急ピッチで増える日本企業の公募増資を株式市場がひとまず容認している。世界的な金融緩和政策によるカネ余りで、日本の株式市場にも資金が入りやすい環境になっているほか、外国人投資家が日本株を大幅にアンダーウエートし、手持ちのキャッシュを新株の購入に回しやすいという特殊要因がある。
こうした環境下でさらに増えると予想される公募増資についても市場は吸収余力を持っているとの指摘があり、自己資本の増強を狙う日本の企業には追い風となりそうだ。
<増資を消化する市場>
大幅な希薄化を招くと嫌気される公募増資だが、金融危機後の株式市場では無難に消化されている。増資を決議した後、株価はいったん売りに押されるものの、値崩れせず底堅い。昨年秋の三菱UFJフィナンシャル・グループ以降、大型の公募増資を行った11社をみると、野村不動産ホールディングスと三井住友フィナンシャルグループを除く9社の株価は、23日終値が公募価格を上回っている。23日に払い込みを完了したみずほフィナンシャルグループの株価終値は、公募価格より25円高い水準だ。
公募増資が受け入れられる理由は何か──。複数の証券会社の引受担当者や、最近欧米の機関投資家を訪問したアナリストらに意見を聞くと、共通する主なファクトとして
1)過剰流動性
2)日本株をアンダーウエートとしている外国人投資家の買い余力
の2点が浮かび上がってくる。
<過剰流動性でカネ余り、公募銘柄をひとまず買い>
バークレイズ・キャピタル証券の株式調査部ストラテジスト、高橋文行氏は、すべての外国人投資家の資金フローを定量的に把握するのは困難としたうえで「多くの外国人投資家が日本株を(ベンチマークとする株価指数に対し)アンダーウエートしているのは確かだろう」と話す。
高橋氏は今のマーケットについて「過剰流動性のマーケット」と指摘。本来は低かった原油や金などの商品相場と株式相場との相関性が高まり、金融緩和を背景に世界中で余ったおカネが、株式や商品の市場を急速に出たり入ったりしているという。そうした中で、海外でも認知される日本の大型株が公募増資を行うと、「オーバーウエートするほど積極的に買う展開にはならないが、いったん買われやすい」と分析。その原資はアンダーウエートしているがゆえに保有する手持ちのキャッシュ(現金)だという。
7月にある公募銘柄の海外投資家向けロードショーを行った外資系証券の担当者は、予想をはるかに上回る10倍の需要が集まり、手ごたえを感じたと打ち明ける。ここでもニーズの高さの原動力は「外国人投資家による日本株のアンダーウエート」(同担当者)。海外で日本株運用をする運用者は、投資しないまま手元にキャッシュを持っており、買い余力が十分にあると分析する。
複数のクオンツ・アナリストが共通して指摘するのは、日本企業が活発に公募増資を行っていた2005─06年あたりの増資金額は2兆─3.3兆円で、マーケットはそれを十分に消化してきたという点だ。年初来の日本企業の公募増資の総額(約2兆6800億円、トムソン・ロイター調べ)はその範囲内で、最近の動きは一見、ラッシュのようにも見えるが、驚く規模ではない。
さらに、かつてないほど個人投資家が株式投資に関心を高めていることが「数年前の公募増資ブーム時とは比較にならないほどの日本の投資家のすそ野拡大を示しており、買い手サイドにも深みがある」(大手証券)という違いもある。
<早いもの勝ちか>
ただ、公募銘柄が増えるにつれて、値上がり率が小さくなっているのは懸念材料だ。増資後の株価の推移をみると、最近の増資では公募価格との対比で、株価上昇が抑えられる傾向がある。三菱UFJの23日終値は公募価格に対し約33%、野村HDの場合は約87%高い水準だが、全日空は3.0%にとどまるなど、先に公募に踏み切った銘柄との差は明確だ。
大和総研投資戦略部の土屋貴裕氏は、外国人投資家がアジアの新興諸国の株式を買い越した後の調整で「おまけのように日本株を買う動きはある」と指摘するものの、今後「積極的な買いに転じるには収益面での裏づけが必要となる」と、クギを刺す。
別の証券会社の引受担当者は、海外の投資家には買い余力があっても、「国内リテールの投資家のポケットにはさほど余裕がないのではないか」と話し、これからの公募増資は海外投資家への販売が重要な役割を担う可能性があると話す。
いずれの場合も、いったんマーケットが消化し、株価が底堅く推移してきたのは「資本調達によって新たな成長シナリオが描けると投資家が判断したため」(クレディスイス証券・市川眞一チーフ・マーケットストラテジスト)。しかし市川氏は「(公募が)ブームになってくると、やってはいけない増資が出てくる可能性もあり、増資の質を問われるケースもあるだろう」とも指摘、企業の成長と株主利益につながる増資かを見極める必要性を強調している。
