若き眸

2005年度学級通信

千年の古都

2004-11-03 14:38:40 | Weblog

【連載】

■「一歩ずつ」(17)


             岩堀 美雪(福井県 服間小学校)
              minmin@sky.hokuriku.ne.jp  


今回は、「逆上がりの練習」の話です。今まで、4年生を担任すると、「逆上
がり全員達成」に取り組んできました。最初の頃は、運動能力測定の練習のた
めでした。が、次第に、「できないと思った事でも努力すればできたという体
験をして欲しい。」と思うようになりました。運動能力測定の種目から消えた
今でも続けています。

で、今年は、5年生で取り組むことにしました。一学期の5月頃です。この時
点で22人中9人が逆上がりができませんでした。鉄棒の授業の時に、「今年
は、全員逆上がりができるようになることを目標にしたいと思います。」と言
うと、「えー。」「無理でーす。」「絶対無理。」というブーイング。

この反応は毎回のことなので慣れているのですが、今年のクラスは特にすごい。
でも、ひるまずにいつもの言葉を言いました。「できるかできないかはやって
みなくちゃ分からないよね。みんなの中には自分も知らないすごい力があるん
だから。初めからできないなんて言うのは、自分に対して失礼でしょ。鉄棒で
急にクラスで一番になることは難しいかもしれない。でもね、10人中7人か8
人ができて自分ができないようなことは、努力すれば必ずできるようになるか
ら。」

練習時間は放課後。初めは、私が呼んでも鉄棒のところまで来なかったり、来
ても全然やる気が見えなかったりしました。K君もそのうちの一人でした。K
君は授業中も無表情で、なぜか暗い眼をしていました。何をしてても子供らし
い笑顔が見られません。とても気がかりな子でした。私が、「ほら、K君も一
緒に練習しよう。」と言わないと、自分から来ることはありませんでした。

練習の方法は、鉄棒の前に跳び箱を横にしておく。その跳び箱に踏み切り板を
立てかけて、斜めの壁のようにする。跳び箱の高さは4段ぐらいから始める。
4段で3回できたら3段に挑戦、3段ができたら2段というように踏み切り板
をだんだん低くしていく。踏み切り板なしでもできれば合格。こんな感じです。

何と、9人のうち最初に4段を合格したのはK君でした。すると・・・。だん
だんと私が呼ばなくても練習に来るようになり、一ヶ月ほどで見事できるよう
になったのです。「きゃーっ、おめでとう!!K君が卒業第1号だーっ!!」
握手すると、はにかんだような笑顔がそこにありました。その他の子は、4段
がまだ合格していない子5人、2段まで合格した子3人といった状況でした。

1学期末の保護者懇談会のとき、K君のお母さんが、「先生、鉄棒練習ありが
とうございました。」とおっしゃいました。「いえいえ、私は何もしていませ
ん。K君ががんばったんですよ。」と言うと、「逆上がりができたことがよっ
ぽどうれしかったらしく、『お母さん、見て、見て。』と言って、学校の鉄棒
のところまで私の手を引っ張ってきたんですよ。

そして、やって見せたときのあのうれしそうな笑顔。今まで11年間育ててき
て、あの子のあんなうれしそうな表情を見たことがありません。親の私でもあ
の子は感情を表に出さない子だとずーっと思っていました。」と言ってハンカ
チで目頭を押さえられました。担任の私もとてもうれしくてもらい泣きしてし
まいました。

2学期に入ると、放課後は連合体育大会や県の陸上練習がありました。それで、
練習はそれらが終わった10月18日から始めました。驚くことにその間、
「先生、逆上がりの練習したいです。」と言う声が上がってきたのです。「う
ん、やるよ。でも、陸上の練習が終わるまで待ってね。」

そして、15日の金曜日に、「来週の放課後から逆上がりの練習を再開します。」
と言うと、「やったーっ!!」と歓声が上がりました。信じられない反応です。
しかも、練習再開3日目ぐらいに、「今日会議があるから、悪いけど練習でき
ないの。」と言うと、「じゃあ、昼休みやりたいです。少しでも早く練習がで
きるように、給食が終わったら体育館に行って、鉄棒をセットしててもいいで
すか?」「すごいやる気!もちろんOK!」その日以来、昼休みと放課後の2
回練習することにしました。

