神奈川絵美の「えみごのみ」

4月18日の月をみて

ずいぶん前の話になりますが、


3月3日に市川の古民家で開かれた、
千葉の呉服店「衣舞」さんの30周年記念イベントにて

写真 右端に写っている一脇さんに、
新しい草履を誂えていただきました。

鼻緒は私が持ちこんで。

以前、横浜の山本きもの工藝でいただいた、
浦野理一さんの布でつくられたもの。

選んだ台は……

こちらです。
この写真では青みが強いですが、実物はグレー。
牛革の起毛素材です。

挿げあがった写真。こちらの方が実物に近い色です。


ご覧のとおり、鼻緒の下(うけ)と台の天の色を揃えました。
起毛素材は、履いているうち足指の力が入る部分が擦れて、
変色しやすいのだそうです。
「気になるようなら、靴クリームを塗りこんで質感を変えて
しまうという手も。これはお客さんから教わったのだけど…」と一脇さん。
いずれにしても、秋冬の草履なので、次のシーズンを待ってからになります。

この草履

「台は秋田か会津の桐で、まき(サイド)は手磨き」と一脇さん。
裏は

ゴム張りです。
カレンブロッソに似ていますが、こちらはすげ替えができます。
その代り、雨に強いわけではありません。
そのため「気休めだけど、挿げるために穴をあけた部分に、テープを
貼っておきました」と一脇さん。(写真 黒い部分)
優しい気遣いですね。

「このゴムを探すのに、一苦労だったんだよ。
耐久性のあるゴムがなかなかなくて…このゴムは神戸で見つけたのだけど、
通常、ゴムを切るのに使う刃物が役に立たないほど硬くてね」
苦労の甲斐あり、長持ちかつ履き心地よく、お客さんに好評だそう。

もう一度、全体を。

この角ばったシルエットが、カッコいいのですよね。
粋なふだん着に合わせるのが楽しみです。

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さて、鼻緒を挿げながら一脇さん、

(こちらは2013年の写真)
にこにこ陽気に、手を動かしながら口の方も休みません。

「今回の雛祭りイベントにかけて、僕、昨晩一句詠んだんです。」

十六夜(いざよい)の、かぐやも見てる 雛祭り

この日の前日が十五夜、満月でした。

「真ん丸の月からかぐや姫が、羨ましそうに雛祭りを見ているの。
なかなか風流でしょ?」

でもね、と一脇さんは続けます。

「いざよいって秋の季語なの。この俳句は秋と春の季語が入っているから
出来としては良くないね。」

でも何だか可愛げがあって、いいですよね!とその場にいた皆で笑いあい。

「ところで、次月、4月18日の月をみてほしいの」

  「どうして?」

「4月18日は、旧暦の3月3日なのね。で、細い三日月が出るから」

  「三日月?」

「そう、僕ね、三日月にこだわりがあるの。なぜだかわかる?」

-わからない- そう首をかしげる私に、一脇さんは得意そうに

僕の名前、一脇でしょ。みっつのカに月、だから三日月

なるほど!

帰宅後、ネットで調べたら確かに


こんな細い三日月が出るようです。

桜も終わって、新芽が青々としてくるころ。夜空に小さな弧を描く月は
どんな表情をみせてくれるのでしょうか。

コメント一覧

神奈川絵美
衣舞の袖さま
こちらこそ、過日はありがとうございました
大盛況でしたね、楽しかったです
一脇さん、お話上手ですねぇ。
挿げあがったお草履も、飾っておきたいほど
素敵で、鼻緒と合っていて。
4月18日、忘れずに三日月、みてみようと思います
衣舞の袖
いつの間に…
こんにちは🌸
この節はお運び有り難うございました。
いつの間に?こんな風情有るお話が出でいたのですね。
物知り 一脇さんらしいですね。
木草履、ご愛用頂ければ幸いです。
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