お待たせしました。いよいよ完結です。
では、お楽しみください!
↑前回
「はいこんにちはぁ」
午後4時半。今日も練習がスタートする。
「試合も近づいてきました。意識を高く持ってやっていきましょう。はいお願いします。」
「お願いします!!」
グラウンドに生徒達の声が響く。
あれから5年。陸上部の指揮を執っているのは他の誰でもないあの荻だった。
「元気ないよ〜声出して〜!」
立派に教師に復帰し、生徒指導部に配属され、日々精をだしていた。学校内では、
「めっちゃ怖い先生」のイメージが完全に定着していた。
また、この5年間、荻は教師になってからも体を鍛え続け、その筋肉はさらに輝きを増していた。
それから2日後…
荻の高校に教育実習生がやってきた。どうやら高校時代陸上部だったということらしい。実習期間中は一緒に陸上部の練習を見てもらえることになる。荻はそれだけ聞いていた。
「どんなやつなのか。結果は残していたやつなのか。」
荻はそんなことを考えていた。
そして、やってきた実習生の顔を見た荻はは目を丸くした。
「け…健樹(けんき)…?」
「久しぶりですね荻先生!」
なんと、そこに居たのはかつての教え子の健樹だった。
「健樹…お前先生になるんか?」
「そうなんですー。大学で先生いいなって思って。」
これは驚いたことだ。しかもまさか違う学校で再開するとは。2人はしばらく世間話などをしていた。
「しかし先生変わってないっすね!この胸筋とか昔のまんまじゃないっすか!!」
「やかましいわ笑」
「やっぱ先生はその胸筋あってこそですよね!見た目もいかつくなりますしね!」
「お…そうか?」
「はい!先生の胸筋は効果抜群ですよ!俺も当時はビビりまくってましたし笑」
「そうなんか?」
「先生気づいてなかったんです?」
「いや、俺は…。」
荻ははっとした。なぜ、俺は筋肉がないと教師に戻れないなどと考えていたんだ?
荻はそこではじめて、自分自身がずっと人を威圧していたことに気がついた。そして、そうしている自分が好きだったことにも気がついた。そのせいでどれほどの人が辛い思いをしていたのか…。
「健樹、すまん。俺はもう上がるわ。」
荻はそう言ってその場を離れた。
「俺は間違っていた。ずっとそうだ。まさか教え子に気付かされるとはな。」
その後、あの時自分の行いを教育委員会に通報し、退職へと導いた人物こそが、あの健樹であることを荻が知ることはなかった。
ー完ー
ここまでお読みいただきありがとうございました🙇♀️
この小説を読んだあなたが、読む前より少しだけ幸せになっていることを願います。