
ところで、この錦絵は江戸時代の神田明神の神職さんと巫女さんを描いた数少ないものです。
現在の神田明神の神職は、宮司(ぐうじ)を筆頭に権宮司(ごんぐうじ)、禰宜(ねぎ)、権禰宜(ごんねぎ)にという役職があります。宮司が最も重い役職で神社の運営や神事の奉仕における最高責任者です。よく耳にする「神主(かんぬし)」という呼び方ですが、一般的に通用している言葉で「神職」よりも皆さんにはなじみがあると思います。ですが、その「神主」という呼び方、江戸時代の神田明神では一番偉い神職、今の宮司の役職を意味していた呼び名です。江戸時代の神田明神の神職は、神主、社家4家からなっていました。神主は芝崎家という家が代々奉仕していました。社家は神主の下で神事などに奉仕した家柄で、木村家、甫喜山家、早川家、月岡家の4つの家がつとめていました。
社家の木村家ですが、後の親類には歌舞伎の女形として大活躍されている坂東玉三郎さんがいるそうです。ちなみに、坂東玉三郎さんは、荒俣宏さん原作の神田明神が主な舞台となっている映画『帝都物語』で小説家・泉鏡花の役を演じていらっしゃいました。
そう言えば、今回の神田祭のDVD『神田祭大図鑑』の制作にたずさわっていただいた方の一人が『帝都物語』の撮影スタッフとして神田明神に来ていたと言っていました。「ずいぶん境内がかわってしまってビックリしました」とおっしゃっていました。