さて、ヤン・リーピンとは中国の超一流の舞踏家であり、
芸術監督、振付師でもある。
ペー族という少数民族出身で、90年代終わりから
近代化により失われつつある故郷・雲南省の民族文化を
歌舞劇で残すべく、精力的に活動しているそうだ。

今回の「クラナゾ(蔵謎)」は、チベットの各地に伝わる歌や踊りを
取り入れながら、“自然との共存”や“次世代の幸せを願う信仰心”
“輪廻転生”といったチベットの思想をベースに構成された歌舞劇だ。
色とりどりの民族衣装、力強い群舞、
はりさけんばかりの声を上げる歌。何もかもが骨太で、
喜怒哀楽がストレートに表現されている。
今の日本の状況からしても、単なる民族文化のアレンジとしてのお披露目ではなく
命の巡るさまが舞台から透けて見えてくるような、
エネルギーのほとばしりを感じた。
そんな中、ヤン・リーピンのソロ
(ターラ菩薩という煩悩や苦悩から人々を「救済」する観音の踊り)は
耽美的で繊細で、ほかの群舞とはまったく違う世界観なのが印象的だった。
これは別の演目だけど・・・
彼女の「腕の柔らかさ」にびっくり!
クラナゾでは、もうちょっと長く、彼女の踊りを見ていたかったなあ。
(思ったより出番が短かった)
私は気づかなかったが、
会場の外では、フリーチベット(チベット人権保護運動※人により解釈が異なるようです)の
活動家によるアピールもあったようだ。
世界のあちこちで閉塞感がつのり、命が助けを求めている。
ヤン・リーピンのターラ菩薩は「救済」ではなく、
助けを求める命そのものの化身のように見えた。