(一月)
弟と並びて祈る年新た
元日や子らに手渡す聖書かな
新年の碧玉の空蜂の飛ぶ
(二月)
補修終え屋根打つ春の雨楽し
(三月)
雨晴れて一夜明ければ春の空
百年の開校記念欅植う
(四月)
湖の向ふにふんわり春の雲
伴天連寺茶畑となり鎮まりぬ
万緑の野を行く川の瀬にそひて
(五月)
どくだみの花ひっそりと庭に咲く
聖五月新婦のヴェール裾を引き
天国は教会にあり百合薫る
新緑のかえでそよぎて雨を呼ぶ
闇の中にどくだみの花白く咲く
(六月)
灯を消して蜜蜂そっと巣に戻す
草むしる庭に涼風吹き来たる
梅雨に入り庭の手入れも一休み
菜園の小さき星かトマト花
水色の濡れて艶やか七変化
(七月)
教会の創立記念は五旬祭
雨粒を受けて鎌置く梅雨の庭
一斉に庭の姫百合競い咲く
姫百合の園に一輪白き百合
庭おちこち夕暮れやさし月見草
(八月)
蝉鳴きて朝風涼し里の家
はらからの集う我が家の夏祭
余生とは賑やかなこと夏祭り
立秋や山を下りて客来たる
五輪終うロンドン塔に秋の風
(九月)
露草は庭からこぼれ道の辺に
棚を覆い西日を防ぐ藪がらし
車椅子の人に付き添う残暑道
門の木で別れを告げる法師蝉
月仰ぐ余生の心澄み渡る
(十月)
鵙鳴いて大気引き締め飛び去りぬ
開催の爆竹轟く秋の朝
隣家より弁当届く秋日和
鈴虫の鈴を震わす今朝の庭
行李より衣類溢る冬支度
(十一月)
時雨るるや母校のチャペル文化財
時雨るるや枯山水の石濡れる
庭時雨雨天気の予報阿蘇は雪
バザー終えし教会の庭に時雨来る
百年の開校記念楠時雨
(十二月)
茶の花のさらに真白き霜の朝
庭豊か夕餉の卓の零余子飯
月桂樹のクランツの香りクリスマス
クリスマス手話での賛美石叫ぶ
庭の木々剪定終えて春を待つ
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