイトをしながら、タレント活動をしているという内容だったのです。
そして2011年に戦場から女優へという書籍が刊行されました。本書には4歳の時にイラク軍の空爆により、13人の家族を一瞬で失ったという壮絶なエピソードが書かれていたのです。そして母と一緒に日本に渡った後、貧困と周りの子供たちからのいじめで過酷な少女時代を送ったこと。しかし自分が生かされたことの意味を問い続けながら、表現者として世に出る目標を実現した物語が書かれていました。私はこの本に深い感銘を受け、その後勤務した中学校・高校では図書館にこの本を入れてもらい、全校集会や個別指導の折などに生徒へ薦めてきました。逆境の中でも負けないで夢を実現していった物語は、きっと色々な思いを持つ思春期の子どもたちに届くものがあったのではないでしょうか。サへルさんは今、戦争孤児などへの支援活動も続けていますが、戦争で辛い思いをする人たちが少しでもなくなってほしいという彼女の願いが、現実になってほしいと願わずにいられません。