前回の続きです。まだ1話を読んでいない方は読んでからだとより楽しんでいただけるかと思います。では、どうぞ。
「う〜ん・・・はっ!」
俺は目を覚ました。ここは・・・どこだ?
見た事のない景色、感じたことのない冷たい空気。どうやら、本当に違う世界に来てしまったようだ。
「あ、やっと起きた!」
聞き覚えがある声だった。振り返った先に立っていたのは華日だった。なんで華日がここにいるんだ?
「おーい、畑崎起きたよー!」
誰に向かって言ってるんだ?向けたその視線の先には見慣れた顔があった。
「やっと起きたんか。」
「ちょっと〜。心配やったんやけどー。」
建樹(けんき)と鈴望(れみ)だった。この2人も同じ部活の仲間だ。
「なんでみんなここに?」
「いやーなんかケータイいじってたら遊ぶことは好きかとかなんとか聞かれて・・・」
どうやら、みんな俺と同じようにしてここに飛ばされたようだ。
「で、ここはどこだ?服も全然違うし。」
建樹は首をかしげた。よく見ると、みんなの服装は見慣れないものだった。和服とジャケットを合わせたような・・・とにかく見慣れない服を着ていた。
「おーい、あんたら寒いやろ。入りな。」
4人が戸惑っていると、優しそうなおばあさんが声をかけてくれた。4人は言われるままに部屋に入った。部屋のなかはとても暖かかった。
部屋に入ったあと、俺はおばあさんにきいてみた。
「あの、ここは一体・・・?」
「[冬烈火]が行なわれている世界だよ。詳しいことはすぐにわかるさ。」
おばあさんはそれだけしか教えてくれなかった。
「さあ、お食べ。」すぐにおばあさんが熱々のぜんざいを作って出してくれた。
「わあ!ありがとうございます!」
体が冷えていた4人はすぐにぜんざいを食べた。あんこのやさしい甘みとお餅のあたたかさが口の中に広がった。
「おいしい!」華日が笑顔で言った。
「うん、うまい!あれ、なんだこれ?」建樹が首をかしげた。お餅に「颯」の文字?
「ああ、それはね。」おばあさんが言った。
「この世界に伝わる厄払いのお餅だよ。きっと災いから守ってくれるさ。」
そうなのか。随分こちらの世界と文化が違うようだ。しかし、言葉は問題なく通じる。
4人は熱々のぜんざいをすごい勢いでたべていった。
「ごちそうさまでした!」
ぜんざいをあっという間に食べ終え、体も温かくなった4人は口を揃えて言った。
「どういたしまして。もうすぐ王令の発効を告げる鐘がなるだろうからね。そこに行けば全てわかるだろう。」
王令?よくわからなかったが、4人はとりあえず行ってみることにした。
ゴォーン ゴォーン
鐘の音だ。
「ほな、気をつけてな。」
「いろいろとありがとう、おばあさん!」
お礼を言って4人は外に出た。すでに大きな館に向かう人がたくさんいる。その集団について4人も館に向かった。
「では、ここに[冬烈火]の開始を宣言する!」王らしき人物の声が響いた。
「皆の者には、果ての地、[幸界]を目指してもらう。最も早く[幸界]にたどり着いた団体には、永遠の幸福が約束されると同時に、どんな願いでも一つだけ叶えてもらうことができる。」
ほーん。[冬烈火]とはそういうものなのか。
「ねえ!どんな願いでもだって!凄くない?」鈴望がテンション高めに言う。
「ここに、[冬烈火]のルールを記す!」
零、[冬烈火]へは、4人の集団で挑むものとする。
一、一度参加を決めたものが辞退することは不可能である。
二、雪が溶けきるまでに[幸界]にたどり着けなかった者は、その命を失う。
三、2番目以降に[幸界]にたどり着いた者にも、一生の無病息災が約束される。
四、参加者には、「戒(かい)」という能力が与えられる。この「戒」は、持つものによって属性が変化する。また、同じ属性の「戒」を持つ者は絶対に存在しない。
五、ここで自分の身に起こった死亡以外の全てのことは、元の世界に戻れば無視される。ただし、この世界での記憶は残る。
また、元の世界で時間は進んでいない。
六、[冬烈火]への参加を辞退する者は、街の中にある「辞」の文字が刻まれたボタンを押せ。そうした者は元の世界に戻され、二度と[冬烈火]への参加はできない。
七、この世界には人間を襲う魔物が存在する。注意すること。
八、以上をもって、[冬烈火]の戒律とする。
なるほどな。失敗すれば命はないが、成功すれば幸福を得ることができる。さらに元の世界への影響はないのか。
「以上で説明を終了する。1ヶ月後に大門を開く。それまでによく準備をしておくこと。また、参加を決めた者は1週間後からこの館を解放する。「戒」の力を受け取りに来い。」王の話は終わった。
「やろうぜ、[冬烈火]!」
建樹はかなり乗り気のようだ。
「私もやってみたいけど、死ぬのは・・・」
華日はこう言う。
「私はやりたい。それで1番にゴールして、世界みんなの元気を願いたい。」
鈴望の言葉にみんなははっとした。
そうだ。今、俺たちがいた世界では強力なウイルスが日常を奪っている。俺たちが1位になれば、この病気を止められる。
「それすごくいい!やろう[冬烈火]!」
4人の意見は参加することに一致した。しかし、この寒い世界、謎の魔物。楽なものでないことは皆承知していた。それでも、自分たちが世界を救うのだと心に決めた。
円陣を組んだ4人の間の空気は暖かみを帯びていた。
そして、1週間後・・・
4人は「戒」の力を受け取りに館へやってきた。次は俺の番だ。
「では、この石に触れなさい。」
俺は石に触れた。体の中に力がみなぎるのが分かった。
「この瞬間、お前の身体能力と頭脳は強化された。しかし、強化のベースは元のお前だ。」
こんな言葉をかけられた。運動部で走りまくっていた俺たちは少し有利かもしれない。
全員が「戒」を受け取った。
「なあ、お前らどんな「戒」だった?」
「俺は・・・」「私は・・・」
4人は笑った。
続く・・・。
ご覧いただきありがとうございました😁
ツッコミどころ満載だと思いますが3話以降も是非よろしくお願い致します。
I support you. Do your best!