~ロイターより~
こうした環境下でさらに増えると予想される公募増資についても市場は吸収余力を持っているとの指摘があり、自己資本の増強を狙う日本の企業には追い風となりそうだ。
<増資を消化する市場>
大幅な希薄化を招くと嫌気される公募増資だが、金融危機後の株式市場では無難に消化されている。増資を決議した後、株価はいったん売りに押されるものの、値崩れせず底堅い。昨年秋の三菱UFJフィナンシャル・グループ以降、大型の公募増資を行った11社をみると、野村不動産ホールディングスと三井住友フィナンシャルグループを除く9社の株価は、23日終値が公募価格を上回っている。23日に払い込みを完了したみずほフィナンシャルグループの株価終値は、公募価格より25円高い水準だ。
公募増資が受け入れられる理由は何か──。複数の証券会社の引受担当者や、最近欧米の機関投資家を訪問したアナリストらに意見を聞くと、共通する主なファクトとして
1)過剰流動性
2)日本株をアンダーウエートとしている外国人投資家の買い余力
の2点が浮かび上がってくる。
<過剰流動性でカネ余り、公募銘柄をひとまず買い>
バークレイズ・キャピタル証券の株式調査部ストラテジスト、高橋文行氏は、すべての外国人投資家の資金フローを定量的に把握するのは困難としたうえで「多くの外国人投資家が日本株を(ベンチマークとする株価指数に対し)アンダーウエートしているのは確かだろう」と話す。
高橋氏は今のマーケットについて「過剰流動性のマーケット」と指摘。本来は低かった原油や金などの商品相場と株式相場との相関性が高まり、金融緩和を背景に世界中で余ったおカネが、株式や商品の市場を急速に出たり入ったりしているという。そうした中で、海外でも認知される日本の大型株が公募増資を行うと、「オーバーウエートするほど積極的に買う展開にはならないが、いったん買われやすい」と分析。その原資はアンダーウエートしているがゆえに保有する手持ちのキャッシュ(現金)だという。
7月にある公募銘柄の海外投資家向けロードショーを行った外資系証券の担当者は、予想をはるかに上回る10倍の需要が集まり、手ごたえを感じたと打ち明ける。ここでもニーズの高さの原動力は「外国人投資家による日本株のアンダーウエート」(同担当者)。海外で日本株運用をする運用者は、投資しないまま手元にキャッシュを持っており、買い余力が十分にあると分析する。
複数のクオンツ・アナリストが共通して指摘するのは、日本企業が活発に公募増資を行っていた2005─06年あたりの増資金額は2兆─3.3兆円で、マーケットはそれを十分に消化してきたという点だ。年初来の日本企業の公募増資の総額(約2兆6800億円、トムソン・ロイター調べ)はその範囲内で、最近の動きは一見、ラッシュのようにも見えるが、驚く規模ではない。
さらに、かつてないほど個人投資家が株式投資に関心を高めていることが「数年前の公募増資ブーム時とは比較にならないほどの日本の投資家のすそ野拡大を示しており、買い手サイドにも深みがある」(大手証券)という違いもある。
<早いもの勝ちか>
ただ、公募銘柄が増えるにつれて、値上がり率が小さくなっているのは懸念材料だ。増資後の株価の推移をみると、最近の増資では公募価格との対比で、株価上昇が抑えられる傾向がある。三菱UFJの23日終値は公募価格に対し約33%、野村HDの場合は約87%高い水準だが、全日空は3.0%にとどまるなど、先に公募に踏み切った銘柄との差は明確だ。
大和総研投資戦略部の土屋貴裕氏は、外国人投資家がアジアの新興諸国の株式を買い越した後の調整で「おまけのように日本株を買う動きはある」と指摘するものの、今後「積極的な買いに転じるには収益面での裏づけが必要となる」と、クギを刺す。
別の証券会社の引受担当者は、海外の投資家には買い余力があっても、「国内リテールの投資家のポケットにはさほど余裕がないのではないか」と話し、これからの公募増資は海外投資家への販売が重要な役割を担う可能性があると話す。
いずれの場合も、いったんマーケットが消化し、株価が底堅く推移してきたのは「資本調達によって新たな成長シナリオが描けると投資家が判断したため」(クレディスイス証券・市川眞一チーフ・マーケットストラテジスト)。しかし市川氏は「(公募が)ブームになってくると、やってはいけない増資が出てくる可能性もあり、増資の質を問われるケースもあるだろう」とも指摘、企業の成長と株主利益につながる増資かを見極める必要性を強調している。
~ロイターより~