手にまめを作ってもカットバンを張り、足にあざができても気にせず黙々と練
習しています。そして・・・。新たに4人合格!残るはあと4人です。かなり
体格がいい子達なので時間はかかるかもしれませんが、がんばります。

<編集部 追加>
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『心がぐん!と育つパーソナルポートフォリオ―効果抜群!誰でもできる「未来
への贈り物」』 岩堀 美雪著 , 本郷 けい子 絵・装丁 / 東洋館出版社
http://booklog.jp/kanoyu/asin/4491019010
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 いつもほっとします。岩堀美雪さんの作品を読むと。
 日本中の、世界中の教師の日々の取り組みや実践があります。
 こどもは「未来」。未来へ送り出すプロデューサーが教師。
 たゆまずその努力を続けたい。

 次の本棚を作りかけています。よかったら閲覧してください。
 http://booklog.jp/tana.php?ac=kanoyu


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 クニコさんは電話をかける時間もないぐらいの忙しさのようですが、薫さん
と昨日電話でお話をされたようです。(薫さんからのメールで知りました)新
たな展開がそれぞれに期待できそうです。
 今回の作品は教育のいわば本質に触れる内容でした。教師にはいくつもの使
命があります。「世界平和とか他者の立場に立って物を考えることのできる人
間」の育成という表現がありました。「点滴石を穿つ(うがつ)」の姿勢で貫
きたいものです。

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 久々にオーストラリアの壷坂宣也さんから「オーストラリア便り」が届き
ました。ありがとうございます。「兎と亀」の話、なるほどねーと思います。
評価や競争に晒される今の人々は「兎タイプ」が多いでしょうね。その弊害
もたくさん出てきているのでここ数年「亀タイプ」がもてはやされるように
もなってきました。ナンバーワンよりオンリーワンもそのひとつの標語。
「世界に一つだけの花」や「みんなちがってみんないい」(金子みすず)な
ど思い浮かびます。この世に生まれたのは(人間として)訳がある、意味が
ある。と、いうことなんだと思います。生まれたからには死ぬまで人間とし
て生ききることが大切なんだと自分に言いきかせています。どんなに辛くと
も生きていればきっといいことがある。生きていることが奇跡。            


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本日3回目の発行です。川端さんの「共に学び高めあう生徒を育てる学級
づくり」お届けします。「給食の時間の『はし忘れ』」について」について
のユニークな取り組み。興味深く楽しく読みました。川端さんが終わりに次
のように書いています。
 「<『おぉ!これはすごいぞ!!』はし忘れゼロキャンペーン作戦>を
 企画。時代の変化に伴って,子どもたちも当然変化。これまでの教師の
 作戦では,通用しないこともいっぱいでてきて当り前。そんな時こそ,
 私たち自身の「教師力アァ~~ップ!」のいい機会だと,ポジティブに  
 前向きにとらえて,「作戦」を練ってみました。」
と長い引用で恐縮ですが、やはりポジティブシンキングですね、逆境やピン
チこそ教師の力量を向上させる好機という捉え方。読んでいてうれしくなり
ます。これからもこのような実践報告を楽しみにしています。-------------------------------------
本日2回目の発行です。「デジタル・コンセプトマップ法によるポートフォ
リオ評価」、相互評価・自己評価、その他様々な評価漬けへの懸念を忘れない
田中先生のご指摘謙虚に受け止めたいです。また、今回の「コンピュータリテ
ラシー」に関するお考えも同様に受け止めます。
 「undo プロジェクト」,http://www2.kobe-u.ac.jp/~inagakis/undo.html
 も、アクセスしてみてください。

 宿泊学習の疲れで11時間も寝てしまった私です。
 http://www.jkajyo.ac.jp/shigakukan/16k/index.html
 楽しい宿泊学習です。(上記フォトシネマでご覧いただけます)
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 予定日よりも3日遅れの発行です。若槻さん、みなさんごめんなさい。
 宿泊学習の疲れで11時間も寝てしまいました。(普段の3日分? )
 http://www.jkajyo.ac.jp/shigakukan/16k/index.html
 充実した宿泊学習ができました。(上記フォトシネマでご覧いただけます)
 
 若槻さんの「教育実習ポートフォリオの提案」、示唆に富みまた確実に
これは使えるという直感を覚えました。ぜひ実物(もう実習生へ? )を
みたい。めざましい若槻さんの実践力に感服いたします。目指すは使える
「教師ポートフォリオ」ですね。